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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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コミカライズ公開記念エピソード その4

 

「それでね――ジュン、聞いているの?」


「聞いてるわよ、ミカエル。つまり、子犬たちの食べ物とか遊び道具があったら持って来て、と?」


「話が早くて助かるわ」


「私の考えが間違っていて欲しかったのだけど。一応探すけど、あまり期待しないでよ」


 そう言ったのにミカエルは「期待してる」と言って電話を切った。しばらくの間、スマホを見つめていたけど、やっぱりやめるというような電話はかかってこない。久々に大きなため息をついた。


 変われば変わるものというか変わり過ぎ。ミカエルが妹たち以外にも興味を持ったのか、それとも妹たちが子犬に興味を持ったのか微妙なところだけど、たぶん後者ね。


 こっちの復興支援だって楽な作業ではないのに、その上でペットショップを探す必要があるなんて。それとも動物園とかに行った方がいいのかしら。


 どこにせよ、パンデミックでドッグフードが残っているとは思えない。食料がなくなればそんなものでも食べてしまうだろうし、野良の犬や猫が増えたって話も聞くから食べつくされている可能性の方が高い。だからこそ、ミカエルたちも見つけられなかったわけだけど。


 ここでの支援が終わったらすぐにでも戻ろうと思っていたけど、どうするべきかしら。見つからなかったって報告しても問題なさそうだけど、あとが怖いかもしれないわね。でも、ゾンビや生存者がうろついているエリアに皆を連れて行くのは避けたいわ。


「ジュンさん、どうされました? 支援活動は終わりましたけど」


 移動用のバスにアマノガワ君が入ってきた。その後ろにはアイドルグループ「アマゾネス」のメンバーもいる。どうやら炊き出しが終わったみたいね。


 アマノガワ君は女性よりも女性っぽいけど、男性。そして毒を使う殺し屋。そんな子がアイドルグループのリーダーなんだから世の中は面白いわね。私がそうしたんだけど。


 綺麗な衣装を着て食料や物資の支援を行っているけど結構受けがいい。前のように戻れるって希望がみいだせると聞いたとか。こんな状況だもの、少しでも明るい未来を期待できなきゃ生きていけないものね。


 ……そうね、昔のように戻したいなら犬だって見捨てるわけにはいかないわ。


「ミカエルから連絡でね、子犬を数匹拾ったからドッグフードと遊び道具を探して来てって」


 そう言うと、アマゾネスの子達が黄色い歓声を上げた。


 若いっていいわね。というよりも癒しに飢えているのかしら。今はアマゾネスの皆がパンデミックで疲弊した人たちに癒しを与えているけど、ここいらで息抜きでもしないと逆にこっちが潰れる可能性はある、か。ここは少し時間を取ってでもドッグフードを探してあげるべきね。でも、安全第一で行かないと。


「この辺りにペットショップとか動物園はあるかしら?」


「近くのペットショップはどこも荒らされてますね。それとブレーメンという組織が動物園を占領していていましたけど今は動物一匹いない廃墟です。動物を守る組織ではあったのですが、人間よりも優先するほどの過激な組織だったみたいで他の組織に潰されてしまったとか」


「それは困ったわね」


 打つ手なし。犬を飼っていそうな家を一軒一軒探すのも時間がかかり過ぎるというか。しばらくは人と同じものを食べてもらうしかないわね。塩分に気を付ければ大丈夫な気はする。飼ったことが無いから知らないけど。


「オゥ! それでしたら犬カフェとかはどうでしょう!?」


「ナタリー?」


 アマゾネスが組合だったころに食料調達などをやっていたナタリーがそんなことを言い出した。


 犬カフェというと猫カフェとかと同じ物かしら。犬を愛でながら紅茶やコーヒーを飲むってイメージしかないけど、猫と違って犬の場合は遊んで遊んでと暴れまわる気がする。行ったことが無いから気にも留めていなかったけど、そんなカフェが近くにある?


「何度か近くの犬カフェに彼氏のマイケルと行ったことがあります。とてもキュートでワンダフルでした!」


 ハッピートリガーのマイケル君ね。というか、彼氏のくだりは要らないような気はするけど、これも生活に余裕が出てきた証拠かしら。でも、犬カフェねぇ、そこも略奪の対象になった思うけど。


 いえ、行くだけ行ってみましょう。食料はなくとも遊び道具があるかもしれないし。結果はともかく、頑張ったという成果をミカエルに診せる必要があるし。


「ならそこに寄ってみましょう」


 アマノガワ君以外の皆が楽しそうに声を上げた。動物を可愛いと思えることに可愛いと思えるわね。私もあんな時代があったと思いたいわ。浮気調査の探偵なんてやっていると心が荒んでしまうから。


 大体の場所を聞いて、マコトが作ってくれたナビに場所を設定する。そう遠くはないが遠回りになるから帰りは結構遅くなりそう。


 バスの運転中、アマノガワ君が隣に来た。


「大丈夫ですかね?」


「何か心配事?」


 アマノガワ君の意見は無視できない。華奢な女性に見えるけど、実際には手を握っただけで相手を殺せるほどの殺し屋。センジュ君と同じで見境なくやってしまうような異常者じゃないけど、多くの殺し屋が所属してランキング争いをしているような状況でも生き残ってきた強者だ。


「ナビを見たんですけど、犬カフェがある場所はあまりにもゾンビが少ないです。近くに組織化している組合があるかも」


 マコトが取り付けてくれたナビは色々と高性能で人やゾンビの分布がある程度分かる。アマノガワ君が言った通り、犬カフェの周辺はゾンビが少ない。


 この辺りにハッピートリガーは派遣されていないはずだし、ゾンビが狩られている可能性がある。それが組織の存在を示しているわけね。


 困ったものね。外部との連絡手段が全くない状況ならともかく、この辺りならそんなことはない。それでも助けを求めてこないというのは、こちらを警戒しているか、そもそも前の世界に戻したくないのどちらかだ。前者はともかく後者は面倒くさい。個人的な思想なのか、それとも組織的な思想なのか微妙なところね。


 こういう所にはセンジュ君を送り込む方が早いんだけど、今は別のところに行っているし、呼び戻すわけにもいかないか。


「アマノガワ君、お願いしていいかしら?」


「そういう時のために俺がいるんで」


「ナタリー達も強いけど、もう二度とああいうことをさせたくないから」


「同じ気持ちですよ。彼女たちは楽しそうに歌ったり踊ったりしている方が似合ってます」


 殺し屋ってのも色々な人がいるのね。私達からすればセンジュ君やアマノガワ君は大当たり。金のために誰でも殺すような殺し屋もいるのに、二人はそんなことはない。その上で最高に近い殺し屋なんだから驚きだわ。


「着きましたね……バリケードがありますけど」


「よりにもよって犬カフェが入っているビルを拠点にしているわけ?」


「そうみたいですね。俺は正面から行きますけど、ジュンさんは屋上から?」


「そうね。できるだけ話し合いで解決したいけど、それが駄目そうな時のために屋上から入っておくわ」


「分かりました。それじゃ中で」


「ええ、中で。それじゃ、ナタリー、バスは任せるから、いざとなったら逃げてね」


「いざとなったらバスでビルに突っ込みます!」


 だからそれをするなと言いたいんだけど、他の子も武器を構えてやる気になってる。本当に困った子達ね。


 でもね、貴方達はもうそんな危険なことをしなくていいの。そんなことをさせたら、レンカに殺された他の子達に申し訳が立たない。あの子たちはゾンビになったけど源次郎さんと同じように筆談ができる。ゾンビになったのにナタリー達を守ってとお願いされている。それは私が死んだとしても守らなくていけない約束。


 アマノガワ君とバスを降りてビルを見上げた。


「アマノガワ君、私には優先順位があるの」


「俺にもありますけど、一応聞いていいですか?」


「このビルの中の人達よりもアマゾネスの子達が優先。一瞬でも危険だと思ったら迷わず排除するわ」


「ああ、よかった。俺と同じ優先度です」


「同じ価値観を持っているっていいわねぇ。それじゃ行きましょうか」


「はい。では、中で会いましょう」


 アマノガワ君はそう言って微笑むとバリケードを特に苦もなく飛び越えていく。


 それじゃ私はビルを登れそうな場所を探しましょう。どんな思想の組織なのか、ちゃんと調べないとね。


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