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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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最後のお仕事

2019.09.22 3話投稿(2/3)

 

 さて作戦通りにやりますか。


 俺がシェルターの中で暴れている間に皆が外で色々やる。そんな作戦と言えないレベルのものだけど問題はないだろう。


 それに皆のことは信頼できる。


 知り合ってほんの数日だし、お互いの事なんてほとんど知らない。でも、なぜか信頼できるんだよな。以前はエルちゃん以外どうなっても構わないとか思っていたけど、俺もずいぶんと変わったもんだ。


 そんなことを考えてから、地下の駐車場への入口を見据えた。


 これからあそこへ突入する。そして黒幕の指紋認証でシェルターへ入ろう。


 黒幕の指紋認証で開かなかったときはラファエルちゃん達で試すというプランもあるけどそれは避けたい。ミカエルが戻って来れなかったところを見るとラファエルちゃん達も近くに行くのは危険だ。それにミカエルと同じクローンだとしても、手の大きさの違いでちゃんと認識してくれるかどうかは分からないからな。


 できれば黒幕のオリジナルの指紋で開いて欲しいもんだ。


 待つこと数秒、スマホにメールが届いた。


 エルちゃんから「全員準備完了」との内容だ。


 それじゃ行くか。


 おやっさんのほうを見て頷いた。


 おやさっんも同じように頷き、車を急発進させて地下の駐車場へ入った。


 マコトちゃんが本部にあったパソコンからこのショッピングモールの見取り図を見つけ出したから大体の場所は分かってる。おやっさんは迷うことなくそこへ向かっているようだ。


 ありがたいことに中には駐車している車はなく、見張りのような奴もいない。おやっさんの華麗なドライビングテクニックで、すぐに目的地に着いたようだ。


 そしてシェルターの入口である重厚そうな扉の前に車が停まる。


 急いで黒幕のオリジナルと車を降りた。そして指紋認証をするためのパネルに手を当てさせる。


 パネルが光ると電子音が小さく鳴り響き、直後に重厚そうな扉が左右に分かれるように開きだした。


 どうやら成功のようだ。


 今度は黒幕のオリジナルをすぐに車へ戻るように命令した。車に乗るのを確認してから、運転席にいるおやっさんのほうを見る。


 おやっさんは何も言わずに頷く。そして車を発進させて、その場を離れていった。


 さあて、最後のお仕事……にしたいところだがどうだろうね。まあいいや、まずは仕事をしてから考えよう。


 扉が開ききる前に中へ入り歩き出す。


 当然と言うべきか、中は電気がついているようだ。


 おっと、まずは作戦の一つをやっておかないとな。


 内ポケットからマコトちゃんから渡された装置を取り出して壁に取り付けた。


 マコトちゃんが言うにはこのシェルターのセキュリティは相当な物らしい。でもそれはあくまでも外からの攻撃に強いというだけで、中からの攻撃に強いかどうかは分からないそうだ。


 この装置はシェルターの中から内部のセキュリティを破壊して外からの入口を作るものらしい。


 正直何を言っているのか分からないし、コンピュータのセキュリティってそういう物だっけ、と思わないでもないが、ここはマコトちゃんにお任せだ。同じものをいくつも渡されているし、適当に置いていこう。


 そしてもう一つ。マコトちゃんから渡されたイヤホンを耳に付けた。


 このイヤホンから声が聞こえてくれば、ハッキングが完了した証になるらしい。ぜひともハッキングに成功してもらいたいものだ。


 奥へ続く通路を歩き出した。


 無機質な金属の通路がずっと続いている。


 頑丈に作るためにはこうするしかないのだろうが、シェルターと言うのは何年もいることを想定していると思う。こんなところにずっといたら精神的に厳しいと思うのだが、あくまでも通路だけの話なのだろうか?


 そんなことを考えながら通路を歩く。1キロほどをやや下りながら歩いた先に厳重そうな扉があった。


 ここにパネルのようなものはない。普通に開けられるはずだがどうすればいいのだろうか。


「君、誰だい?」


 いきなり声が聞こえた。おそらくこれが黒幕のクローンだろう。


「俺の名前は八卦千住(ハッケセンジュ)だ。お前は?」


「ハッケセンジュ君、ね。ああ、僕には名前がないんだよ。皆からはお父様と呼ばれてはいるけどね……君も僕をお父様と呼ぶかい?」


「そっちが良ければそれで構わない。それで申し訳ないんだけど、この扉を開けてくれないか、お父様」


「ははは、なかなか面白い人だね。それにノリもいい。気に入ったよ」


「それはどうも。で、ここは開けてくれるのか?」


「その前に聞きたいんだけど、君はどうやってここに入って来たんだい? 入口の指紋認証には僕の指紋が使われたみたいだけど、いちいち監視カメラを見るのも面倒だし聞いておきたいんだけど?」


「ああ、アンタのオリジナルの指紋を使ったよ」


 ジュンさんの話だと、こっちがクローンで本社にいたのがオリジナルとのことだが、さて、こう言えばどうなるかな?


「へぇ? ちょっと驚いたよ。外の世界にも頭のいい人がいるんだね」


 どうやら正解だったみたいだ。名前がないとも言ってたし、こっちがクローンで当たりか……まあ、別にどっちでもいいけど。


「頭がいいかどうかはともかく、質問には答えたぞ。中に入れてくれないか?」


「まだ質問があるんだけど、君は何しに来たんだい? ゾンビから逃れるためにこのシェルターまで来たのかな?」


「いや、俺はゾンビに襲われないんでね……ああ、そっか、こういえばすぐに入れてくれるのか? 俺は適合者だ。探していたんだろう?」


 殺しに来たとは言わない。殺すときは何も思わせずに一気に仕留める。扉が開いて目の前にいたらすぐに殺そう。


 お父様とやらはしばらく黙っていたが、急に笑い出した。大笑いだ。そして一通り笑ってから深呼吸をしている。


「いやぁ、君はどこまで知っているんだい? これほど予想外なのは生まれて初めてだよ。予想外なことが起きると笑い出すものなんだね!」


「お気に召したのなら幸いだ。で、どうする? このまま帰ってもいいが、一目くらい会っておきたいんだが?」


「ああ、もちろんだよ。ぜひとも招待させてくれ」


 お父様とやらがそういうと厳重そうな扉が音を立てて動き出した。


 扉の先へ足を踏みいれると、そこは普通の部屋だった。


 通路のように金属だけの部屋ではなく、壁や床は普通の木材のようだし、ちょっと広すぎるという以外はどこの家にもあるような部屋だ。木製のテーブルや調度品も置いてあるようでずいぶんとセンスがいいように思える。


 ただ、この壁一面にある大きな鏡はセンスないな。すごく落ち着かない。もしかしてマジックミラーになってたりするのか?


 部屋を見渡したが、誰かがいるようには見えない。ここにお父様とやらが来るのだろうか。


「そこで待っていてくれたまえ、すぐにそちらへ向かおう」


 どうやらここで待っていればいいようだ。なら念のため部屋を確認しておくか。


 部屋の大きさは30畳くらいあるだろう。これなら暴れやすいかな。盾になりそうな家具も多いし何かあっても対処できるだろう。


 相手は油断していると思うんだが、こっちは油断大敵だな。身体能力的は大したことはなさそうだが、頭はいいのかもしれない。なにかこう想像できない方法で対処してくる可能性はある。


 余計な話はせずに一撃必殺しかないな。相手を確認したらすぐに殺そう。


 待つこと数分、部屋の奥にある木製の扉が開いた。


 そこには白衣を着た男がいた。


 年齢は俺くらい。顔は本社にいた黒幕のオリジナルに似ている。そして肌も綺麗だ。ジュンさんの受け売りだし、本人も驚いたといっていたから、間違いなくこっちのほうがクローンだろう。


「やあやあ、よく来てくれたね。センジュ――だったかな? 僕は君を歓迎するよ」


「そりゃどうも。念のため確認するが、アンタがお父様か?」


「ああ、そうだよ。ところで君は――」


 懐の銃を抜いて胸に二発、頭に一発を撃ち込んだ。


 男は笑顔のまま、仰向けに倒れる。そして床には血が広がった。


 よし、これで黒幕は殺した。あとはこの施設を調べるか。上司には会いたくないが、ミカエルが捕まっているなら助けてやらないと。


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