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先生は世界を救った英雄ですが、外道です。  作者: 火澄 鷹志
新任教師レクト編
2/152

その名はレクト

-1ヶ月後 夕暮れ時-


 フォルティス王国の中心から少し離れた位置にあるカルートという町は、農業と交易で成り立っている田舎町である。小さいながらも近年では王都へ向かう、または王都から出てきた旅人たちの宿場町としてそれなりに栄えていた。

 そんなカルートの大通りにある1軒の大衆酒場の扉を、1人の旅人が開く。


「いらっしゃい」


 決まり文句のように言いながら、酒場のマスターは入ってきた客を見た。客は茶色いロングコートをまとった銀髪の男であり、背中にはとてつもなく重そうな大剣を背負っている。年齢は20代半ばといったところだろうか。


「席、どっか空いてる?」


 銀髪の男は、店内を見回しながら言った。この町には元々酒場が少ないので、必然的に客も1つの店に集中する。そんな背景もありあいにくテーブル席は満員御礼であったが、幸いなことにカウンター席の方は少しだけ空席があった。


「カウンターでよければ」

「おう、わかった」


 店主に軽く返事をすると、男は空いていた席へと向かう。剣を背負ったまま席に座るや否や、壁に掛けられているメニュー表を一瞥いちべつした。


「すぐに食えるもんって、なんかあるか?」


 すぐに食えるもん。つまりこの男はさっさと食事にありつきたい、そういうことなのだろう。だが実際のところ、こういうせっかちな客はそれほど珍しくはないのも事実だった。


紅蓮ぐれんぶたのスペアリブなら、すぐに出せるよ」


 マスターは即答した。紅蓮豚のスペアリブは店の名物メニューでもあり、注文する常連客も多い。そういう理由で毎日のように大鍋一杯に煮込んで用意してあるので、注文が来ても待たせることなくすぐに出せるというわけだ。


「じゃあ、とりあえずそれをくれ。あとビール」

「あいよ」


 男の注文を受け、マスターは取り皿を手にする。空いているもう片方の手でトングをつかむと、手慣れた様子で鍋の中の骨付き肉を皿に移し始めた。最後に鍋の中の汁をすくって皿の上の肉にかけると、途端にスパイスの香ばしい匂いが立ち昇る。


「へい、お待ち」

「ん」


 男の前に、骨付き肉の載せられた皿とビールの入ったジョッキがドンと置かれた。早速と言わんばかりに男は骨付き肉を手に取ると、豪快にかぶりつく。


「うん、美味い」

「そりゃどうも」


 素直な感想を漏らす男に、マスターは軽く礼を言った。似たような感想はこれまでにも何度も聞いてきたが、やはり自分の作った料理がめられるのは悪い気がしない。

 だがそんなマスターの小さな喜びをかき消すかの如く、店の奥の席が騒がしくなった。


「おい、なんだよ?文句あんのかステイシー?」

「あっ、ありません…!」


 奥で飲んでいた大男が、機嫌が悪くなったようで隣に座らせているウェイトレスらしき女性に詰め寄っている。どうやらウェイトレスにしゃくを強要しているようだ。

 しかし周りの人間は見ているだけで、誰も注意しようとはしていない。それを見た銀髪の男は口をもぐもぐと動かしながら、空いている左手で店の奥にいる大男を指差した。


「マスター、あのオヤジ誰?」


 男としては普通に尋ねたつもりであったのだが、それを聞いたマスターは少し呆れたような顔になる。


「ボビー・ガーロット。ここらじゃ有名な腕利きの傭兵だよ。酒癖と女癖が悪いのが玉にきずだがな…。知らねえか?」


 本人に聞こえないよう、マスターは小声で答えた。マスターの言うようにこのガーロットという男は腕はいいものの酒癖が悪く我儘わがままな男で、常連客からは居合わせたくない人物ナンバーワンである等とにかく評判が悪い。マスターとしても、できれば来てほしくない客だというのが本音であった。

 しかし目の前の男はあまり興味のなさそうな様子で、ビールをぐいと一口やる。


「知らねえ。フォルティスからはかれこれ2年以上離れてたからな。そもそも俺、この辺じゃなくて王都の出身だし」

「あぁ、そうなのかい」


 マスターはグラスを布巾で拭きながら答えた。王都の人間がこの町へ来るのは決して珍しくはないが、大抵は他所の国へ行くか、反対に他国から王都へ戻る途中のどちらかである。

 綺麗に拭いたグラスを棚にしまうと、マスターは冷めた顔をしながら男の方を見る。


「悪いことは言わねえ、あいつとは関わり合いにならない方がいい。ただ強いだけじゃなく短気で喧嘩けんかっ早いからな。巻き込まれてケガした客は何人もいるよ」


 マスターの言うように、ガーロットに絡まれてケガをした客も少なくない。だが相手がこの町で一番強い人間である以上、誰も口出しすることができないというのが現状であった。


「それで?ウェイトレスの女の子がセクハラされても泣き寝入りってわけか」

「…」


 男に的確なところを突かれ、マスターは黙ってしまう。男の言ったことが全て事実だったからだ。

 ただ、マスターにも立場というものがある。ここでガーロットを注意して奴を怒らせてしまえば、それこそ他の客にまで迷惑をかけてしまうかもしれない。最悪、店を壊されてしまう可能性だってある。そうなるとマスターがとれる手段は1つ、ウェイトレスに我慢してもらう。それしかなかったのだ。


「ま、よくある話だよな」


 マスターの考えを見透かしたかのように男はつぶやくと、まだ食べかけの骨付き肉を皿の上に置いて席から立ち上がった。


「おい、お客さん?」


 嫌な予感がしたマスターは、銀髪の男を呼び止める。しかし男はその声を無視して、店の奥にいるガーロットの方へと向かっていった。

 男はガーロットのテーブルの横に立つと、ポケットに手を突っ込みながら真顔のまま口を開く。


「離してやれよ。その、嫌がってんだろ」


 男のその言葉に、ガーロットがピクッと反応する。元々あまり機嫌が良くなかったのに加え、更に余計な水を差されたからであろうか、ガーロットはひどく不快そうな表情を浮かべながら銀髪の男の方を見た。


「何だぁお前?正義の味方気取りか?」


 ガーロットはドスをきかせた口調で、威圧するように言い放った。しかし銀髪の男は全くそれにひるむことなく、ガーロットの隣に座らされていたウェイトレスのステイシーの手を掴む。


「ほら、こっち来い」

「あっ、おい!」


 ガーロットの言葉を無視して、男はステイシーを自分の方へとたぐり寄せる。そこまでであればガーロットの言うように正に正義の味方であったのだが、助け出された筈のステイシーは顔を赤くしてもじもじするばかりであった。


「あ、あの…」

「ん?何?」


 隣に立っているステイシーの顔を見ながら、男は何の気なしに尋ねる。だが、依然として恥ずかしそうにしているステイシーの口から飛び出したのは驚愕の一言であった。


「助けてもらえるのはありがたいのですが、その…できれば私のお尻から手を離してもらえると…」


 ステイシーの一言に、ガーロットをはじめとした周りの人間が彼女の下半身を見る。そんなステイシーの臀部には、彼女を手繰り寄せたはずの男の左手がいつの間にか添えられていた。

 男は相変わらずあっけらかんとした様子のまま、ステイシーの尻を撫で回す。というか、この場合は揉んでいるといった表現の方が正しい。


「てっ、てめえ!どさくさに紛れて何してやがる!?」


 予想だにしない展開に、ガーロットは思わず怒号を飛ばす。こんな状況であれば、そう言いたくなるのも無理はないが。

 だが、男の方は全く反省の色を見せない。


「いやぁ、いいケツしてたからついな。ほどよく弾力もあって俺好みだな」


 そう言いつつ、男は尚もステイシーの尻肉を揉んでいる。周囲の客が呆気にとられる中、ガーロットの怒りは一気に頂点へと上った。


「ふざけやがって…!」


 怒りをあらわにしながら、ガーロットは自身の席のすぐ横に立てかけてあった大斧を手にして立ち上がった。座っている時からでもわかったが、ガーロットはかなりガタイの良い男で身長も2m近くある。銀髪の男と比べると頭1つ分ほど違っていた。

 当然、それを見たステイシーや周りの客はギョッとする。唯一、ガーロットの目の前にいる男だけは全く動じていなかったが。


「この俺を怒らせたらどうなるか、思い知らせてやる!」


 非常にわかりやすい台詞を叫びながら、ガーロットは斧を振り下ろす。店中が騒然とする中、男は澄ました顔のまま背負った大剣の柄に手をかけた。


 ガランッ!


 ガーロットが斧を振り下ろした直後、大きな金属が床に落ちる音が響いた。いや、正確に言えば斧であったもの、と呼ぶべきか。

 ガーロットが手に持っていた筈の斧には、本来あるべき筈の刃が付いていなかったのだ。その刃は何処へ行ったのかというと、先程の音の主として地面に転がっている。そこから更に1秒ほど遅れて、ガーロットの前髪が数センチメートル、はらはらと舞って床に落ちた。


「え…?」


 あまりにも急な出来事だったので、ガーロットには何が起こったのかすぐには理解できなかった。勿論、驚いたのはガーロットだけではない。目に見えぬほどの速度で剣を振り抜き、斧の刃を斬り落としたなど最初は誰も信じられなかったからだ。

 しかも、ただ速いというだけではない。ほんの一瞬の出来事であったにもかかわらず、店の物には一切の傷を付けることなくガーロットの斧(と前髪)だけを正確に斬り落としている。これだけ巨大な剣を瞬時に振り抜いて、かつ寸分の狂いもなく対象だけを斬り裂くなど、とても素人にできるような芸当ではない。


「次は」


 銀髪の男が口を開く。そのまま、いつの間にか肩に乗せられていた大剣の切っ先と共に、鋭い眼光をゆっくりとガーロットの方へと向けた。


「首を狙うぞ」


 その一言に、店中が静まり返った。相対しているガーロットに至っては、わけがわからないといった様子である。だがただ1つだけ、ガーロットには本能的に理解できることがあった。


 “絶対に勝てない。”


 ガーロットの全身から、一気に血の気が引いた。


「う、うわあああぁぁぁ!!」


 情けない叫び声を上げながら、脇目も振らずにガーロットは店の出口へと走っていった。途中で少しつまずきながらも、構うことなく勢いよく店を飛び出していく。

 そんなガーロットを見送った後、男は少しバツの悪そうな顔をしながらマスターの方を向いた。


「あ、悪いなマスター。食い逃げされちまった」


 銀髪の男の言う通り、ガーロットは金を払っていないので立派な食い逃げだ。しかしマスターは怒るどころか、まるで毒気を抜かれたような顔つきになって肩をすくめた。


「いやいや。これで奴は金輪際こんりんざいこの店には来ないだろう。むしろ厄介払いができて助かったよ」


 マスターのその一言がきっかけで、店内にも落ち着きが戻ってきた。銀髪の男の圧倒的な剣技など多少なり驚くべき部分はあったが、何より厄介者扱いであったガーロットがいなくなったことは誰の目から見ても喜ばしいことであったのだ。

 客たちが再び料理と酒に向き直る中、騒動の中心にいた銀髪の男は未だに呆然としていたままであるウェイトレスのステイシーの手首を軽く掴む。


「ねーちゃん、酌する相手いなくなったんだろ?代わりに俺の相手してくれよ」


 男の急な要求に、ステイシーはビクッと反応する。一応、形式的には助けてくれた恩人ではあるものの、はっきり言ってしまえばやっていることはガーロットと大差ないからだ。


「あ、あの…」

「いいじゃねえか、酌ぐらい。減るもんじゃねえだろ?」


 困惑するステイシーを、男はやや強引に自分の隣に座らせた。酌と言っておきながら、容赦なくセクハラをするのは目に見えているのだが。


(こいつもこいつでタチが悪いな…)


 2人のやり取りを見ながら、マスターは心の中で毒づいた。だが相手はこの町で一番強い傭兵をいとも容易く退けた男だ、邪険に扱うとかえって面倒事が増えるのも容易に想像がつく。

 それに見たところこの男は旅人のようなので、ガーロットとは違いおそらくこの町に居着いたりはしないだろう。そう考えたマスターは、今回ばかりは目をつぶってこの男を立てることにした。


「ホラよ」


 マスターの声と共に、男の前にボリュームたっぷりのチキンの香草焼きと果実酒の瓶が置かれる。それを見た男は、キョトンとしながらマスターの顔を見た。


「頼んでねえけど?」

「俺のおごりだ。厄介者を追い払ってくれた報酬だよ」


 大事なウェイトレスがセクハラをされるのは忍びないが、男に感謝しているのは本心だった。男の方もそれを理解したのか、早速と言わんばかりに酒瓶を手にする。


「そうか、じゃあ遠慮なく。ねーちゃん、いでくれ」

「あ、はい!」


 酌をせがまれ、ステイシーはやや緊張しながらグラスに酒を注ぐ。男はそれをグイッと半分ほど飲み干すと、大皿の上に置かれた鳥の脚をやや乱暴に引きちぎった。

 ただ、マスターの不安とは裏腹に銀髪の男は割と大人しかった。時折、酌をするステイシーや通りかかったウェイトレスの胸や尻を撫でることはあるものの(それはそれで問題だが)、ガーロットのように無茶な要求はせずにただ食事と酒とセクハラを堪能しているだけだ。

 そんな男のことが気になったのか、少し緊張しながら酌をするステイシーが口を開く。


「あの、その…お兄さん、お強いんですね」

「んー、まあな。剣だけじゃなくて、性欲とかも強いけど」


 鳥の脚を頬張りながら男は冗談交じりに答えるが、その下劣な答えに対しステイシーはただただ苦笑いを浮かべるしかなかった。とはいえ謙遜も否定もしないあたり、この男自身も自分の強さに関しては自覚があるのだろう。


「お兄さん、お名前は?」

「ん?名前?」


 唐突に名前を聞かれ、そういえば名乗っていなかったな、とでも言いたそうな顔つきになった。男は手に持っていた肉を一旦皿に置くと、まだ中身が少しだけ残っていたビールのジョッキを手に取りながら答える。


「レクト・マギステネル」


 名前を名乗ると、銀髪の男…レクトはジョッキの中に残っていたビールを一気に飲み干した。中身が完全に無くなったのを確認すると、空のジョッキをカウンターの向かいにいるマスターに向かって突き出す。


「ビール、もう一杯くれ」

「あいよ」


 マスターは差し出されたジョッキを受け取ると、その中に新しいビールを注ぎ始める。そうやってマスターがビールを注いでいる間、レクトの隣に座っているステイシーの頭を何かが行ったり来たりしていた。


「…レクト?」


 その名前に、聞き覚えがあったのだ。しかも大昔などではない。つい最近、何か大きな話題に関連して聞いたような気がする。そして、それはビールを注ぐマスターも同じであった。

 そうしてマスターがビールを注ぎ終わったと同時に、ステイシーが何かを思い出したように急に大声で叫んだ。


四英雄よんえいゆうレクト・マギステネル!?」


 驚愕の表情を浮かべながら、ステイシーは改めて男の顔を見る。ビールを置こうとしたマスターも同じか、それ以上に驚いた様子だ。


「あー、まあ、世間的にはそう呼ばれてるな」


 驚く2人とは正反対に、レクトは露骨ろこつに嫌そうな表情を浮かべている。英雄と呼ばれるのはあまり好きではないのだろうか。

 レクトは固まったままのマスターの手からビールのジョッキを半ば奪い取るように受け取ると、それを一口ぐいっと飲んだ。


「え、えっと…、魔王メトゥスを倒したレクト・マギステネル様…でいいんです…よね?」


 ステイシーの声が震えている。恐怖というよりも、驚きと緊張でどう接していいのかがわからないのだろう。

 何しろ魔王メトゥスが倒されて世界に平和が戻ったという話は、ほんの数週間前に国王から大々的に発表されたばかりだ。連日のように新聞でも大きく取り上げられ、魔王を倒した4人は今や『四英雄』として語り草になっているほどである。

 しかも、そんな男が目の前でチキンを頬張っているのだからにわかには信じられないというのも無理はないだろう。


「正確に言えば倒したのはルークスの野郎で、俺はそれを手伝っただけかな。ま、どっちでもいいことだが」


 レクトは真顔のまま答える。謙遜けんそんのようにも聞こえるが、本人がそう言うようにレクトにとっては本当にどうでもいいことなのだろう。

 どうやらこのレクトという男、つかみどころがなく飄々(ひょうひょう)としてはいるものの、決して大悪人というわけではないらしい。魔王に挑むような男なので悪人でないのは当然と言えば当然なのかもしれないが、意外に親しみやすそうでステイシーとマスターは少し安心した。


「それで?そのレクト殿がこんな田舎町に何のようだい?」


 唐突にマスターの方から質問が飛んできた。まあ世界を救った英雄が田舎町で何をしているかなど、気になる人間は多いだろう。


「何って、要するに帰郷だよ。この後どっかで一泊して、明日には王都に帰る予定だ」

「なるほどね。確かにここから王都までは、半日ぐらいかかるからな」


 レクトの回答に納得した様子で、マスターは再びグラスを拭き始めた。ところがレクトは更に何かを思い出したようで、食べ終わったチキンの骨をくわえながら急に嫌そうな顔になる。


「あと、そういや国王に呼び出し食らってたな。面倒くさいけどそれも行かねえと」


(呼び出しって…)


 とても口には出せないが、ステイシーは心の中で呆れかえった。世界を救った英雄を国王が呼びつけるなど、祝勝以外に何があるというのだろうか。それとも、この男はわかった上でそれすらも面倒くさいと言っているのか。

 レクトは咥えていた骨を皿の上に置くと、グラスに残っていた果実酒を一気に飲み干した。


「ごちそうさん、いくらだ?」

「きゃっ!」


 立ち上がりながら、レクトはステイシーの尻を撫でる。先程の剣捌きからしてこの男が四英雄レクトであるのは間違いないのだろうが、セクハラ三昧の英雄というのもいかがなものだろうか。

 マスターに代金を支払うと、レクトは店の出入り口へと向かう。だがふと何かを思い出したのか、一旦振り返ってマスターの方を見た。


「ところでマスター、1つ聞きたいんだけど」

「おう、なんだい?」


 マスターは腕組みをしながら聞き返す。それを聞いたレクトは、人差し指を立てながらある事を質問した。


「この町にある娼館しょうかんの場所教えて」

「…」


 レクトのその質問を聞いて、英雄と出会えて少しばかり上機嫌であったマスターの顔がなんともやるせないものに変わる。

 この日マスターが学んだ中で最も大きなことは、《英雄=人格者》という式は必ずしも成り立つものではない、ということであった。

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