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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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コミカライズ公開記念エピソード その2

 

「マコトちゃーん、あのコミュニティは助けたんだけどさー」


「なんか問題でもあった?」


「イケメンがいなかったよ?」


「いるなんて一言も言ってないよ。いるかもって言っただけ」


「騙された!」


「むしろなんでいつも同じ手に騙されるのか分かんないんだけど。まあ、気を付けて帰ってきなよ。ああ、そうそう、今日の夕飯はカレーだってさ」


「すぐ帰るから!」


 日が暮れる頃、拠点となっているセンジュのマンションで仕事をしていたら、生存者を助けに行ったサクラたちから通信があった。カレーと聞いて周囲からも喜ぶ声が聞こえてくる。私からするとそこまで喜ぶと思うけど、まあいいか。


 通信によればゾンビたちの鎮圧と生存者の救出は上手くいったみたいだ。それにしてもサクラは相変わらずだね。鎮圧の早いからヤバそうなところへ送ってるけど、嘘みたいに救出率が高い。というか今のところパーフェクト? まあ、サクラだけじゃなくて、モミジや他のメンバー、それにおやっさんの運転技術もあるんだろうけど。


 毎回イケメンがいるからと言って急がせるんだけど、サクラはいつも引っかかる。普段の言動からして素なのか分かっててやっているのか微妙なところなんだよね。ハッキングよりも難しい問題だよ。


 そんなことよりも生存者やゾンビたちの情報を集めるか――と思ったらいきなり入り口のドアが開いた。


「マコトー! ゲームしよー!」


「リベンジだー!」


「吠え面をかかせる……!」


「まだ仕事中だからちょっと待って」


 ラファエルたちの三人がやってきた。なにか戦隊もののポーズを取るのが最近の流行りのようで、今もドヤ顔でポーズをとっている。


 普段はワクチンや抗ウィルス薬を世界中に届ける仕事をしているけど、帰ってきたときはいつもこの部屋に来てゲームをしようと誘ってくる。三人には同じようにクローンで作られた多くの姉たちがいるけど、なぜかここへやってくるんだよね。ゲーム機があるからかもしれないけど、もしかして精神年齢が同じくらいだと思われてる? 遺憾すぎる。


 もう一年くらいの付き合いだけど、三人は変わらないな。最近はオシャレに目覚めたのか、前のように白いワンピースだけじゃなく、今風の服を着ている。私にはセンスがないから何とも言えないけど、ミカエルがものすごく悩んで決めた服みたいで結構お気に入りっぽい。服の系統なんてよく知らないけどガーリー系っていうのかな。そんな系統で、ラファエルは水兵っぽい恰好、ガブリエルは農場勤務者っぽい感じ……? ウリエルはなぜかゴスロリ服だ。まあ、似合っている……ような気がする。


 三人は最後に作られたクローンの適合者、まだ幼いけど、年齢を重ねれば姉妹の誰よりも強く、優秀になるとミカエルが言ってたっけ。ミカエルは普段冷たそうな印象なのに、妹たちのことを話すときだけは笑顔なんだよね。ただ、三人と遊んでいるときに私をすんごい悔しそうな目で見ているときがある。姉の座を奪われたとか思ってないといいんだけど。


 それにしても私が年下の子供と遊ぶなんてね、数年前はこんなことになるなんて夢にも思ってなかった。コミュ障とまではいかないと思っているけど、ぶっきらぼうに話すことが多いし、あんまり空気も読まないから友達なんかいなかったのに。今の状況がいいかどうかなんて分からないけど、悪くはないかな。でも、部屋に籠ってセキュリティを突破する「遊び」も楽しい。


 それに最近、すごいところを見つけた。


 どうやらセンジュが務めていた会社「ブラックホーネット」と同等の組織が複数あるっぽい。そもそも殺し屋のランキングなんてのがあるし、同業者との繋がりもあったんだろうね。今回のパンデミックはブラックホーネットが主導だったみたいだけど、他の組織も似たようなことを考えていたとか情報が出てきた。こんな状況を利用して勢力争いが展開されているみたいだし、今回の技術を奪おうとしている勢力もある。センジュに相談したら、まずは情報でかく乱してほしいと頼まれたから「遊び」を頑張らないとね。


「マコトー、まだー?」


「まだ。大人は忙しいの」


「マコトも子供でしょ?」


「私は働いているから大人」


「子供でいいと思う。一緒にニートを極めよう」


「そうしたいけど現実は厳しいの。まだかかるから先にやってて」


 そういうと、三人は「はーい」と言って、ゲーム機の準備を始めた。最近はすごろくっぽいゲームがお気に入りらしい。私としてはなんでもいいけど、早めに参加しないとうるさいからこっちもやれるとこまでやっておこう。


 ……よし、とりあえず、あの地域で生存者が孤立している場所の把握は完了、今度はアイアンボルトたちに情報を送って救出してもらおう。次は殺し屋の組織か。


 ええと、薬を作っているアスクレピオス記念病院を襲撃する予定がある、と。それと適合者であるセンジュの身柄確保、それに白い少女たちを捕まえろ、と。


 どっちも無理だと思うけど、これはミカエル案件だね。伝えただけでこの組織が壊滅しそう。まあ、私の知ったことじゃないけど……はい、内容と場所をメール送信。即座にミカエルから「潰してくる」って返信があった。これで仕事は終わりかな。


 ん? どこかの組織の監視カメラが切れた? あれ? その組織の監視カメラが一個ずつ消えていくんだけど、ハッキングがバレたわけじゃなくて、物理的に破壊されている? ミカエルに伝えた組織じゃない。全然関係ない場所なんだけど、何が起きてるんだろう?


 一瞬だけモニターに軍服を着た人が映った気がしたんだけど、直後に映像が切れた。たぶんカメラが破壊されたんだろうけど、あの人が組織に乗り込んでカメラを破壊している……いや、カメラを破壊っていうか、組織のあるビルに乗り込んだ?


 あの軍服はやばい。組織の方は応戦しているみたいだけど、モニターが消えていく速度が変わらない。応戦に手こずることなくどんどん奥へと進んでいるんだ。殺しの技術なんて知らないけど、強いのだけは分かる。もしかしてセンジュ以上……?


 最後のカメラが壊れた。その組織のビルにある監視カメラはもうない。いや、びっくり。これはセンジュに伝えておかないと――え?


 スマホからメールを受信した音が聞こえた。送り元も不明で件名もない。そもそも私が構築したメールサーバのチェックをすり抜けるってヤバすぎる。


 恐る恐るメールを開くと「お前は何も見ていない」とメッセージが来ていた。


 久々に冷や汗をかいた。監視カメラがハッキングされていたことを分かっていただけでなく、私がやっていたことも分かっている。私だってそれくらいできるけど、この短時間でそれができるかと言われれば難しいとしか言えない。もしかしたら何かのツールを使っているかもしれないけど、そんなツールがあるだけでも驚きだ。


 とりあえず「くやしいけど何もみてない」とだけ返した。これで多分通じるでしょ。さて、軍服が映っている動画は全部消しておこう。残しておくだけで命が危なそう。


 動画を消して、その組織の情報も全部消した。スマホに来ていたメッセージも削除。復旧できないような完全削除だからこれで大丈夫。それにしても世界は広い……いや、世界は面白い。


「マコトー、早くー……なんでそんなに悪い顔で笑ってるの?」


「悪い顔で笑ってる?」


「うん」


「いたずらを思いついたときのウリエルっぽい。あれは悪魔」


「異議あり。私ならいたずらを実行した後でもあんな顔をする……!」


 つまり悪い笑みってことかな。これは気を付けないと。でも、笑った理由は分かる。今は私が世界一のハッカーと思ってたんだけど全然そんなことなかった。私よりもすごいハッカーはいる。それにあの軍服ってセンジュの上司……? いやいや、私は何も見ていない。どこかに私よりも優秀なハッカーとかクラッカーがいるってことだけが分かっただけで十分。


「それじゃ夕飯までゲームしようか。チートツール使っていい?」


「ダメに決まってるよ!」


「マコトは片手でやって!」


「イカサマはバレなければイカサマじゃない……!」


 そんな発言をしたウリエルがラファエルとガブリエルに詰め寄られている。どちらかといえばわちゃわちゃしている感じだけど。なんかじゃれている子犬たちの動画を思い出す。


 昔は子供や同年代のはしゃぎ声なんてうるさいとしか思わなかったけど、今はこんなにぎやかな状況を心待ちにしている自分がいる。いつもの「遊び」も楽しいけど、今はこっちの「遊び」の方が楽しいかもしれない。


 でも、こんなことできるのもあと数年か。そのうち、この三人もサクラみたいにイケメンがどうとか言い出すのかな……なんかすごいやだな。ミカエルがそんな風にはさせないとは思うけど。


 まあいいや、まずは遊ぼう。未来のことは未来になったら考えればいいさ。今はどうやってゲームで勝利するかを考えないとね。


TOブックス様の公式漫画サイトでスローライフ・オブ・ザ・デッドの第四話が公開されました。良かったら見てくださいね。

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