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13話 ギルド

 ウォムの街の北側にある船着場。

 桟橋には、冒険者っぽい連中がたくさんいる。


「あそこから、塔に行ってんのかねえ……」


 何隻かの船が、テメングラトの塔に向かっているのが見える。船の上には、冒険者っぽい人たちがいる。


「カケルくん、何をやっているんだい? 早く入るよ?」

「おお、そうだったな」


 船着場からそれほど離れていない場所に、ギルドの建物がある。

 地図で確認したから、ここで間違ってはないだろう。


 ギィと軋む音をたて、木製の観音扉を開けた。


 これが……ギルド。


 入り口正面の奥には、カウンター。

 受付嬢っぽいのが四人、等間隔で並んで座っている。


 普通の格好の人達がいる。街の住人だろうな……依頼を出しに来てるのかね。


 お……隣の部屋には、冒険者たちがいる。

 壁のボードに張り出されたクエストとかを見ているのか。


 耳が長いエルフに……おお、あれが獣人! それと筋肉隆々の女戦士に、魔法使いっぽい服装の人……ギルドって感じだ!

 なんか、ゲームやアニメとかと同じって……ちょっと嬉しいな。


 エミリアも、ぽけ〜とした表情でギルド内を見ている。


「受付のところで依頼してくるから、ちょっとその辺で待ってろよ」

「うん……わかったよ……」


 上の空っぽいが……エミリアもギルドが珍しいのか?


 さてと、依頼か。


 元同級生を探せる手段が増えることは、いいんだが……本当に大丈夫なのか。心配になってくるな。


「はじめまして。当ギルドのご利用は、初めてですよね?」

「……どうして初めてって、分かるんだ?」


「ワタシって、依頼した人の顔を覚えるのが得意なんです。あなたは初めて見たから。

 それと、入って最初にキョロキョロする人は、だいたいギルドの利用も初めての人が多いんですよ。あと……あなたは、ぜんぜん冒険者ぽくないですしね」


 冒険者っぽくないのか。

 たしかに剣を持ってるけど、ここにいる冒険者たちと体格も雰囲気も、ぜんぜん違うしなぁ。


「では……当ギルドの仕組みを簡単に、ご案内させていただきますね」


 依頼内容によって、依頼の難易度を決めるそうだ。

 難易度の高い依頼ほど、信頼のおけるベテラン冒険者に頼む。結果、成功報酬は高額になってしまう。


 依頼難易度は、星の数で表すみたいだ。

 星の数は一から七まであって、七が最高難易度の内容。


 冒険者には、等級とかそう言うのは無い。

 どこでベテランと判断するかというと……ここでまた職業(ジョブ)が影響してくる。


 職業レベルが高いことが条件であること。あとは実績と経験を加味する。


 ギルドは依頼の難易度決め、依頼成功率が高い冒険者に任せる……という事になる。


「以上となります。では、改めてまして……今日は、どのようなご依頼でしょうか?」

「実は、人探しの依頼なんだけど……」

「人探し……ですか?」


 受付嬢は、少し難しい表情をする。


 人探しはできません、とか言わないよな?


「探されるのは、お一人だけですか?」

「いや、一人じゃないんだ……多分、三十人くらいかな」

「さ……三十人!? あの……三十人、なんですか?」


 受付嬢の大声に、周りの目が俺たちに集まってきた。


「あ、すみません。急に大きな声出しちゃって……本当に三十人なんですね?」

「ああ。三十人で間違いないな……」


 根拠は無い。

 だけど……あの日、魔方陣に吸い込まれたのは、プールに集まっていた元同級生たちだ。

 あの場に全員いたなら、俺を抜いて三十人いたはずなんだが。


 いけ好かない連中を探す必要もないんだが……もしかしたら、異世界(こっち)で、大変な目にあってるかもしれない。

 放っておく訳にもいかないからな。


「……分かりました。この依頼、当ギルドの信頼にかけて、達成させていただきます」

「え……本当に?」


「はい。ただ三十人となると、ひと組のパーティだけに任せる訳にはいきません。

 このギルドには、他の国からも冒険者が来るので、その人たちにも依頼をお願いすることになります」


 なるほどな。

 他の国から来ているなら情報も入りやすいし、捜査範囲も広がるってわけだ。

 ギルドって、ただ単に魔物を倒したりするわけじゃないんだな。


「ですので。その辺りを考慮すると、依頼の難易度は星七つとなります。

 成功報酬も複数の冒険者に依頼することになりますので、高額になりますが……宜しいですね?」


「うん、構わないよ。お姉さん」


 エミリアが、俺後ろから顔を覗かせている。


 うぉ!? びっくりした。

 いつからいたんだ?


「えっと……妹さんですか?」

「妹……違うよ。ボクは、カケルくんの師匠なんだ」


 受付嬢は困った顔をしている。


 まあ……身長小さいし、寸胴だし……妹にしか見えないのかもしれないな。


「……小さいから妹さんかと……コホンっ! では、師匠さん? 書類にサインをお願いします」


 差し出された紙に、エミリアはサッとサインを書き終える。


「契約成立です。あと人を探すので何か情報があればいいんですが……その方々の名前とか、あとは似顔絵などがあれば人探しには有効ですよ」


 名前……あれ? そう言えば、俺……全員の名前覚えてない。

 うわ……すっかり忘れてる。

 どうしようか……とりあえず、覚えてる連中の名前を書いておこう。


 それ以外は見つけた連中から聞き出せばいいか。

 俺って冴えてるなぁ。


「紙と書くものをくれるか?」

「はい、これに書いてください」


 えっとぉ……橘アンナ、橘ユウキに……中嶋スズ。それと田中マモルと……あとは誰だったかな……


 思いつく名前を一通りに紙に書いた。

 十五人くらいしか思い出せなかったが。


 受付嬢も笑顔で、全員なんて名前分からないですよね、って言ってくれて良かった。


 ついでに、似顔絵も描いた。


 橘アンナの似顔絵だ。テレビやネットで顔をよく見ていたから、一番描きやすかったのが理由だ。


 出来上がった絵を見て、受付嬢とエミリアは苦虫を噛み潰したよう表情になっていた。


「えっと……絵がずいぶんと独特ですね……」


 受付嬢がそう呟いた。

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