50話 冒険者たちの饗宴
――うおおおお!! 本物の冒険者の実力を見せてやれぇっ!
「ど、どうなってんだ、こりゃあ……」
地上に出た俺たち三人を出迎えたのは、領主が雇った連中たちと戦う、冒険者たちの姿だった。
大人数ので戦闘が繰り広げられている。
オークやゴブリンに獣人、鬼人傭兵団に冒険者崩れの連中。
それと戦う冒険者たち。
いったい何がどうなっているのか。
本当なら、俺が騒ぎを起こしてるその隙に、エレスとダイアが館に忍びこんで、ミトとディナを救出する手はずだったんだが……
俺の立てた計画が、いきなり頓挫した形だ。
「……けど、これはこれで好都合だな。この間にエレスたちは、ミトとディナを頼んだぞ」
「わかった。君も死ぬんじゃないぞ……まだちゃんと礼も言えてないからな」
「……死んだら……許さないから……」
俺は二人と別れ、戦場の中へと走り出した。
敵を蹴散らしつつ、俺は鈴木の姿を探していた。
鈴木は俺たちが、地下から出てくるのを待ち構えていたはずだ。
おそらくそこに冒険者たちが攻め込んできて、意図せぬかたちで戦闘が始まったんだろう。
鈴木の事だ。
生きてることを知った鈴木は、自らの手で俺を始末するために必ずこの何処かにいる。
ただこうも人が多いと参ったな。鈴木をどう探せばいいんだ?
鈴木を探す俺の耳に、聞いたことのある声が聞こえた来た。
うおおおお!!
声の主が叫び敵をかき分け、真っ直ぐに俺へ向かって来ている。
次々と敵が吹き飛ばされ、宙を舞っているのが見える。
見境いの無くなったヤツが突っ込んできたのか?
いつでも剣を抜けるよう、柄に手を当てる。
だが前に現れたのは、俺のよく知る人物だった。
「待たせたな、我が好敵手よ!」
見たことがあるデカい盾に、爽やかスマイルを浮かべているのは……レンドルだ。
あの盾の技で敵を吹っ飛ばしながら、突進してきたのか。
でも、どうしてこいつが、ここにいるんだ?
「レンドル。お前がいるって事は、この冒険者たちは、ギルドの連中だろ? どうなってるんだ?」
ふわっとレンドルは、前髪を搔き上げた。
「ふっ……実はシアン嬢が――」
「ああ、そいつはシアンの依頼なのさ」
レンドルを遮るように、今度はグローリエル現れた。
何がいったいどうなってるやら。
どうしてグローリエルまでいるんだ?
ギルドに来るなって、ディナが忠告していただろう。
「なあ、俺にも分かるように説明してくれないか?」
「任せたまえ、好敵手よ。ここは僕が説明してやろう!」
レンドルの話は、クソ長かったんで割愛する。
要約すると、俺たちを心配したシアンが、王都から戻って来たばかりのギルマスとグローリエルに、今回の話を伝えたようだ。
グローリエルの話じゃ、ギルマスも領主の計画に薄々気づいていたようで、この件を機に乗じて領主の館に乗り込ませたらしい。
まだ会った事はないが、このギルマスかなりの切れ者のようだな。
まあ、便乗されたような感じで釈然としないがな。
「で、シアンの依頼ってことにしたのか」
「ああ、謎の傭兵団に拐われた民間人とミト皇女の救出が、今回の依頼内容さ。たまたま国家反逆を企ていた連中がそこに居たってだけだよ」
なるほどな。
そう言う理由にしとけば、あとあと面倒な事にはならないんだろう。
「そういやあ、エミリアも拉致されたって聞いていたんだが……ふふっ……その心配は必要ないみたいだね」
「……必要ない? グローリエル、それはどう言う……」
どおおおおおおおんっ!!
雷鳴が轟き青い閃光と共に、無数の雷が降り注いだ。
あちこちで絶叫が聞こえてくる。
「何が……あ、あれは……!?」
「な、心配はいらないだろ」
グローリエルは、既に気づいていたのか。
城壁の上に立つエミリアに。
と言うか、なぜエミリアはあそこに立っていて、中二ポーズまでしているんだ?
「くっくっく! 我は暗黒邪神の申し子! 闇の大魔道士である!
我の邪心眼に封じられし破壊の力を、今ここで解き放ってやろうぞ!」
うわぁ〜……中二全開だよ、エミリアさん。
さっきの雷も、エミリアの魔法ってわけね。直撃した連中も敵だけなんだろう。
前口上を垂れるのは構わんが、あとで件のエルフだとバレなければいいんだがな。
それと……その横にいるシロも、なぜか中二ポーズをしているし……
エミリアに付き合わされたんだろう……なにやってんだよ。
城壁から飛び降りた二人が、真っ直ぐこっちに走ってくる。
「ガ〜ゲ〜ル〜ぐ〜んっ!!」
「ぐっほっ!?」
突進してきたエミリアの頭が、俺の鳩尾にキレイに決まった。
「寂しかったよぉ〜カケルく〜ん……うわああん!!」
しがみついて泣きじゃくっているが……寂しかった割には、お前さっきまで中二全開だったよな。
それと、俺に飛びつくタイミングを完全に失ったシロが、モジモジしている姿が目の端に映っている。
よく見ると、シロの身体のあちこちには、小さなかすり傷が目立った。
おそらく抜け道にも敵が配備されていたんだと、その傷から察する事ができる。
シロも、たった一人でよくやってくれたんだな。
「シロ、よくやったな。さすが俺の弟子だ」
「ウチ、頑張ったよ? 師匠……」
わしゃわしゃと撫でられるのが、嬉しいんだろう。
目を細め喜ぶシロの尻尾が、激しく揺れている。
ミトとディナは、エレスとダイアに任せたから、大丈夫だろう。
これで俺の憂いはなくなった。
「エミリア、シロ……悪いがちょっと野暮用だ。ここは任せたぞ」
涙と鼻をすすりながら、エミリアが上目遣いで俺を見ている。
「野暮用……うん、分かったよ。ちゃんと帰ってくるんだよ、カケルくん」
俺は再び鈴木を探すために、走り出した。




