プロローグ
とある活火山の祭壇にて、3人の男たちが何かの話をしていた。活火山であるが故に祭壇の周りには煮えたぎるマグマが満たされており、とても暑いというレベルではない。それでも3人は全く意に介することなく、いずれも顔を隠すような格好をしている。
「儀式の準備が整うまでに必要な時間は?」
黒い装束のようなものを纏った、比較的細身で長身の男が言葉を発した。
「あと3日、といったところだ」
その質問に反応したのは、祭壇の真正面に立っていたリーダー格らしき大柄な男であった。全身を真っ黒なローブに包んでおり、顔には不気味な仮面を付けている。
「ケッ。相変わらずまどろっこしい作戦ばっか考えやがってよぉ。巫女1人ぐらい、俺だけで何とかなるっての」
大男の回答を聞き、今度は横にいた男がイラついたように地面を足で叩いた。声の主は他の2人と比較するとやや小柄で、腰には2本の刀を差している。
そんな不満タラタラの態度の小柄な男を咎めるように、大男が再び口を開いた。
「お前の実力は認めるが、慎重に事を運ばねばならん。我らが何年この時を待ちわびたと思っている?」
「ちっ、わかったよ」
刀の男は軽く舌打ちをすると、渋々といった様子で黙り込む。それを見た大男は、今度は黒い装束の男の方を向いた。
「いいか。決行は祭りの直前、巫女が街の様子を見に来る時だ。白昼堂々、それも大勢の民の眼前で実行することに意味がある」
大男は作戦の内容を説明する。それを聞いた装束の男は、確認するように大男に問う。
「巫女側の戦力は?」
「衛兵の他に、常に3人の親衛隊が側に付いている。いずれも相当の手練れではあるが、所詮はお前の敵ではないだろう」
大男の回答を聞き、装束の男は軽く頷いた。顔を隠しているため表情までは読めないが、どこか冷たい雰囲気が漂っている。
「了解した。では拙者はもう行くとしよう」
その言葉を最後に、装束の男の姿が一瞬にして消えた。それを見計らって、今度は刀の男が大男に向かって質問を投げかける。
「で?俺の出番は?」
「お前の仕事は他の対抗勢力の排除だ。何分祭りの期間だからな、海外から手練れの者が観光に来ているやもしれん。例え部外者であっても間違っても邪魔だけはさせるな」
大男は釘をさすように強い口調で言い放ったが、刀の男は肩をすくめてあざ笑うように言葉を返す。
「ハッ!俺に勝てる奴なんざいるわけねぇだろうが。ま、あんたぐらいの実力者だったら、もしかするかもしれねえけどよ」
軽口を叩く刀の男であったが、それを聞いた大男は念を押すように忠告する。
「自信があるのは結構だが、油断はするなよ。世界にはお前の想像を超えるような強者がいるのもまた事実だ」
「へーへー。せいぜい気をつけるとしますよ」
刀の男はやれやれといった様子で返事をすると、その場から立ち去る。1人残された大男は、祭壇を見上げながら呟いた。
「あと少しです。それまでお待ちください、我らが神よ…」
大男の声に答えるかのように祭壇に灯された炎が揺らめき、灼熱のマグマがうねりを上げた。




