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43話 救出のために出来る事

「ディナ。あんたの親父さんが、やろうとしている事は分かった。けどよ、それとミトを拐ったのと……どう関係するんだ?」


 皇女のミトを拐った理由が、今ひとつ見えてこない。


「……父の真意はわかりません。ですが、父がしようとしている事は、おおよそ見当がつきます……

 おそらく、ミトを使って、交渉しようと考えているんだと思います……」


「領主様が、ミト様を使った交渉って……それはどう言う意味なんですか、ディナさま?」


「……ミトを使って、時間を稼ぐこと……その間に、(いく)さの準備を進めるつもりなんではないかと……私はそう考えています……」


 ミトを交渉材料に使って、王都との交渉を長引かせる。

 その間に軍備を拡大して、準備が整えば戦争を始めると言うことか。


「でもですよ? ミト様を救出するために、王都が軍対を派遣する可能性もあるんじゃないんですま?」


 シアンの言うとおりだ。

 いくら可愛い娘がいるからって、王様が手を出さないとは考えれない。


 エレスの口ぶりからは、王様は本当に手を出せないかもしれない。だが、反逆を企てる領主を放って置くとは思えられない。


「……父もそこは考えているのでしょう。王国の兵を迎え討つくらいの準備もしているはずです。

 それに館は帝国との国境に近い……王都が兵を派遣すれば、帝国といらぬ争いにならないとも限りません……」


 ディナの父親は、そこまで考えているのか。

 領主討伐が、下手をしたら帝国を刺激して、帝国との戦さになりかねないと。


 ……政治情勢はよく分からないが、王国と帝国はそんな関係にあるのか……


 ミトをそんな政治の道具として……まったく面白くないな。

 自分の娘の友達を政治に利用しようだなんて、とんだアホ親だ。


 しのごの考えるのは辞めた。

 そんな政治の駆け引きなんざ、俺の知った事か。


「よし、領主の館に乗り込むぞ」


「「え?」」


 ディナとシアンが、かなり驚いた顔をしている。


「カケルさん!? ディナさまの話、聞いていましたか?

 王国の軍隊を返り討ちにするくらいの準備をしてるかもしれないんですよ?」


「そ、そうです。無理はやめてください、カケルさま」


 誰がなんて言おうが、俺はもう知らん。

 細かいことはどうでもいい。


 領主の館に乗り込んでミトとエミリアを助け、領主をぶっ飛ばす。至極単純なことだ。


 二人は思い直すように必死に止めようとするが、もう決めたことだ。


「あの……乗り込むって言っても、いったいどこから侵入するつもりなんですか、カケルさんは?」


「そこは正面から堂々と行くに決まってる!」


「カケルさんっ!! もっとちゃんと考えてください! 失敗したら……皆さんが……心配する人たちもいるんですよ?」


 シアンが泣きそうな表情で、俺を睨んでいる。

 泣かせるつもりは無かったんだが……困ったな。


「……カケルさん。いったいどうしちゃったんですか? 前はそんなこと言う人じゃなかったのに……」


「え〜……そうかなぁ?」


 前からこんなだったと思うけど……俺、そんなに変わったのかな。


 ただ、そうだとしたら……異世界(こっち)に来て、昔の俺に戻ってきているのかもしれないな。

 自分の信じた道を進んでいく、馬鹿な俺に。


 ……おっと、今はそんなことを考えてる場合じゃかったな。


 まずは領主の館に、どうやって侵入するかを考えないとな。


 とは言ったものの、どうやって乗り込めばいいんだ。

 まさか段ボールを被って、侵入するわけにもいかんしな。


「侵入! そうだわ……シアンさま、この辺りの地図はありませんか?」

「地図……ですか? たぶん下にあるかと思いますが……ディナさま?」

「では、今すぐに地図を持ってきてください!」

「え? ええ、はい!」


 急かされるようにシアンは部屋を飛び出た。

 階段をドタドタと慌ただしく降りていく音が聞こえたきた。


 ディナは、なにかを思いついたらしい。

 それがなにかは、俺にも検討がつかない。


 少しすると、また階段を登ってきたシアンが、部屋に駆け込んで入ってくる。

 その手には地図を持っている。


 ディナに言われるまま、シアンはテーブルの上に地図を広げる。


「ここが領主の館……つまり私の住んでいる所ですね」


 ウォムの街から湖畔に沿った、右上のあたりを指差した。

 地図を見る限りじゃ、街からは結構離れている。


「そして……ここです。この辺りに、館から秘密の抜け道があるんです」


 今度は街の少し右上の辺りに、湖の近くに指先をあてている。


 ……抜け道? どうしてディナがそんな場所を、知っているんだ?


「ディナさま、どうしてそんな場所を?」

「ええ……小さいころ、よくここで遊んでいましたから」


 そう言って、ディナは悪戯っぽく笑っている。


「でだ。この抜け道は、どこに通じているんだ?」


「ここのは……館の地下に通じている抜け道です。今は誰も使ってない部屋に繋がっていたはずです」


 でもディナは、急にどうしてそんな抜け道の話を、持ち出してきたんだ?


「もしかして……この秘密の抜け道を使って、館に侵入するって事ですか? ディナさま?」


「はい、そのとおりです。ここからなら、誰にも気づかれる事なく……館に侵入できるのではないかと……どうでしょうか?」


 そう言うことか。

 なるほど、よく考えたな。


 ここから侵入して、館内に囚われているエミリアとミトを救い出せばいいのか。


 それでいいのか……いや良くないな。

 どうせなら、もっと派手に救出してやろうじゃないか。


「……あのぉ、カケルさん。どうしたんですか?」

「師匠、悪い顔してる……」


 訝しげに、シロとシアンが俺を見ている。


「ふっふっふ……もっといい考えが浮かんだぜ……」


 秘密の抜け道を使うっていう作戦は気に入った。


 だが俺はもっといい作戦を思いついた。


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