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先生は世界を救った英雄ですが、外道です。  作者: 火澄 鷹志
新任教師レクト編
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四英雄 魔術師カリダ ⑦

 カリダはその後もS組メンバーからの質問に答え続けた。


「カリダ様の一番得意な魔法は何ですか?」

「爆発系の魔法ですね。自分で言うのも何ですが、城1つぐらいなら簡単に吹き飛ばせますよ?」


 ルーチェからの質問に、カリダは涼しげな顔のまま恐ろしい事実を平然と答えた。


「魔法が上手になるためにはどんな事が必要ですか?」

「人それぞれですが、まずは日々の練習、後は人を巻き込む危険のない広い場所で高等魔法のコントロールを定期的に行うとよいと思いますよ」


 魔法が得意なリリアからの質問には、自論を交えて答える。


「旅の中で一番倒すのに苦労したモンスターは?」

「ベロニカ、それわざわざカリダ様に質問しなくても、レクト先生に聞いた方が早くない?」

「まぁまぁ。やはり一番強かったのは魔王メトゥスですが、他に強かった印象があるのは東方の島国で戦ったヤマタノオロチでしょうかね」


 ベロニカの質問には横からリリアの指摘が入るが、それに構わずカリダはかつて戦った巨大モンスターの名を挙げた。




 それから一通りの質問を終えたところで、突然カリダが残念そうな表情になる。


「さて、そろそろ時間ですね。申し訳ないですがここまでにしておきましょう」


 カリダのその一言を聞いて、S組メンバーは代表であるフィーネを筆頭に姿勢を正した。


「「「ありがとうございました!!」」」

「それじゃあ皆さん。勉強、頑張ってくださいね」


 全員に礼を言われ、カリダは笑顔で締めくくった。これで本当に社会科見学は終わりなのだが、レクトはそのまま生徒たちにある事を指示する。


「お前ら、先に入口に戻ってろ。俺は少しカリダに話がある」

「はい、わかりました」


 フィーネは返事をすると、案内役の老神官と共に皆を引き連れて神殿の入口の方へと向かっていった。生徒たちの姿が見えなくなったところで、レクトは改めて口を開く。


「カリダ、礼を言っとくぜ。急にこんな事引き受けてくれてよ」


 レクトが素直に礼を述べたことにカリダは少し驚いたようであったが、すぐに真顔になると若干嫌味がかった口調で返事をする。


「ホントよ。突然手紙が来た時は驚いたわ。しかも内容が“教師になったから生徒たちをアルカナム神殿に社会科見学に連れて行きたい”って、いくらなんでも展開が急過ぎるでしょうが」


 喋りには棘があったが、カリダ自身は不満どころか何となく嬉しそうな様子だ。レクトもそれを察したのか、カマをかけるように言葉を返す。


「その割には、よく許可してくれたもんだな?」


 勿論、昔の仲間のよしみというのもあったのだろうが、それにしたって随分とあっさり許可をしてくれたものだ。だが、それに関してはカリダにも明確な理由があった。


「ま、あんた自身が楽しむ為なら問答無用で願い下げだけど、あんたが他人の為に何かしようと思った時はいつもいい結果に繋がるからね」

「へぇ、そんな風に思ってたのか。初耳だぜ」


 意外な事実にレクトは面白おかしそうな反応を見せたが、カリダは髪をかきあげながら補足する。


「ええ。とは言っても、そんな事は片手で数えられる回数だけしかないけど」


 今に始まった事ではないが、毎度のように皮肉を交えたカリダの言い方にレクトは目を細めた。


「褒めてんのか、貶してんのか、どっちなんだよお前は」

「両方よ」


 即答したカリダを見て、レクトは「あぁ、そう」と呟きながら腕を組む。しかし何を思ったのか、カリダは急に真剣な表情になると唐突に話を変えた。


「レクト。あなた、自分が思っているよりも重要な立場にいるかもしれないわよ?」

「どういう意味だ?」


 また随分と突飛な話であったので、思わずレクトは真顔で聞き返してしまった。ただ、カリダの雰囲気からするととても冗談を言っているようには見えない。


「もしかしたらあなた、この先また大きな出来事に直面するかもしれないわ」


 やや曖昧な表現であったが、自身と同じ四英雄であるカリダから見て大きな出来事となると、とても只事には思えない。レクトにとっても悪い意味で大きく興味をそそられる言葉であった。


「根拠は?」

「あくまでも私の勘だけどね」


 カリダの答えを聞き、レクトは軽く頭をかく。普通ならば勘だと言われて鼻で笑ってもおかしくはないのだが、カリダとレクトの場合は少し違っていた。


「勘弁してくれ。お前の勘は割と当たる」


 レクトはやや皮肉めいた口調で答えるが、決して馬鹿にしているような様子ではなくきちんと警告として受け止めているようだった。


「さて。ガキどもが待ってるだろうし、俺ももう行くわ」


 とにかく、これでもう話は十分だ。レクトは踵を返して歩き始めるが、そんな彼をカリダが呼び止めた。


「レクト」


 その声にレクトは立ち止まり、再びカリダの方を見る。カリダは先程とは打って変わって穏やかな表情を浮かべていた。


「またいつか、4人で会えるといいわね」

「あぁ、そうだな」


 そう答えながらレクトは軽く手を振り、神殿の大広間を後にする。残されたカリダは1人、広間に飾られた三賢者の絵画を眺めていた。






 レクトが神殿を出ると、外では待ちくたびれた様子のS組メンバーが出迎えた。ようやく現れたレクトの姿を見て、ニナが不満を漏らす。


「せんせー、おそいー!」

「たった数分じゃねえか、文句言うなよ」


 レクトはニナをなだめるように言う。ニナ自身はまだ不満そうな顔をしているが、それとは別にフィーネがこれからの予定をレクトに尋ねた。


「先生、この後はどうするんですか?」


 それを聞かれたレクトは、近くにあった教会らしき建物の上部に取り付けられた時計を見上げた。この後フォルティスへは来た時と同じように飛行船を使って戻るのだが、予定の時刻まではまだ時間がある。


「本当は神殿の見学が終わる頃に飛行船が迎えに来る筈だったんだが、予定より1時間も早く終わっちまったな」


 レクトの言うように本来ならばあと1時間は神殿を見学している予定であったが、おそらく例の法皇の件でカリダに急用ができてしまった。元々今日の見学自体、レクトがカリダに無理を言って頼んだものであるため、これ以上彼女に強要するわけにもいかない。

 生徒たちもそれを察していたのか、特に何も言及することはなかった。それどころか、ニナからは前向きな発言が飛び出す。


「じゃあせんせー!ニナ、マギアレートのお菓子とか食べたーい!」

「あんたねぇ…」


 お気楽なニナを見てリリアは呆れたように呟くが、断る理由もないのでレクトはニナの提案を快諾する。


「そうだな。他にする事もねえし、少し観光してから帰るか」

「いやったぁー!」


 レクトの返事を聞き、ニナが歓喜の声を上げる。他のメンバーも口には出さないが、実のところは少なからず楽しみにしているようだ。


「とりあえず、まずは商店街の方に行ってみるか。あそこなら色々売ってるだろ」


 レクトの言葉に生徒たちは頷き、はしゃぐニナを先頭にぞろぞろと移動を始める。その光景をただ黙って眺めていたレクトだったが、ふと思い出したように空を見上げて呟いた。


「大きな出来事、ねぇ…。あいつの勘って悪い事ばっかよく当たるからなぁ」


 絶対に何かが起こると決まったわけではないが、レクトの中では先程のカリダの言葉が少し引っかかっていた。しかしそんな事など知る由もないベロニカが、空を見上げて突っ立ったままのレクトに向かって叫ぶ。


「センセイ、早くしてくれよー!」

「わかったよ、そんなに急かすな」


 そう言ってレクトは小走りになると、生徒たちの待つ方へと向かっていった。

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