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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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スマホ

2019.07.21 3話投稿(3/3)

 

 ホテル「カテドラル」に向かってトラックを走らせている。


 座席には俺とエルちゃんとジュンさん。荷台のほうにはハッピートリガーのメンバーが乗っている。


 これはアマゾネスが俺を殺すために乗ってきたトラックだ。おやっさんが言うには、問題なく使える物だから、大量に物資を持って来てくれと言われた。物資と言ってもアルコール類のことだろうな。


 マンションに残してきたマコトちゃんはラファエルちゃん達とゲームをしていて、じいさんはその護衛という感じだ。


 おやっさん達はアマゾネスが乗ってきた車を改造するなり分解するなりすると言っていた。かなり原型をとどめているので色々やれそうだと嬉しそうにしていたな。


 ナタリーさん達やアマゾネスの女性陣は、屋上の庭園で畑の手入れをするらしい。ハッピートリガーの男性陣から色々教わっているので色々やれるそうだ。いままでは略奪という行為だけだったが、自分で何かを作るってことに喜びを感じているらしい。


「あの、ところでジュンさんはどうしてついてきたんですか?」


「なによ、ダメなの?」


「いえ、そういう訳ではないのですが、何か目的があった感じでしたので」


 俺が行こうとしたときに、いの一番で「自分も行く」って言いだしたからな。どう考えてもあのホテルに用事がある感じだ。


「あんな感じで立候補すればすぐにバレるわね。ええ、その通りよ、あのホテルに用事があるの」


「それはどんな?」


「単純に女王がどこにいるのかを調べたいのよ。貴方から聞いた話だと、レンカが女王をピースメーカーの組織に引き渡したのよね?」


「確かそんなことを言ってましたね」


「でも、レンカは外に出なかった。ということは、ピースメーカーの誰かと連絡を取るならスマホしかないと思うの。それを回収しておきたいのよ」


 なるほど、レンカのスマホがホテルのどこかにあるってことか。確かにレンカを火葬にしたとき、そういう物は持ち物になかった。ならあのスイートルームにあるのかもしれないな。


 それにしても、女王か。ジュンさんも女王に従いたいタイプなのかね。


「ジュンさんもその女王って人が、その、なんて言うんでしょう? 気に入ってるんですか?」


「私の場合はそうでもないわね。でも、マンションにいるみんなは信仰に近い形で女王を見ていた。生きているなら、助けてもう一度皆に会わせてあげたいわね。それに大半のメンバーがゾンビになってしまったことも伝えたいの。知らないほうがいいかもしれないけど、私としては知っておいて欲しいわ」


「……そうですか。ちなみに女王ってなんていう名前なんですか?」


「ああ、名前を言ってなかったかしら? たぶん、知ってると思うわよ。天ノ川凛(アマノガワリン)って言えば分かるわよね?」


「うお、マジですか、知ってますよ! 私、あの人のアルバム持ってます! クール系でやや中性的なところがすっごいいいんですよね! 男の人だったら絶対に付き合う!」


「ちょっとお姉ちゃん、うるさい。荷台で暴れないで」


 トラックの荷台のほうから興奮しているサクラちゃんの声が聞こえた。どうやらモミジちゃんが押さえ込んでいるようだ。


 しかし、よりによってアマノガワか。世間は狭いね。


「あの、センジュさんは、そのアマノガワって人を知ってるんですか? 歌をメインとしたアイドルみたいですけど?」


「エルちゃん、なんでバットを構えたの? 座席が狭いんだから暴れないでね」


 大体二人乗りのところに三人乗ってる。ただでさえ狭いのに。


「それはセンジュさんの回答次第です」


 マジかよ。


「知ってはいるよ。アイドルとしてのアマノガワは知らないけど」


「プライベートで知ってるってことですか! どういう関係なんですか!」


「いや、そうじゃないよ。そいつ、殺し屋なの。アマノガワリン。クイーンの二つ名で呼ばれている暗殺専門の殺し屋。アイドルとして近づいて、手に塗った検出不能の毒を握手して相手に塗り付ける感じの殺しを得意としている奴だね。ランキングは忘れたけど、結構高いはずだよ」


 誰からも返事がないんだけど、どうしたんだろう?


「どうかした?」


「いえ、どうかしたも何も、本当の話ですか?」


「嘘ついてどうするの。嘘をつくならもっとそれらしいことを言うよ。普通なら殺し屋のことはばらさないけど、こんな世界じゃ意味ないしね。もしかしてジュンさんも――というかアマゾネスの人たちは全員知らなかった?」


「衝撃的な事実ね。さすがに私でもそれは見抜けなかったわ。なんとなく修羅場をくぐっている感じではあったけど、それはアイドルとして鍛えられたものかと思ってたわ」


 ジュンさんが知らないなら、アマゾネスの人たちは誰も知らないだろう……もしかして男であることも知らないのか?


 さすがにこれは言わないほうがいいよな? 男性として慕っていたって感じじゃなさそうだし、理想は理想のままでいたほうがいいような気がする。でも、男だったら余計に理想になるんだろうか?


 まあいいか、その辺りはノータッチだ。余計なことに首は突っ込まない。それが長生きの秘訣。


 さて、ホテルが見えてきた。宴会用の食料を調達しますか。




 ホテル「カテドラル」の地下駐車場にトラックを停めた。


 とりあえず業務用エレベーターを使えば地下に物資を運べるよな。レンカを殺した後、ゾンビに命令してこのホテルの機能はほとんど回復させた。エレベーターも普通に動くはずだ。


 食料の運び出しはハッピートリガーの皆に任せて、俺とエルちゃん、それにジュンさんは最上階でレンカのスマホを探そう。


「えっと、サクラちゃん達は食料の調達をよろしく。この辺りにゾンビはいないはずだけど、警戒を怠らないようにね」


「分かりました! 今日の宴会のためにも大量に食糧を運び出します! 肉! 肉! デザート!」


「はい、こっちはお任せください。えっと、ビール多めがいいんですよね?」


「おやっさんがビール好きだからね。まあ、適当でいいよ。そもそもアルコールはドクターストップかかってるし。それじゃ俺達は探し物があるから、ちょっと最上階のほうまで行ってくるね。何かあったらスマホに連絡して」


 全員が頷くのを確認してから、普通のエレベーターに乗る。そして最上階のボタンを押すとドアが閉まり、エレベーターが上昇したようだ。


「最上階のスイートルームですか。私、そういう部屋に泊ったことがないんですよね」


「俺もないよ。ほとんどの人は泊ったことはないんじゃないかな?」


「そうですか。それじゃ、センジュさん、今日、私と一緒に入りましょう!」


「なんで『一緒』の部分を強調するの?」


「私ってお邪魔かしら?」


 エレベーターに乗っているだけなのに何か疲れる。


 でも、そんな状況でもエレベーターは最上階に着いた。とっととスマホを探して地下駐車場へ戻ろう。


 というわけで、希望通りエルちゃんと一緒にスイートルームに入った。正直、なんでこんなことが嬉しいのか分からないが、喜んでくれるならまあいいかな。


「本当にレンカを殺したのね」


 ジュンさんが床の血のシミを見ながらそう言った。


「ええ、ドア越しに頭を狙いました。多分、痛みも感じる前に死んだと思います」


「貴方の従妹ですものね。それくらいの慈悲は当然よね……あ、ごめんなさい。早速探しましょう」


 レンカのスマホの番号が分かれば鳴らせばいいだけなのだが、番号なんて知らないからな。あの頑丈そうな車にあったスマホは壊さなければよかった。まあ、いまさら言っても仕方ない。広い部屋だが探すしかないだろう。さて、手分けして探してみるか。


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