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2話 ボクっ娘エルフ

 どれくらいの年月を重ねたら、こんな太い幹になるのか。

 昔、両親と縄文杉を見たことがある。

 ここにあるのは、縄文杉より太く大きく育った大木。厳かな雰囲気を纏っている。


「なんだよ……ここ……俺はたしか……」


 あの時、空に現れた魔方陣に飛び込んで……あれは夢だったのか?


 いや、夢じゃない。

 俺はどこかの庭園か植物園のような場所にいる。

 大きな天然の石が置かれた立派な大きな池がある。


 ドーム状の天井。

 天井が透けて、雲が流れている空が見えている。

 ガラス張りの天井……だろうか?


「あれ……誰かいる……」


 大樹の根元の横に、ちょこんと置かれた椅子とテーブル。

 その椅子にゆったり腰掛けている少女が、俺の目に映った。


 金髪ツインお下げ髪の少女も、驚いた顔でこっちを見ている。


 どこかの屋敷とか……か?

 もしかして、同窓会でしこたま飲んで、酔っ払った勢いで他所様の庭で寝てたとか!?


 やばい……と、とりあえず不審者じゃなアピールをしなきゃな……ええと、ええと……


「こ……こんにちは! 俺はカケルって言って、あの決して怪しい者じゃないです!」


 いやいや、自分で怪しくないとか言わんだろ!?

 ……逆に怪しい人に見えてしまうじゃないか!


 少女は肩にかかった髪を払うと、スっと立ち上がった。


「人だ……久しぶりの人だあ!!」

「は!? ちょ、ちょっと!?」


 勢いよく駆け寄ってきた少女が、俺にフライングボディアタックを決める。


 なんとか転けずに、彼女を受け止める。


「ぐっは……な……なんだ……痛ぇ……」

「あ……ごめんよ、驚かせちゃって……えへへ」


 少し照れくさそうにしながら、彼女は俺から離れた。


 サラサラ金髪、あどけない表情をした少女。

 その少女は眠そうな眼差しで、じっ〜と観察するように俺を見ている。


「……そういえば……キミは誰なんだい? と、言うからどっから飛んできたんだい?」

「今更かよ! 飛びつく前に聞くだろ、普通は!」

「……ぴぃ……そ、そんなに大きな声、出さなくもいいじゃないか……」


 しまった……大人げなかった。

 つい大声でツッコミ入れてしまった。

 少女が少しビクついてるじゃないか……何をやってんだ、俺は!


「ご……ごめん。決して驚かせるつもりは――」

「……いいよいいよ。ボクも久しぶりに人に会えて嬉しくなって、ついね」


「久しぶり……? 人に会うのが久しぶりって……?」


「……うん、久しぶりだよ……まあ、話すと長くなるんだけど……実は昔、ちょっと拗らせてて……ボクには孤高が似合うんだ――とか、やっちゃってた時期があってね。えへへ……」


 中二病だ……この子は、中二病患者だ。

 これくらいの年齢なら、発症してもおかしくはない。

 俺もそういう時期があったわけだし、普通だ普通。


「……それで、久しぶりってどれくらいだ? 一年? それとも二年くらいか?」

「……うーん……そうだね……二百年くらいだったかなぁ……」


 うん? 聞き間違いか?

 今、二百年って言わなかったか?

 いやいや、二百年ってまさか……まさかだよな?


「あの……つかぬ事をお聞きますが……二百年って言った?」

「そうだよ、二百年も拗らせてたんだ……我ながらちょっと、恥ずかしいよ……」


 顔を紅潮させて、恥ずかしそうにちょっとモジモジさせている。


 中二病を恥じているのだろうか。

 黒歴史だな……それは恥ずかしいだろう。


 モジモジしている彼女の髪が揺れると、髪の隙間から尖った耳が見える。


「なぁ、あんた……エルフなのか?」


「エルフ? えーっと……く、くははは! そうだ人間よ! 我は至高にして最強の闇大魔導士……闇の高位(ハイ)エルフ、エミリア!」


 高笑いするエミリアと名乗ったエルフ。


 手で顔を覆い、右目を覗かせたそのポーズ……間違いない。彼女はいまだに中二病患者だった。


「そっすか。闇の……えーと?」

「う……ご、ごめんなさい! えっと、本当はボクはただの賢者で、闇とかそういんじゃなくて……うぅ〜恥ずかしい……ごめんなさい……」


 やった後に照れるならやるんじゃあない。

 なんだか見てるこっちまで、恥ずかしくなる。


 うん? あれ、ちょっと待て。今、彼女なんか言ったな……闇魔道士じゃなく、ただの賢者って。


「……賢者!? あんた、賢者なのか!?」

「う……そ、そうだよ? ボクはただの賢者……」


 いやいやいや!

 賢者って……結構すごい魔法使いってイメージなんだが!?

 魔道士よりすごい存在なんじゃないのか?


 賢者ってのも気にはなるが、今はもっと先に確認しなくちゃならないことがある。


「なぁ……エミリア、教えてくれ。ここはいったいどこなんだ?」

「う? ここがどこかって? 何を言ってるんだい? ここはガルハナ大陸にある、アヴァルト王国に決まってるじゃないか?」


 何一つ聞いたことが無い国や大陸の名前。


 エルフに賢者……知らない地名……もしかしたら、ここは異世界!?

 あの魔方陣は異世界への扉……? え? えええ!?


「なああ!?」

「ぴぃ!? ど、どうしたんだい、急に!?」


 落ち着け、俺!

 いや落ち着いてる場合じゃないぞ、俺!

 い……異世界だぞ、異世界?

 これが落ち着いていられるか!


「なあ、エミリア! どっかこう……街とかに行きたいんだけど、どうしたらいい!?」

「街かい? 街なら湖畔にある寂れた街が一番近いけど……どうしたんだい?」


 全員とまではいかないが、同窓会に出てた連中の何人かがそこにいるかもしれない。


「よし! なんか悪かったな。不法侵入みたいな真似して……じゃ、俺行くわ!」

「ちょ、ちょっと待ちなよ!」


 小さな体のどこにそんな力があるのか。

 身長差は二十センチ以上ある。

 体格も俺の方がいい。


 彼女は服の裾を掴んで、前に進もうとする俺の体を止めている。


「落ち着きなよ、キミ! いったいどこに行こうって言うんだい?」

「は、離してくれ! 俺には探さなきゃならん人たちがいるんだ!」

「人……?」

「そうだ、人! それも大人数の人を――うわ!?」


 彼女は急に手を離し、何を考え始め出している。


 手を離された俺はたまったもんじゃ無い。

 反動で地面に転んだからだ。顔も打ったし……痛い。


「あ、あのなぁ! 急に手を……って、どうしたんだよ、真面目な顔して……」

「……うん……キミのこと。もっと詳しく話してくれないかい?」


 俺のこと?


 さっきまでの涙目や、中二病だったりした彼女とは違った。

 真剣な眼差しで、俺に問いかけてきた。


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