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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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秘密の場所

2019.07.28 3話投稿(1/3)

 

 レンカのスマホを見つけたが壊れていた。


 スイートルームにあったわけではなく、あったのは廊下だ。普通に落ちて壊れたような状態じゃない。思い切り床に叩きつけたような状況だった。


 俺の場合は地面に叩きつけた後に踏んだから結構激しく壊れたけど、女性の力で叩きつけたくらいならなんとかなると思う。電源は入らないが、マコトちゃんなら修復、もしくはデータの吸出しが可能かもしれない。


 しかし、レンカはなぜスマホを地面に叩きつけたのだろうか。俺と話をした後に叩きつけるというのはちょっとおかしい気がする。


 俺が殺し屋だと分かって怒るということは考えられるのか? 嘘だと思って嘲笑うなら分かるが……それとももっと別のタイミング? 最後に話したのは俺じゃない可能性がありそうだ。


 ここで考えていても仕方ないか。マコトちゃんに調べてもらえばわかることだ。そろそろトラックのほうへ戻ろう。


「二人とも、そろそろ戻ろう――何してんの?」


 エルちゃんも、ジュンさんもまだ何かを探しているようだ。


「スマホ以外にもレンカの私物がないか確認しているのよ。そもそも、皆をゾンビにさせるための何かがあるはずだし、ここの殺し屋ゾンビ達は銃器を持っていたのよね? 念のため、そういう情報も出来るだけ持って帰りたいから……でも、この部屋には何もないわね」


 あのレンカのことだ。分かりやすい場所にはそういう物を置かないと思う。このホテルの中に誰も知らない場所ならあるかもしれない。そもそも、殺し屋のゾンビ達をアマゾネスにばれないように隠していたんだ。おそらくこのホテルのどこかにそういう秘密の場所があるんだろう。


「ゾンビにさせるためのウィルスがどこかにあるんだろうけど、別の場所に隠してあると思う。たぶんこの部屋にはないだろうね。武器やゾンビ達を隠しておける場所が地下にでもあるんじゃないかな――」


 地下? いかん。今、危険な人物が地下にいる。


「調べるのは後にして、すぐに戻ろう。武器をサクラちゃんが見つけたら大変なことになるかもしれない――いや、なる」


「一度、適当な物を撃たせてあげたほうがいいんじゃないの? でも、まあ、あの子は色々と分かってやっているとは思うけどね。場の雰囲気を明るくしようとわざと自分が悪い状況を作っている気がするわ」


「ジュンさんもそう思いますか? なんとなくですけど、サクラちゃんは馬鹿なふりをしている気がするんですよね」


 一応俺もそう思っている。考えすぎかもしれないが。それに意識的にじゃなくて、無意識だとは思うけど。


 でも、エルちゃんはそう思っていないみたいだ。かなり首を傾げている。


「そうですか? 何も考えていないように思えますけど……?」


「エルちゃんはそう思うんだ? 意識はしてないと思うけど、自分が悪者になって暗い雰囲気を作らないようにしている気がするんだけどね。まあ、それはどっちでもいいや。とにかく戻ろう。結構時間も経ったからね」


 二人とも頷いたので、この部屋を後にした。




 地下へ移動すると、サクラちゃんがロープで縛られて床に転がされていた。何したんだ。


 そしてサクラちゃんが芋虫みたいに動いてこちらを見つめてくる。


「聞いてくださいよ、センジュさん! モミジったら私のことが信用できないって言うんですよ! この姉を!」


「お姉ちゃんが銃器のある部屋を見つけたので縛っておきました。なんでこういうことには鼻が利くのかな……あ、食料の積み込みは終わりましたよ。いつでも帰れます」


「モミジ? お姉ちゃん、縛られたままだからまだ帰れないよね? ……ごめんなさい、おいて行かないでください」


 仲がいいんだか悪いんだか。でも、銃器のある部屋か。おそらくレンカしか知らない場所だ。銃器以外の何かがあるかもしれないな。念のため確認しておこう。


 なにか罠があるかもしれないので、自分だけ部屋に入って色々と確認する。


 ずいぶんとゴツイ銃器がある。戦争でもする気だったのか? ほかにもウィルスと思われる液体などが入ったケースを見つけた。それにノートパソコンがある。これもマコトちゃんに調べてもらったほうがいいだろう。


 銃器に関しては持って行った方がいいのだろうが、今はトラックに乗せられないな。とりあえず、ウィルスと思われるものが入ったケースとノートパソコンだけ持ち帰ることにしよう。これくらいなら場所を取らないはずだ。


 さて、めぼしいものは回収できたし、マンションへ帰ろう。




 マンションに到着するころにはお昼になっていた。何の名目なのかは分からないが、宴会をするには早すぎるな。普通に昼食を食べてからゆっくりしよう。このところ色々あって疲れている気もするし。


 トラックにある食糧の移動と昼食を作るお願いをしてから、マコトちゃんの部屋へ向かう。まずはスマホとノートパソコンの解析をお願いしよう。あと、じいさんにウィルスを渡さないとな。


 じいさんもマコトちゃんの部屋にいるしちょうどいいだろう。


 エレベーターで11階まで移動し、マコトちゃんの部屋へ入るとずいぶんと熱気のある声が聞こえてきた。


「マコトの装備強すぎない? なんであの一撃で部位破壊できるの?」


「弱点属性をマシマシで強化した武器を使ってるし。やりこみ2000時間を舐めちゃいけない」


「ちょっとウリエル。ちゃんと戦ってよ。なんでモンスターがいるのに採取してるの。それ、後でもいいでしょ?」


「寄生こそ我が人生。あとヒールください。トラップが発動して死にそう。私が死んだらクエスト失敗になるよ?」


 なにか協力してモンスターを倒すようなゲームをやっている。仲がよさそうで何よりだ。


 とりあえず、マコトちゃんにお願いするのはゲームが終わってからにするか……モンスターを倒したら終わりなんだよな?


「センジュ、どうやら無事に戻ってきたようだな」


 部屋にいたじいさんが笑顔で近寄ってきた。


「一応、ホテルにあった食料や飲み物を持ってきたよ。こっちは問題……なさそうだな」


「そうじゃな、皆で楽しくゲームをしておるだけじゃ。しかし、最近のゲームとはすごいのう。映像がリアルでびっくりしたわい」


「映像に力を入れているゲームなんだろうな。ところでちょっといいか? 実はホテルでこのケースを見つけた。たぶんウィルスだと思う」


 手に持っているケースを床に置き、開いて中を見せる。


 じいさんは少しだけ見つめたあと、ケースを閉めるように言った。


「見ただけでは何とも言えんが、警察署にあったものと似ておるな。瓶の形やその瓶に張られているシールなどがそっくりじゃ。なら、さっそく病院に持ち帰って調べてみよう。ここは任せて構わんか?」


「もちろん。調べて欲しいから持ち帰ったんだ。ああ、でも、夜に宴会をするからそっちには顔を出してくれよ」


「そうじゃな、良識ある大人がおらんと色々と危なそう面子じゃからの」


 殺し屋なのに自分を良識ある大人と言えるメンタルがすごいな。でも、確かにこのメンバーの中じゃ良識がある方か。


「ハメを外しそうな奴らが多いから、そういうのを抑える人材としてものすごく期待してる。いや、本当に頼むぞ。俺だけじゃたぶん無理」


「まあ、そうかもしれんのう。それじゃ病院へ行ってくる。夜には戻るが、何かあればスマホへ連絡してくれ」


 じいさんはそう言うと、ケースを持って部屋を出て行った。


 さて、とりあえず、この部屋で皆を見ておくか。白い少女達がマコトちゃんに襲い掛かるようには見えないが、ちゃんと注意しておかないと。意図しなくても、じゃれて噛まれたりひっかかれたりしたら大変だからな。


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