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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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ヘリポート

2019.09.08 3話投稿(1/3)

 

 ショッピングモールへ行った日の翌日、改めてやってきた。


 今回は俺一人だ。それに今日も入らない。ここが普通の場所でない可能性があるからだ。


 その報告を受けたのが今日の朝。


 昨日、ここが襲われて全滅した情報を流した奴が誰なのかをマコトちゃんに調べてもらったのだが、結局分からなかったらしい。色々調べてみたらしいのだが、誰が最初にそれを言ったのか見当もつかないとのことだ。


 マコトちゃん曰く、意図的に情報を消されている可能性が高いとのこと。さらにはこのショッピングモールへのハッキングが出来ないらしい。


 殺し屋の会社ブラックホーネットにハッキング出来るマコトちゃんが、ただのショッピングモールへハッキング出来ないってどういうことと思ったが、この件に関しては本人が一番悔しがっていたみたいだ。


「これは私に対する挑戦だから! この小型ドローンをショッピングモールの近くに置いてきて! 次は絶対に突破してやる!」


 ものすごい剣幕でそんなことを言われた。


 マコトちゃんにはパソコン関係でお世話になっている。さすがに無下には出来ないので持ってきたわけだ。


 小型のドローンはどこにおいてもいいって言ってたな。とりあえず、ゾンビがいなそうな場所にでも置いておこう。


 何の変哲もない駐車場にドローンを置いた。


 任務完了。これで俺の仕事は終わりだ。


 帰りにどこかのお店にでも寄って何か持って帰ろう。女性の下着類は無理だが化粧品とかなら適当にもち帰っても大丈夫かな? 肌に合う合わないはあるだろうけど、そんな個人事情までは知らん。


 男性陣にはやっぱり食べ物かな。肉類がいいんだろうけど、生の肉は冷蔵庫で保管されていない物以外はもう駄目だろう。なにか缶詰とかあればいいんだけどな。最近では高級な缶詰とかもあるみたいだし、なにかよさげな食べ物を持って帰るか。


 車は救急車だからそれほどもって帰れないけど十分だろう。今日は時間もあるし、時間を掛けて物資を探してみるか。




 ショッピングモールの周辺はその集客を狙って色々な店が出ている。主に飲食店だな。回転ずしとかカレー屋、牛丼屋などがある。飲食以外だと紳士服店とかお手頃価格の洋服屋なんかもある。


 服や下着なんかは今度皆でくればいい。俺が持ち帰る必要はないだろう。センスないとか言われたらつらいし。


 なので飲食店から、ギフト用とか持ち帰り用のレトルト食品みたいのを持ってきた。カウンターに置いてある物だけど、これなら日持ちするはずだし、持って帰っても問題ないだろう。というか、牛丼食べたい。今日は牛丼パーティーだ……レトルトを食べるとエルちゃんは怒るかな? 大丈夫だよな?


 ……なんだ? 飲食店から外へ出たら、空気の流れがおかしいというか、空気の揺らぎを感じる。なぜ?


 それに駐車場にある植木がかすかに揺れている気がする。タダの風じゃないよな?


 違和感はショッピングモールからか?


 向かおうと思った瞬間、スマホから呼び出しの音が鳴った。どうやらマコトちゃんからだ。


「マコトちゃん、どうかした?」


「あ、センジュ、今ショッピングモールの近くにいる?」


「近くの店で物色してたところだけど、どうかした?」


「ちょっとショッピングモールの屋上を見てくれないかな? 実は――」


 マコトちゃんの話では、ついさっき置いたドローンが周囲の映像を撮影していたらしい。でも、遠隔操作で飛び上がってみると、ショッピングモールの屋上で画像が乱れたそうだ。


 画像が乱れるということは何かしらの妨害がされているらしい。良くは知らないけど、そういう技術があるそうだ。それがショッピングモールの屋上に施されている可能性があるとのことだ。


「こういうのって国や軍が使うような大掛かりな装置じゃないと無理なんだよね。それがただのショッピングモールにあるっておかしくない? それにセキュリティも強固すぎるよ。はっきり言って異常だね」


「それは確かにおかしいね。分かった。ちょっと見てくるよ」


「そうだ、屋上に行くなら、ジュンを送ろうか? 確かマンションも雨どいを登って来たよね? 屋上まで行けるかも」


 確かにそんなことができたな。でも、この厳重な守りは危険な気がする。中に誰かがいる可能性もあるし、ジュンさんを一人で屋上へ送るのは危険だろう。


「いや、いいよ。俺が頑張って屋上へ行ってみるから。それじゃ何かあったら連絡するよ」


「うん、分かった……そうだ、潜入するならスマホの着信音を切って振動もしないようにしたほうがいいよ。そういうので敵にばれるって良くあるから」


「よくあるって映画だよね? まあ、そうならないようにちゃんと切っておくよ。だからしばらくスマホに出れないかもしれないから皆に伝えておいて」


 マコトちゃんから了承の返事を得て、スマホを切った。


 さて、ここがただのショッピングモールじゃないことが判明したようだ。でも、俺がさっき感じた空気の揺らぎは何だったんだろう? ほんの微かだったけど、何かしら変な感覚がした。それもショッピングモールの屋上に関係があることなんだろうか。


 まあ、行ってみれば分かるか。




 もうすでにバレている可能性はあるが、念のため見つからないように救急車を使わずショッピングモールへ戻ってきた。


 相変わらずゾンビは多い。昨日、北口にいるゾンビに命令して町のほうへ行かせたが、今日になるとすでにゾンビであふれたようだ。


 よく分からないな。このゾンビ達はどこから来たんだろう? 東口や西口のほうからやってきたのだろうか。


 まあいいか。とりあえず、東西南北の四つの入口から入るのはやめておこう。


 となると、地下の搬入口かな。


 でも、地下もゾンビがいっぱいと言う可能性がある。俺なら問題はないだろうが、中にいる奴、いや、奴らか? そいつらを刺激はしたくないな。正規のルートじゃない場所から屋上へ行くのが一番いいだろう。


 となると、俺もジュンさんみたいに雨どいを登っていくしかないかな。こんなことになるならロープとか色々用意しておくんだった。仕方ない。素手で登ろう。


 可能な限り監視カメラを避けてショッピングモールの建物に近づいた。


 ここは全部で四階建てのはず。屋上に出るのはそれほど難しくないはずだ。


 金属製の雨どいには倒れないようにというか外れないように補強されている。そこに足や手をかけられるわけだ。外観を損ないそうだけど、この建物にもそういうタイプの雨どいがある。そこから屋上へ移動しよう。


 うん、思ったより頑丈そうな雨どいだ。俺が登っても問題はないだろう。スルスルと登って屋上に出た。


 人の気配を感じなかったので特に何も考えずに屋上へ出たわけだが……これはヘリポートか?


 まあ、都会のビルにも緊急着陸用にヘリポートはたくさんあるからここにあっても問題はないんだろうけど、何となく違和感あるな。全然使ってないという感じじゃない。結構利用されている感じだ。


 ヘリコプター用の燃料スタンドみたいのもあるし、頻繁に使われているんだろう。でも、ここにヘリコプターが来るなんてことがあっただろうか?


 確かにここへはあまり来たことはないけど、この辺りをヘリコプターが飛ぶなんて、パンデミックがあった日くらいだったはず。夜間にヘリの音が聞こえたことはないし、なんだか色々とちぐはぐな感じだな。


 ……なんだ? 話し声が聞こえてくる?


 すぐに雨どいのところへ戻って身を隠した。屋上からここは見えないだろう。


「――お姉様はなんでお父様を殺そうとしたのかしら?」


「さあ? でも、憶測くらいは出来るわよ」


「へえ? それはどんな憶測なの?」


「それはね――恋よ」


「なんて?」


「だから恋。たぶん、お姉さまは誰かに恋をしてそれをお父様に言ったら反対されたんじゃないかしら。だからお父様を殺して自由になりたかったんだと思うわ。分かるわ、禁断の恋。それはすごく盛り上がるもの!」


「あーなるほど、あり得る……わけないでしょうが! 聞いて損した! はぁ、もういいからヘリをどかしましょ。海外からみんな集まってくるから、ここにヘリを置いていたら危ないわ」


「光学迷彩を使ったヘリって使いづらいわよね? なんでこんな機能を搭載したのかしら。大体、もう見られてもいいんじゃない?」


「まだ生き残りはいるんだから見られたら困るでしょ? ショッピングモールへ生き残りが来たらどうするのよ?」


「それもそうね。いちいち殺すのも面倒だし……それじゃお仕事しちゃいますか」


 ……お姉さまがお父様を殺そうとした?


 それにマコトちゃんが突破できないくらいのセキュリティに、誰が書いたか分からない全滅のネット書きこみ、屋上での録画妨害と、光学迷彩を搭載したというオーバースペックのヘリ……。


 ここってもしかしてミカエルが向かったシェルターじゃね?


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