44話 救出作戦開始
エミリアとミト救出の作戦を実行するために、俺たちは領主の館に向かっていた。
「……シロさまは、お一人で本当に大丈夫なんでしょうか?」
ディナは、まだ不安そうにしている。
「大丈夫だって。シロの強さは街で見ただろ? もっと信用してやってくれ」
「そうですね……シロさまを信じます」
ディナは笑ってはいるが、まだどこか不安そうだ。
当たり前か。たった数人で敵の懐に飛び込もうとしているんだからな。
でも俺の考えた作戦なら……まあ問題ないんじゃないかと自信はある。
俺の考えた作戦。
まず俺たちは正門から堂々と館へ入る。
そこで俺は盛大に騒ぎを起こす。ここは様子見で、通常魔法で騒ぎを起こせばいい。
当然騒ぎが起これば、領主が雇った鬼人傭兵団や、ガラの悪い連中が出てくるだろう。
騒ぎが起きれば、館内の警備が手薄になる。
そこで、シロの出番となる。
シロには、館への抜け道を一人で行ってもらった。
エミリアとミトを探し出して救出するためにだ。
そのあとは救出したエミリア、シロと俺が全力で連中を叩き潰す。
エミリアは賢者だ。対集団戦の魔法を使えば、大人数なんて問題ないだろう。
俺は『剣聖』を中心に戦う。もちろん魔法と剣術を使い分けながらだ。
シロはその俊敏さを活かして、敵を倒していく。
とまあ、割と無謀に近い作戦だが、三人が揃えば問題はないだろう。
有象無象の敵なんて、物の数にも入らない。
突然馬の嘶きが聞こえ、順調に走っていた馬車が急停止した。
「うぉ!?」
「きゃっ!? カ……カケルさま……あの……その……」
馬車が急に止まったもんだから、中は激しく揺れ、その勢いで俺はディナの胸に顔が突っ込んでしまった。
「……え、え〜と……そのぉ……すまん……」
「いえ……こちらこそ、失礼しました……」
いや、失礼したのは俺の方であって、ディナのは失礼じゃないくらい大きくて……じゃなくてだ!
ヤバい、変な空気になってきた……非常に気まずい。
「ディナさま! ご無事ですか!?」
馬車の外から、心配そうにエレスが声をかけてきた。
「は、はい。大丈夫です……いったいどうしたんですか、エレスさん」
「ディナ様は心配ありません。おい、男! お前はちょっと降りてこい!」
なんなんだ、この扱いの差は。
しょうがない。ご指名されたんじゃ、降りるしかないか。
馬車から降りると、エレスとダイアが剣を構えていた。
馬車の先にいたのは、鬼人傭兵団。
仲間を従わせず、たった一人で道の真ん中に立ち塞がっている。
「貴様か。くっくっく……ここでずっと待っていた甲斐があったというものだ!」
え? わざわざ来るかどうかも分からない相手を、待っていたって言うのか?
それに、俺に鬼人傭兵団の知り合いなんていないぞ?
「あの〜すみません。俺たち、ちょっと急いでいるんでぇ、ここ、通してもらえませんかね?」
「ふざけるな! こっちはずっと待っていたんだ! そう簡単に通すわけがなうだろ!」
「待っていたって……それはそれはご苦労さまです。で、誰?」
「きぃい!! 忘れたとは言わせんぞ! さっき街でお前たちにミノタウルスを襲わせただろうが!!」
あ〜……そういえばいたなあ。
知らない間にいなくなってたから、すっかり忘れていた。
「忘れたのなら、思い出させてやる! またこれを使ってな!」
傭兵は懐から小さい黒い珠を二個、指に挟んで取り出した。
「それは……街でも使ったヤツか……?」
「そうだ! これは召喚珠と言ってな……この珠の中にはな、召喚士が封じ込めた召喚獣が入っているのだ……」
それを投げて、中に入っていたミノタウルスを呼び出したってわけか。
どおりで普通の魔物と違って、倒したら霧みたいに消えるわけだ。
「くっくっくっく……さっきのが、本当のおれの実力だと思うなよ……さあ! このおれの本当の実力を、思い知るがいい!」
実力を知るがいい! って……それってつまり……
「すごいのは召喚士であって、お前じゃないよね?」
「なに!?」
「……たしかに、男の言うとおりだな。傭兵のお前の実力じゃなくて、召喚獣と召喚士の実力だな」
「……うん……エレスの言うとおり……」
うわぁ……言われちゃったよ、傭兵さん。
たまにいるんだよな。自分の実力を履き違えるヤツがさ。
まあ、珠だけにな。
「……るさい……うるさいっ!! 要は勝てばいいんだ! 勝てばおれの実力だと皆が認めてくれるのだ!! イケ!!」
逆ギレかよ……なんか溜まってたんだろうなぁ。
その気持ち分かるよぉ。うんうん。
認めて貰いたいんだな、仲間たちに。
おっと。そんなこと考えていたら、珠から召喚獣が呼び出されているな。
今度もミノタウルスが召喚されている。
しかも二体もだ。
「来るぞ……注意しろ、ダイア!」
「……うん……」
あれ、俺は?
俺には注意しろってないの? 扱い酷くない?
それに今回のミノタウルス……なんか小さくないか?
街で戦った奴より、一回りも小さいな……なんか、二メートルくらいしかないぞ?
「なあ……小さくないか? 今回のミノタウルスは」
「ぬ……ち、小さくとも実力は十分だ……お前たちを倒すくらいには……」
あれ? 奴も思ったより、ミノタウルスが小さいって思っているんだな。
どんどん声が小さくなっていってる。
恥ずかしいのか……あれだけ啖呵を切っておいてだもんな。
「おい、男! なにを悠長に話しているんだ!? さっさと戦わないか!」
「……相手はミノタウルス……気をつけて……」
そんな怒らなくてもいいだろう。
ちょっとは気を使ってやれよ、傭兵に。
なんか可哀想になってきたな……はあ〜仕方がないか。
傭兵には悪いが、とっとと倒して領主の館に行くとするか。




