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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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大人の威厳

2019.07.28 3話投稿(2/3)

 

 エルちゃんが持って来てくれたサンドイッチを食べながら、ゲームが終わるのをぼーっと眺めていたら、マコトちゃん達が首が二つある巨人を倒したようだ。


 そしてマコトちゃんは得意げな顔になり、残りの三人は喜びだした。どうやらこれで終わりのようだ。さっそくマコトちゃんにスマホとノートパソコンのチェックをしてもらおう。


「マコトちゃん、ちょっといいかな?」


「あれ? いつの間に帰ってたの?」


「ついさっきね。で、見つけたものを調べてもらいたいんだけど」


 そう言って、壊れたスマホとノートパソコンをマコトちゃんに渡した。


 マコトちゃんは「ふんふん」と言いながらそれをじっくり眺めている。


「ノートパソコンのほうはすぐに終わると思うよ。でも、スマホは壊れ具合によるね。可能な限りデータを吸い出してはみるけど」


「それでいいよ。そうそう、ジュンさんは女王を探すためにピースメーカーのことを調べたいみたいだ。その辺りの情報が分かったら教えてあげてくれないか?」


「おっけー。それじゃちょっと解析してみるよ。この子達をよろしくね……あ、もうお昼か。このサンドイッチ貰うね」


 マコトちゃんはエルちゃんが持ってきたサンドイッチを口にくわえながら、ノートパソコンの解析を始めたようだ。


 そして今気づく。マコトちゃんが解析するってことは、俺がこの子たちの相手をしないといけないわけか。ゲーム下手なんだけど。


 三人を見ると何か揉めているようだ。ラファエルちゃんがウリエルちゃんに詰め寄ってる。


「ちょっとウリエル、何もしてないのにレアアイテムを取るのはずるい。武器を強化するのにその素材が必要なのに」


「大丈夫。ラファエルの腕なら装備が貧弱でもやれる。むしろ、ニートまっしぐらの私には強い装備が必要。これが自然の摂理」


「ラファエル、ウリエルに言っても時間の無駄だよ。諦めよう」


 なんというか、見た目は似ているのに性格は全然違うんだな。


 あの動画を見た限り、この子たちは誰かのクローンだ。ミカエルって子が先に生まれたクローンで、その後に生まれたのがこの子達。そして海外にも同じような子がいるのだろう。


 ……あの動画で言っていたことが本当だったらの話だけど。


 よく分からないが、スローライフを送ると言ったり、海外へ妹たちを迎えに行くと言ったりしておきながら、この子達は適合者を探している。その理由は分からないが、それはこの子達の意志なんだろうか?


 そう考えると、あのゾンビになった男は本当に死んだのだろうか? 大体、ウィルスを作るならそれに対抗するワクチンも作っておくはず。映像的にはゾンビになっていたけど、本当はまだ生きて――


 いつの間にか三人がこっちを見つめていた。そしてラファエルがゲームのコントローラをこっちへ渡そうとしている。


「えっと、センジュだよね? マコトの代わりにゲームやって」


「え? 俺ってゲームは下手くそだけど? 協力プレイとかできないよ?」


「これからやるゲームは協力プレイじゃなくて、対戦ゲーム。四人で戦って最後の一人になればいい。だから下手くそでも問題ないよ。むしろ大人なんだからさらに手加減して。マコトは大人げない」


 それならいいんだろうか。まあ、子供相手にゲームで本気を出すのもアレだしな。マコトちゃんは終始本気だったけど。


「分かった。それじゃ参加するよ。お手柔らかにね」




「センジュ、弱すぎ」


「それ、本気なんだよね?」


「私より弱いなんて人として尊敬する」


 ラファエルちゃん、ガブリエルちゃん、ウリエルちゃんがそれぞれそんなことを言った。


 ゲームを始めてから結構な時間が経ったと思う。途中から本気でやったのに、一向にこの三人には勝てる様子がない。下手くそなのは仕方ないけど、反射神経とかは結構いいからボロ負けはしないと思っていたのだが。


 もしかしてマコトちゃんがものすごくゲームが上手くて、この子達が下手のように見えただけなのだろうか。なにか騙された気分だ。


「センジュが得意なゲームで勝負しようよ。これじゃ差があり過ぎてつまらない」


 俺が得意なゲーム? そんなものは無いのだが。


「それだったらいいのがあるよ」


 いつの間にかマコトちゃんが俺の後ろにいた。ゲームに熱中していて背後を取られるとは殺し屋としてどうなんだろうか。最近、気を抜きすぎなのかな。悪いことじゃないと思うんだけど。


 でも、俺が得意なゲームがあるの? ずっと負け続けたから正直なんでもいいから勝って、大人の威厳を示したい。


 マコトちゃんは銃を渡してきた。おもちゃの銃だと思うけど、これが何なのだろう?


「その銃で画面を撃つと、画面上にいるモンスターを撃てるんだよ。銃ならセンジュも得意でしょ?」


 なるほど。そんなゲームがあるのを見たような気もするな。見たのはゾンビを撃つゲームだったと思うけど。


 マコトちゃんの説明によると、これは魔物を魔法の銃で撃っていくようなゲームらしい。四人同時プレイで最後まで生き残るか、点数が高い人が勝ちというルールになった。


 ラファエルちゃん達は銃型のコントローラを持って楽しそうにしている。職業柄、おもちゃとはいえ、こんな小さな子に銃を持たせるのはなんとなく嫌な感じがするが……まあ、おもちゃにそこまで神経質になることでもないか。


 そんなわけでゲームが始まった。


 なるほど。レーザーポインタみたいのが画面に出るんだな。引き金を引くとそこを撃ったことになる、と。弾は全部で20発。リロードするときは画面の外を撃つらしい。


 まあ、これなら何とかなるかな。よし、なんとか威厳を回復させるぞ。




「あー、センジュ! 助けて! 魔物にさらわれる!」


「右の魔物が硬い! センジュ撃って!」


「樽から回復薬出てきた。貰っていいよね? ……あ、外しちゃった。センジュのせいだ」


 四人協力プレイなのに魔物を倒しているのは俺だけのような気がする。というか、皆まともに当てられていないような。


「さすがセンジュ。四人プレイだからそのぶん敵の数も多いんだけど、ノーダメージで進めるなんてすごいよ」


 マコトちゃんからお褒めの言葉を貰った。ゲームとはいえ、褒められるのは悪くないな。


 そんなこんなで最終ステージまで進み、最後の魔物も倒した。ストーリーはよく見てなかったが、主人公達も魔物だったらしい。最後は自分たちもいなくなって世界は平和になり、銃だけが残るというエンディングだった。泣かせるね。


 一応全員が最後まで生き残っていた。勝敗の行方はスコアになるわけだが……まあ、ぶっちぎりで俺だな。二位のラファエルちゃんにダブルどころかトリプルスコアで圧勝した。


 ……ちょっと本気を出しすぎてしまったかもしれない。


 怒ってしまったかと思って、おそるおそる三人のほうを見たが、三人とも笑顔だった。


「センジュは銃の扱いが上手いね!」


「たくさん守ってもらっちゃった」


「現実世界でもセンジュに寄生したい」


 約一名不穏なことを言っているが、とりあえず威厳は保てたのだろうか。ゲームで保たれる威厳なんてあってないようなものだが、子供には効果的だと思う。たぶん。


 ふと窓の外を見るとすでに夕方だった。


 ゲームに熱中しすぎたな。それにやり過ぎは良くない。今日のゲームはここまでだ。


「それじゃ今日のゲームはここまでにしよう」


 三人から非難の声があがるが、この後にパーティーみたいなことをすると言ったら納得してくれたようだ。


 直後にドアが開いて、エルちゃんが入ってきた。


「宴会の準備が終わりました。ちょっと早いですけど、もう始めますか?」


 皆も久しぶりに騒ぎたいだろうし早めに始めてしまおう。


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