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先生は世界を救った英雄ですが、外道です。  作者: 火澄 鷹志
新任教師レクト編
42/152

D組との合同授業 特別編:レクトによるD組メンバーへの指導

レクトがD組の生徒たちに指導を行うだけの、いわば外伝になります。長い説明ばかりでこの後の展開に絡む要素はほぼありませんので、読み飛ばして頂いてもストーリーがわからなくなるという事はありません。

 S組メンバーがD組の担任であるギルバートからの批評を聞いている間、当然ながらS組の担任であるレクトもD組メンバーに対しての批評を行っていた。


「とりあえず、戦術云々に関しては後でお前らの担任から詳しく話があるだろうから、俺からは個々の戦い方についてだけ言及させてもらう」

「「「はい!」」」


 レクトの言葉に、大半のD組メンバーが返事をした。もっとも、中には一部返事をしなかったりそっぽを向いている生徒もいるが、レクトは気にせず話を続ける。


「よし、じゃあまずは貧乳の斧使いから」

「誰が貧乳だ!!」


 初っ端からいきなり、しかも堂々と禁句を言われアレックスは思わず憤慨する。が、それでは一向に話が進まないと思ったのか、横からモニカが口を挟んだ。


「レクト先生、この子の名前はアレックスですわ。変な渾名を付けないでくださいまし」

「あぁ、悪かったよ。アレックスな」


 適当な謝罪を述べながら、レクトは話を続ける。とはいえ言動や態度はいい加減ではあるが、戦闘に対する見方や意見だけは至極まともなのがこの男の特徴だ。


「おそらく自分でもわかってると思うが、お前がニナに負けた一番の原因はリーチの差だ。基本的にリーチの短い武器でよりリーチの長い武器に勝つには、それ以上に使い手自身の力量と状況判断能力が重要になってくる」


 的を射たようなレクトの意見に、アレックスも納得したような表情を浮かべながら頷く。だが、彼女に対するレクトの話はこれで終わりではなかった。


「あと、これはあくまで俺の勘なんだが、今回の授業ではニナには2人がかりで挑めって言われてなかったか?」

「…言われた」


 痛いところを突かれ、アレックスの声が小さくなる。そんな彼女を見て、ジェニファーがここぞとばかりにその事をレクトにチクった。


「本番になってこの子が作戦を破ったんですよ、先生」


 それを聞いたアレックスはビクッと体を震わせる。逆にレクトは一気に冷たい目になると、ドスの効いた声でアレックスに注意を行った。


「論外だ。作戦を無視していいのは想定外の出来事が起きた時か、指揮官が自分よりも無能な時だけだ。よく覚えとけ」

「…はい」


 強烈な威圧感を放つレクトの言葉にシュンとなりながらも、アレックスは素直に返事をする。彼女に対する戦術指南はこれで終わりだが、最後にレクトは1つだけ付け足した。


「あと、貧乳って言われてカッとなる癖はちゃんと直しとけよ。貧乳呼ばわりされてキレる女は将来ロクなことにならねえからな」

「だから貧乳って言うな!!」


 2度も禁句を言われ、アレックスは再び怒りを露わにする。横でジェニファーがなだめているが、そのやり取りを黙って聞いていたアイシャが不意に質問した。


「先生、それってもしかして経験談ですか?」

「まぁ、想像に任せる」


 アイシャの至極どうでもいい質問に、レクトも適当な受け答えをする。ただこれ以上この話を掘り下げても仕方ないので、レクトは次の生徒の指導に移った。


「次は槍使いの…えーと、ジェニファー」

「はい、先生」


 レクトに名前を呼ばれ、ジェニファーは返事をしながら手を挙げる。


「お前はそんなに直すところはないな。強いて挙げるなら槍のリーチの長さを活かした攻撃は悪くないが、それに頼りすぎてる部分がある。今後はもう少し足捌きにも気を配るようにしろ」

「はい、わかりました」


 レクトのアドバイスを聞き、ジェニファーは素直に返事をする。言われた事は少ないが、逆に言えばそれだけ問題が少なかったということだ。

 そのままレクトは、次の生徒の指導へと移る。


「次は弓使いの…クレアだな?」

「はい、先生」


 名前を呼ばれ、クレアは返事をする。


「確かお前、ルーチェが起こした強風で矢を射るのを諦めて、接近戦に持ち込んでたよな?」

「ええ、そうですが」


 レクトの言うように確かにあの時、ルーチェの巻き起こした強風によって矢を使えなくなったクレアは、ナイフでの接近戦に切り替えていた。

 しかし、そんな彼女に対してレクトは思いもよらない大胆な事を言い出す。


「強風の中でも正確に矢を射ることができるように練習しとけ」

「えぇっ!?そんな無茶苦茶な!」


 あまりにも唐突なレクトの発言に、クレアは驚きと戸惑いが隠せなかった。とはいえレクトの方も決して根性論などで言っているわけではなく、きちんと理由があってのことであった。


「確かに無茶苦茶に思えるかもしれないが、無理じゃあない。熟練のハンターの中には、風の中でも狙いを定めて矢を射ることができる奴もいるしな」

「そうなんですか?」


 レクトが単に無茶を言っているだけではないと知り、クレアは少し安心したような顔になる。そんな彼女にもわかりやすいよう、レクトは実際の例を挙げて説明した。


「あぁ。ある程度の風なら計算に入れて矢を射ることは可能だし、矢に魔法を纏わせて強風の中を無理矢理飛ばす技だって存在する」

「わ、わかりました。勉強しておきます」


 弓は専門ではない筈であるにも関わらず自分の知らない知識を次々に披露するレクトに、クレアは驚きつつも答える。

 そんな彼女の反応を横目に、レクトは次の生徒の名前を呼ぶ。


「次はハンマー使ってた、マリアン…だよな?」

「はい、お願いします」


 確認するように聞いたレクトに対し、マリアンは礼儀正しく頭を下げながら返事をした。


「はっきり言っちまえば、お前に言える課題点はハンマー使い全般に言える事だ。何だかわかるか?」


 そんなレクトの質問に、マリアンは少し考え込む。だが、結局ハンマーを使う際に気を付けなければならない事など、彼女にとっては1つしか考えられなかった。


「鈍重さ…でしょうか?」

「ま、ほぼ正解」


 自分の答えが合っていたようなので、マリアンは少し安堵する。しかし、その後に待っていたのはレクトのきつい指摘であった。


「物にもよるがやっぱりハンマーは重いし、どうしても動きは鈍くなる。だからこそ、今回の戦いにおいてあんな風にコケるのはいただけないんだよな」


 事実ではあるのだが、「コケた」という言い方にマリアンは少し恥ずかしくなってしまう。勿論、レクト自身も彼女が単にドジを踏んだわけではないということはわかっていたのだが。


「無論、ルーチェの魔法で体感時間を狂わされたってのもあるだろうが、それを踏まえても今回の戦いはいい動きだったとは言えないな。理想的な事を言えば、“体感時間を狂わされた”と気付いた時点ですぐに順応できればベストなんだが」


 レクトは当たり前のように語るが、彼の言うようにそれはあくまでも理想の話だ。実際、マリアン自身も半信半疑といったような顔をしている。


「そんな事が可能なんですか?」


 マリアンとしては時間の感覚を狂わされたまま自由に動くなどとてもできそうには思えなかったが、相手は四英雄レクトだ。レクト自身も当然のように答える。


「少なくとも、俺はできるよ。ただ、体感時間を狂わされた場合の体の動かし方なんて普通は練習できないから、まずは基本的な体の動かし方を極めることだな」

「はい、わかりました」


 マリアンが納得した表情になったのを確認すると、レクトは次の生徒を見た。


「次は…アイシャだったか」

「はーい」


 名前を呼ばれ、アイシャは軽く返事をする。ただ彼女の戦い方についてはレクトにとってもアドバイスが難しいのか、少し悩んだような顔を見せていた。


「姿を消す魔法は使い方によっちゃあ確かに強力なんだが、拠点防衛に役立つかと言われるとちょっとなぁ…」

「あ、自覚してまーす」


 アイシャも自身の得意技が元々防衛向きではないという自覚はあるので、レクトの発言に対しても特に何とも思わなかった。


「ま、でも使えて損をする魔法じゃない。ただそれはあくまでも奥の手ぐらいに考えておいて、短剣での近接戦を主軸に据えるのがいいだろう。俺から言えるのはそれくらいだな」

「はい、わかりましたー」


 特別ダメ出し等もなかったからかアイシャが明るく返事をしたのを確認すると、レクトはそのまま次の生徒を見る。


「次、セシリア」

「はい、先生」


 セシリアに関しては事前に挨拶に来たのが印象に残っていたのか、えらくスムーズに名前が出てきたようだ。


「ぶっちゃけた話、悔しいだろ。剣戟ならともかく、足払いなんかで負けてよ」


 セシリアの心情を知ってか知らずか、笑いながらレクトは問う。そんなストレートなレクトの質問にセシリアは少し戸惑うが、レクトが言ったことも事実であったのでセシリアは無言で頷いた。


「俺が思うにお前がベロニカに負けた一番の理由は、お前自身の実戦経験が明らかに足りないからだと思うんだよ」

「実戦経験…ですか?」


 レクトに実戦という言葉を出され、セシリアはあまり納得がいかないような様子であった。


「でも、実戦なら普段から授業で生徒同士の実戦練習を行っていますが」


 これまで行ってきた授業の成果から、セシリア自身は自分の実戦経験が不足しているなど思ってもみなかったのだ。だが、そんな彼女の考えはレクトによってバッサリ切り捨てられることとなる。


「俺から言わせてみれば、お前ら10代の小娘同士がチャンバラやってたって大した実戦にはならねえ。それだけで強くなろうなんざお笑い種だ」


 オブラートなど知らないと言わんばかりにはっきりと物を言うレクトであったが、逆にその言葉に少しムッとしたのか、セシリアはレクトにある事を尋ねる。


「あの…つかぬ事を伺いますが、S組は普段どんな風に戦闘訓練を行っているのですか?」


 そこまで言うのなら、レクト自身は自分が担任をしているS組の生徒たちにどのような実戦をさせているのかをセシリアは聞いてみようと思ったのだ。


「細かく話すと長くなるから簡潔に言うが、7人全員俺がまとめて相手して、その都度悪い動きを矯正してる」

「「「えぇっ!!?」」」


 予想の斜め上を行くS組の授業スタイルに、セシリアはおろか他の生徒たちまで驚いたような声を上げる。


「俺にしてみればそれが一番手っ取り早い。あいつらは自分より遥かに格上の相手に挑めるわけだし、俺自身もあいつらの動きを一番よく把握できるからな」


 レクトの話を聞き、セシリア自身もS組メンバーが短期間で一気に成長した理由を理解することができた。だが同時に、そんな人間に指導を行ってもらっているS組の面々が羨ましくも思えてしまったのも事実であった。

 そんなセシリアの内心を察したのか、レクトは少し残念そうな顔になりながら話を続ける。


「悪いが、これは普通の教師には無理だ。最強である俺だからできるようなもんだからな」

「はあ…そうですか」


 自分で最強と言ってしまうのも少々おかしな話ではあるが、実際フォルティス王国全土を探してもレクトより強い人間などまず存在しないだろう。セシリアはがっかりしたような様子で、ため息混じりに答えた。

 そんなセシリアの内心などつゆ知らず、レクトは次の生徒の指導へと移行する。


「次は…パトリシア、だったな」

「はい、そうです」


 名前を呼ばれ、パトリシアは返事をする。


「お前もセシリアと同じで剣と盾を使ってるようだが、盾はあえて小型にしているのか?」

「その通りです。そちらの方が動きやすいので」


 パトリシアとセシリアは2人とも剣と盾を用いる戦闘スタイルだが、2人の最大の違いは盾の大きさであった。

 セシリアが大型で頑強な盾を使っているのに対し、パトリシアは比較的小型だがその分取り回しの良い盾を使用していた。


「あのタイプの盾は防げる攻撃に限りがあるから、回避できる攻撃の場合はなるべく避けた方がいいのは知ってるか?」


 レクトが言っているのは、早い話が盾の防御力と耐久性の事だ。小さい盾は軽くて機動性に優れるが、その分防御力はやや低く大きな衝撃には耐えられないこともある。もっとも、パトリシア自身はきちんとその事を把握しているようであった。


「はい。以前、ギルバート先生に教わりました」

「ならいい。それに関しては俺からとやかく言う必要はなさそうだな」


 あまり言及する部分が無かったのであろう、パトリシアへの説明を簡単に終えたレクトは次の生徒の指導を行う。


「次はえーっと…杖持ってた…」

「…シャーリィ…」


 名前が思い出せない様子のレクトを見て、シャーリィがボソッと呟く。小さな声ではあったものの、どうやらレクトにはしっかり聞こえたようだ。


「そう、シャーリィ。悪い悪い」


 軽く謝罪しながら、レクトは話を続ける。


「シャーリィ、確認するがお前は魔法専門だよな?」

「そう…。剣とか肉弾戦、苦手…」


 レクトの質問に、シャーリィは頷きながら答えた。しかしレクトはうーん、と唸ると、とんでもない事を言い出す。


「はっきり言っちまうと今回の対抗戦は魔法が制限されてたから、お前の実力はよくわかんねえんだよ。ただ見たところとりあえず魔法の才能はあるっぽいから、しっかり練習しとけ」


(((雑すぎる!!!)))


 いい加減にも程があるレクトの発言にD組メンバーは驚きを隠せなかったが、当のシャーリィ本人はむしろ才能があるというレクトの言葉が嬉しかったのか、目を輝かせている。


「わかった…。練習、する…!」

「いい子だ」


 素直に頷くシャーリィを見てレクトはニッと笑うと、次の生徒へと視線を移す。

 ここから、外道なレクトの本領が発揮されることとなった。


「次、アイリスをザコ扱いしてた鎌使いの小娘」


 こちらも名前が思い出せないようだが、その一方でアイリスの事をザコ扱いしていたことは記憶に残っていたらしい。

 それが間違いなく自分の事だとわかったカミューラは、やや不機嫌そうな顔をしながら答えた。


「あたしはカミューラだ」

「はいはい、カミューラね」


 名前などどうでもいいといった様子で、レクトは適当に相槌を打つ。だがレクトは彼女に対して言いたい事があったのか、急にゲスな笑みを浮かべながらとんでもないことを言い放った。


「ザコ扱いしてたアイリスに負けるとか、それ以下のクソザコってことだなお前は」

「何だとテメェ!?」


 レクトの言葉にカッとなったカミューラは背中の大鎌を手にすると、相手が教師どころか四英雄レクトであることすら忘れて振りかざした。


「やめなさい!カミューラ!!」


 咄嗟にセシリアが制止するが、そんな言葉になど耳を貸すこともなくカミューラは大鎌をレクトに向かって振り下ろす。だが当然と言うべきか10代の小娘の一撃など四英雄レクトに届くことはなく、彼が突き出した左手の人差し指、中指に挟まれるような形でピタッと止まった。


「なにっ!?」

「「「えぇっ!?」」」


 いくら練習用の木製武器であるとはいえ、思い切り振ったはずの大鎌がたった2本の指で止められてしまったことにカミューラだけでなく、周りの生徒たちも驚愕している。

 ところが当のレクト本人は至って落ち着き払った様子で、カミューラへの話を続けた。


「ほら、相手の力量もわからずに挑むからこうなるんだ。そういうところがクソザコだって言ってんだよ」


 そう言ってレクトは2本の指に力を込める。すると瞬く間に木製の刃にヒビが入り、バキッ!という音と共に先端部分が折れてしまった。


「う、嘘だろ…!?」


 カランと音を立てて地面に落ちた鎌の先端を見下ろしながら、カミューラは驚きと恐怖の入り混じったような声を出す。

 ただレクトの方も無闇に鎌を壊したわけではなく、きちんとした理由があっての行動であった。


「この大鎌を使うのはやめて、もう少し小ぶりの鎌か、いっそ刀にでも変えろ。お前はいちいち振りがデカ過ぎる。だからアイリスの動きに翻弄された挙句、余計な隙なんて晒したんだ」


 素手どころか指だけで武器を壊されて絶句するカミューラをよそに、彼女への説明を終えたレクトは次の生徒に視線を移す。


「次。えーっと、モニカ」

「はい。何でしょう、先生」


 良家のお嬢様らしく、モニカは礼儀正しく笑顔で応対する。だが、レクトからは信じられない言葉が飛び出した。


「同じ系統の武器使ってる立場の人間としてはっきり言わせてもらうわ。お前、大剣向いてねえ」


 その言葉に、それまで笑顔だったモニカの顔が一気に引きつった。当然、周りの生徒たちもアタフタしながら見守っている。

 モニカはワナワナと拳を震わせ、レクトに対する態度を急変させた。


「な、なんですのいきなり!?わたくしはこれでも大剣を5年も使い続けているのですよ!それを今さら変えろと言うのですか!?」

「5年も使ってあのザマじゃ、尚更だ」


 モニカは反論したが、尚もレクトの反応は冷たい。しかしながら彼女の大剣の扱い方の悪い所は、大剣使いであるレクトが一番よくわかっていた。


「お前の動きはな、全体的に剣の方に重心が持っていかれてるんだよ。言い換えれば、お前は“大剣に振り回されてる”状態だ」

「で、でも大剣は重い武器なのですから、大剣の方に重心が持っていかれるのは当たり前なのではありませんこと!?」


 どうにも認めたくないのか、レクトの話に対してもモニカは反論を続けている。そんな彼女を見てラチがあかないと思ったのか、突然レクトは背中に手を回した。


「持ってみろ」


 レクトは背中の大剣を手にすると、それをモニカの目の前に突き出した。余りに唐突な出来事に、モニカは少し動揺している。


「な、なんですのいきなり?」

「いいから持ってみろ」


 そんなレクトの態度に折れたのか、渋々ながらもモニカはレクトの大剣の柄に手を添える。だがレクトが手を離した瞬間、それまで感じなかったとてつもない重さが急激にモニカの手にのしかかった。


「お、重い…!!」

「だ、大丈夫モニカ!?」


 必死になって剣を支えようとするモニカを見て、慌てた様子のセシリアが助けようと手を貸す。だが剣に触れた瞬間、セシリア自身もその剣の凄まじい重量を体感することになった。


「な、何この剣!?とんでもない重さよ!」


 思わずセシリアが大声を上げる。だがそれもそのはず、レクトの大剣はモニカとセシリアが2人がかりでようやく支えられる程の重量であったからだ。見かねたレクトが剣の柄を握ると、剣はひょいとレクトの背中へ戻された。


「わかったか?大剣は基本的に重ければ重いほど威力が大きくなるが、その分扱いも難しくなる。軽い大剣で精一杯だっていうんなら、そもそも最初っから大剣なんて使わない方がいい」

「わ、わかりましたわ…」


 大剣使いの現実を知らされ、モニカは少し泣きそうな顔になりながら肩を落とし、うなだれている。

 流石にレクトも言い過ぎたと思ったのか、これから彼女がどうすべきかも含めてアドバイスをする。


「どうしても刃渡りの広い武器にこだわるなら、クレイモアみたいなもう少し細身の長剣に変えることだな。あれなら比較的軽いし、大剣と比べてもそこまで違和感なく使える筈だ」

「は、はい…」


 まだ完全には納得していないものの、モニカは小さく返事をする。それを確認したレクトは最後の生徒へと視線を移した。


「最後。銃使いの…えーと、エリザベス」

「はい」


 エリザベスは素直に返事をするが、レクトは黙って彼女のことをジッと見ている。しかし言うべき事が決まったのか、目を閉じながら静かに口を開いた。


「まず最初に言っておく」


 レクトは一呼吸おくと、急に威圧的な目つきになった。


「戦闘中の再装填リロードぐらいしろ!」


 いきなりレクトが大声で怒鳴ったので、怒られたエリザベスはおろか周りの生徒たちまでもがビクッと反応してしまった。


「何なんだあの戦い方!?弾切れしたらすぐ銃を捨てるってよ!?あんな戦い方すんのは海賊ぐらいのもんだ!」

「で、でもそれは…海賊はやってるってことですよね…?」


 一応の戦術として存在するのならばと、エリザベスは声を震わせながら答える。しかし言い訳ともとれるその一言が、逆に火に油を注ぐ結果になってしまった。


「テメーは!海賊に!!なんのか!?」

「な、なりませんっ!!」


 レクトの怒号に、エリザベスは涙目になりながら答える。周りの生徒たちは同情的な目で見ているものの、こればかりはエリザベスの自業自得であると言う他ない。


「それと、さっきみたいに無闇な乱射はするな。敵陣のど真ん中ならともかく、味方が大勢いる拠点防衛で乱射なんてしようもんならあっという間に同士討ちだ」


 それに関してはD組メンバー全員に心当たりがあるのか、レクトの話を聞きながら皆うんうんと頷いている。


「試しに銃一丁だけで戦ってみろ。そうすれば見える世界が違ってくる筈だ」


 レクトのアドバイスに、エリザベスは涙目のまま黙って頷いた。心なしか周りの生徒たちもホッとしたような表情を浮かべている。

 兎にも角にも、これでD組全員への指導は完了だ。レクトはD組の生徒たちの顔を見渡しながら、最後に締めの言葉を送る。


「俺からお前らに言う事は以上だ。あとは担任から戦術について色々話があるだろうから、しっかり聞いておけよ」

「「「ありがとうございました!」」」


 D組の生徒たちから一礼され、レクトはS組メンバーの元へと戻っていった。

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