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4話 異世界でも無職です

 あまりにもポンコツなエミリア。

 このまま一人にするわけにもいかず、とりあえず弟子になる事になった。


「キミは今日からボクの……じゃなくて……く、くははは! 我が盟約により、お前は我が下僕(しもべ)にぃ……えっと……あのぉ……うぅ〜……」

「どうしたんだ? 続けろ」


 エミリアの顔は真っ赤になっている。


 冷ややか目で見られると、我に戻るんだろう。

 恥ずかしくなるなら、辞めとけばいいのに。


「……キミ、ノリが悪いよ? 師匠なんだよ、ボクは!」

「いや、師匠を諌めるのも弟子の勤めだろ」


 ぷく〜と、エミリアの頬が膨れあがっていく。

 子供みたいに口を尖らせて。


 やれやれだぜ。


「で、弟子って何をやればいいんだよ。結局のところ」

「あ……えっとぉ……とりあえず、キミの職業(ジョブ)を確認しなきゃ、かな」

職業(ジョブ)ゥ?」



 この世界では、十二歳になると神殿や教会で職業(ジョブ)を、神の加護だかで授かる。


 例えば、職業(ジョブ)が戦士になれば、多様な武器を扱えるようになったり、筋力や耐久性が上がる。

 魔法使いならば、自身の魔力が上がりいろんな魔法が使えるようになる。


 選ばなかった職業(ジョブ)でなくても武器や魔法は扱えるそうだが、専門職の職業にはどうしても及ばないそうだ。


 あと職業には、レベルという概念が存在する。

 実践経験や一定数以上魔物(モンスター)を倒して、教会や神殿に報告すればレベルが上がる仕組みだ。


 ちなみにレベルが上がると、上位職業(ジョブ)に転職できる。そうエミリアが教えてくれた。


 俺の職業(ジョブ)が分かれば、育成の方針が決まるらしい。


「で、俺に職業(ジョブ)を選ばさせるってことか」

「場合によっては、ね」

「場合? それって?」


 エミリアはクスッと微笑むと、俺の頭に自分の額を当てる。


 ぬ! 近い近い近い!

 緊張で心臓がドキドキする。


 今更だけど……さすがエルフ。

 肌は透き通るように白いし、まつ毛が長い……何より、いい匂いがする。

 若草のような匂い、とでも言うのか。


「……キミは他の世界から来た存在。だから……こちらに来た時に、既になんらかの職業(ジョブ)を与えられている可能性があるんだ」


 可能性がある。

 ずいぶんと確信的な言い方だが……エミリアは何か根拠があって言ってるのか?


「もしかして……そんな事例があるのか?」


「あるよ。勇者召喚……他の世界から勇者の資質を持った人間を召喚した場合。

 その人物には、勇者という職業(ジョブ)が付与されたって言う記録があるんだ……」


 なるほど……俺の場合は勇者召喚とは違うが、他の世界から来たって、条件は同じなんだ。


「じゃ……やるよ……」


 ――鑑定!


 彼女が呟いたと同時だった。

 ずわっと俺の中を、何かが通り抜けていった感覚があった。


「……終わったのか……?」

「うん……終わったんだけど、ね」


 エミリアは眉根を寄せている。


「あの……なにか問題でもあった?」

「……キミの職業(ジョブ)を鑑定したんだけど……職業(ジョブ)が無職って、なんなんだい!?」


 職業(ジョブ)が……無職? うん? 聞き間違えたかな?


「……冗談だよな? 無職って言うのは……なあ、エミリア?」

「ボクは冗談は言わないよ? ホントに無職なんだ……それにレベルが99って……どうなってるのか、ボクが知りたいよ!」


 目の前が真っ暗になった。


 エミリアも初めてのことらしく、困惑しているようだ。


 え、なにか? 俺は元の世界でも無職、異世界(こっち)でも無職なのか!?


 しかもレベル99って……俺は異世界でも無職を極めちまったてか!?


 誰も好きで、八年も無職ニートをやっていた訳じゃないってのに……異世界で就職できたらなぁって期待していたのに!


 こっちに来てまで、無職は無いんじゃないかなぁ?

 異世界の神さま! あんたはなんて薄情なんだあ!!


「あと、だね……キミのスキルも確認したんだけど……」


 まだ、なにかあるのか。

 言い淀むエミリアに、俺は不安しかない。


「ボクも見たことがない文字なんだよ。キミにも見てほしいんだ」


 再び腰の袋から紙とペンを取り出したエミリアは、何かを書き込んでいる。


「これ、なんて読むんだい? キミなら分かるよね?」


 紙に大きく書かれた文字。

 そこには、『Error(エラー)』と綴れれていた。


「エラー……俺のスキルは、エラーなのか……?」


 ショックだ。無職ってだけでもショックなのに。


 もっと、カッコいいスキルにして欲しかった。

 なんだよ、エラーって……俺の存在自体を否定か!


「……そんなに落ち込んだ顔して、どうしたんだい?」


 そんなに落ち込んだ顔してるのか。

 まあ無職レベル99とエラーじゃ、落ち込みもする。


「大丈夫だ。えっと、それはエラーって読むんだ。意味は……たしか誤りとか、間違いとか……そんな意味だったな」

「誤りか。ふむふむ……カケルくん、一回スキルを使ってみておくれよ?」


「スキルを? どうやって使えばいいんだ?」

「簡単だよ。スキル名を使用って唱えるだけさ。声に出しても出さなくても使えるんだ」


 スキルを使うのって、意外と簡単なんだな、

 もっと魔法みたいに複雑な詠唱が必要かと思ったんだが……よし、使ってみるか。


 ――Error(エラー)使用!


 ……あれ? 特に変わった様子はないな。

 自分の体を触ったり、手足をみたりするが……何も変わった感じはない。


「どうだい、カケルくん。何か効果は現れたかい?」

「……何も起こらないけど……」


 エルミアはまた難しい顔をすると、俺の全身を触り始めた。


「ちょ……くすぐったいだろ! 辞めろって!」

「おっかしいなぁ……ホントに何もないね……」


 俺、なんでこの世界に来てしまったんだ?

 はぁ〜……こんな惨めな思いをするなら、向こうの世界にいた方が良かったんじゃないか?


 落ち込む俺の肩に、エミリアは優しく手を乗せた。


「そう悲観しないでよ、カケルくん。職業(ジョブ)が無くても、特訓次第で一応……強くなれるんだよ。だから元気だしなよ?」


 一応か。

 たしか専門職じゃなくても、そこそこ戦えるんだったな。

 ……そうだな、嘆くのは辞めよう。


 とりあえず戦えるようになれば、異世界(こっち)にいるかもしれない、アンナや他の連中を探すことができるんだ。


「よし! エミリア。早速、特訓しようぜ」

「うん。さすがボクの弟子だ。そのやる気があれば、なんとかなるよ」


 そう言うとエミリアは、腰の袋から革製の鞘に納まった剣を取り出して、俺に手渡したきた。


「これはボクが昔使っていた剣だよ。なんの変哲もないただの剣だから、気兼ねなく使っておくれよ」


 おお……リアルな剣か。

 ずっしりとして、結構重いな。


 革製の鞘から剣を抜くと、俺はゲームとかアニメで見たような格好で構えてみる。


 我ながら(さま)になってる……ような気がする。


(ポーン! おめでとうございます。武器を装備してことにより、新スキル『下位戦士』を獲得しました)


 ……はい? 今の携帯の着信音みたいのと、音声ガイダンスは……なんだ?


 エミリアには聞こえていないのか? 俺の頭の中だけに聞こえたってことか?


「どうしたんだい、カケルくん。また何かあったのかい?」


 俺の様子に気づいたエミリアが、心配そうに声をかけてくれる。


 どれだけ心配症なんだ。

 無職でスキルが変だったから、弟子が心配になるのか。


「……なんか今、下位戦士がなんとかって、声が聞こえたんだが……」


「ホントかい!? そんなことが……じゃない。えっと〜……く、くはははは! 我が神……暗黒邪神のチカラならばそれくらい……うぅ〜……またそんな目で、ボクをみるぅ……」

「……ずいぶんと加護が遅い神さまだな」


 涙目で何か言いたそうに俺を睨んでいる。今はそれ(エミリア)は放っておこう。


「うぅ〜ノリが悪い弟子だぁ……まあ、いいや。ボクの手を握ってくれるかい?」

「に、握ればいいのか?」


 無言で頷くエミリアの小さな手を握った。

 彼女もキュッと力を込めて、握り返してきた。


「じゃあ、行くよ……転移!」

「うぉ!?」


 体が、ふっと宙に浮いた感覚に陥った。

 次の瞬間。俺とエミリアは庭園じゃない場所に立っていた。


 どこだ、ここは……外じゃない事はたしかだ。

 空の代わりに石造りの天井があるからだ。


「さあ着いたよ、カケルくん。ここがテメングラトの塔の第一階層だよ!」


 どうやら、俺はエミリアの魔法で、塔の最下層に連れて来られたようだ。

 何を始めるのかは分からない。


「始めるよ。カケルくん……キミの特訓開始だ!」


 俺の不安をよそに、彼女はそう告げた。


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