魔王との最終決戦
平和であった筈の世界は、突如として現れた魔王メトゥス率いる魔族の軍勢により滅亡の危機にあった。迫りくる魔物との戦いに多くの戦士達が命を落とし、残された人々は魔物の襲撃に怯える日々を過ごしていた。
だが、そんな毎日もついに終わりを迎える時が来る。闇を打ち払うという聖剣グラムに選ばれた勇者ルークスが、人々を魔王の魔の手から救うために立ち上がったのだ。
彼は魔王を倒すための旅の途中で伝説の賢者の血を引く魔術師カリダ、百戦錬磨の武闘家テラ、そして凄腕の傭兵レクトの3人と出会い、彼らとともに幾多の苦難を乗り越えていく。そして長く果てしない旅路の末、ついに魔王メトゥスとの決戦の時を迎えていた。
「思いあがるなよ、人間ども!我と貴様らでは天と地ほどの差があるということを思い知らせてやるわ!」
追い詰められた魔王メトゥスは、怒りに声を震わせながら勇者たちを睨みつける。だが、今更そんなことで臆するルークスたちではない。
「決着をつけるぞ!メトゥス!」
力強い声と共に、勇者ルークスは聖剣グラムを構えた。その意思に呼応するかのように、聖剣グラムも光り輝く。
「あんたの野望もここで終わりよ!おとなしく降参しなさい!」
手にした杖を魔王に向けながら、魔術師カリダは啖呵を切った。パーティ内では紅一点かつ最年少でありながらも、その勇気は人一倍だ。
「罪もない人々に仇なす邪悪な魔王め!この天下無双の武闘家テラが成敗してくれる!」
威勢のいい声を発しながら、武闘家テラは右の拳を前に突き出す。武器など一切使用せず、鍛え上げた己の肉体のみを信じて戦う豪傑だ。
「いい加減、くたばってくれ。そのブサイクなツラはもう見飽きた」
身の丈程もある大剣を肩に乗せながら、傭兵レクトは軽口を叩く。しかしこれは決して驕りなどではなく、絶対的な自信からくるもののようだ。
「貴様らぁ!人間風情が調子に乗るなよ!」
怒りに燃える魔王メトゥスは、両手に力を込める。何をする気かはわからないが、ルークスたちとて黙って見ているわけにもいかない。
「テラ!頼む!」
「任せとけ!」
ルークスの掛け声に応えながら、テラは数メートルはあろうかという体躯を誇る魔王メトゥスの懐に潜りこみ、剛拳を炸裂させる。激しい轟音と共にその拳によって魔王の鎧には大きなヒビが入り、魔王は苦しそうに唸った。
「ぬう、小癪な!」
テラの攻撃によって大きなダメージを負いつつも、魔王は反撃に出るべく右の手のひらに魔力を溜め始めた。巨大なビーム攻撃を放つ気のようだ。
「レクト!上だ!」
「はいよ!」
そうはさせまいとレクトは魔王の右手まで一気に跳躍し、目にも留まらぬスピードで手にした大剣を振り下ろす。激しい血飛沫が起きたと同時に、切り落とされた魔王の巨大な右手が大きな音を立てて地面に落ちた。
「ぐおおぉぉ!!貴様らあぁぁ!!!」
怒り狂った魔王は、残った左手でルークスを叩き潰そうとする。しかしそこにカリダが立ちはだかった。
「させないわ!」
「ぬぉっ!?」
カリダが魔法を唱えると、魔王の全身は瞬く間に青白い鎖に縛られた。絶好のチャンスにテラ、カリダ、レクトの3人が叫ぶ。
「今じゃい、ルークス!!」
「魔王にトドメを!」
「さっさと決めちまえ!」
仲間たちの言葉を受け、ルークスは光り輝く聖剣グラムを振り下ろす。
「終わりだ、魔王メトゥス!!」
ルークスの全身全霊を持って放たれた一撃は魔王メトゥスを一刀両断の下に切り伏せ、魔王の身体は力なく地面に崩れ落ちた。
「馬鹿な…この私が…負ける…筈など…!」
最期まで己の敗北を認めぬまま、魔王の身体は眩しい光に包まれながら消えていった。その途端、それまで闇に覆われていた空が徐々に晴れ、誰もが待ち望んでいた太陽の光が再び地上に降り注いだ。
「終わったん…じゃのう」
「勝ったのね、私達!!」
「やれやれ、長かった旅もこれで終わりか」
戦いが終わった事に、テラ、カリダ、レクトの3人は達成感に満ちた顔をしている。そんな勝利に喜ぶ3人に向かって、勇者ルークスは高らかに宣言した。
「魔王メトゥスは消えた!さあみんな、帰ろう!!」
こうして魔王は打ち倒され、世界に再び平和が訪れたのであった。