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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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仲間

2019.06.30 3話投稿(1/3)

 

 まず、マンションに忍び込んできた女性のお願いを聞いて、ナタリーさんと何人かの女性を受け入れた。このマンションに来たのは大学で馬に乗っていた人たちのようだ。


 アマゾネスの場合、ホテルを拠点にしているようだが、外で物資を集めるメンバーと中で働くメンバーに分かれているらしい。レンカはその中にいるメンバーをいつの間にかまとめ上げていたそうだ。


 どうやら外で物資を集めている者たちは取ってきた物資の半分を占有し、残りの物資しか渡していないという何の証拠もない嘘を徐々に浸透させていたらしい。


 また女王に関しても実は自分たちが独占するためにどこかに監禁しているのではないか、など不信感をあおっていた。それが今回の追放に繋がったのだと分析しているようだ。


 俺もアイツの本性を知るまでは信じられなかったが、レンカはそうやって周囲に不安の種をまき、その不安をついて自分の思い通りに人を動かすのを得意としている。


 もしかしたら殺し屋に依頼した叔父や叔母も、レンカに唆された可能性があるのかもしれない。女王が逃げ出したのもレンカから邪魔になったと思われて殺された可能性もある。


 でも、レンカはこれからどうするつもりなのかね。


 物資調達の主力メンバーを追い出したら、これから物資の調達は難しくなる。そんなことも分からないような馬鹿ではないはずなのだから、何かしらの手があるということだろうか。


 それにここへの総攻撃。人数的にはアマゾネスのほうが多いだろうが、こっちに勝てる自信があるということか。いや、そもそも俺が適合者なのは知っているが、元殺し屋であることは知らないはずだ。銃を持っているのもどこかで拾ったくらいにしか思っていないかもしれないな。甘く見られたもんだ。


「さて、みんな、夜も遅いから手短に言うよ。明日、アマゾネスからの攻撃がある。防衛に関しては、俺とゾンビ達で行うからみんなはマンションで待機だ」


 そう言うと、全員からブーイングが起きた。


「センジュさん! それはないんじゃないかな! 私達ハッピートリガーのメンバーは全員、センジュさんの組合に吸収されたんだし、色々使ってくれていいんですよ! 主に地下に隠している銃を使わせてください!」


「サクラちゃんは銃を撃ちたいだけでしょ? 前にも言った通り銃を撃つのは駄目。しかも今回はゾンビ相手じゃなくて人相手だよ? 絶対に許可しない」


「それじゃBB弾での援護射撃はどうでしょうか! 屋上からならスナイパーライフルでやれます! 長距離用の銃は私とモミジしか持ってませんけど」


 このマンションの屋上から撃って効果があるかな? でも、上から狙っていると思わせた方が相手をけん制できる可能性はあるな。


 ……そうだな。俺はいつも一人だったけど、今は頼りになる……かもしれない仲間がいるんだ。なら頼らせてもらおう。


「分かった。ならサクラちゃんとモミジちゃんは屋上から援護射撃をよろしく。ほかの皆はマンションで待機……なんだけど、皆を人質に取ろうとマンションに忍び込んでくる奴がいるかもしれないから、侵入を阻止して。エルちゃんとハッピートリガーの男性陣はよろしく頼むよ」


「任せてください。狭い場所ならこのミョルニルも大暴れですよ!」


「大暴れはしなくていいからね?」


 マンションの入口付近は俺とゾンビが陣取るからいいとして、裏口にあたる非常階段やベランダから侵入してくるという可能性もある。それを阻止してもらわないとな。


「えっと、ナタリーさん達は――」


「私はマイケルと一緒に侵入者を防ぐわね。ほかのみんなも似たようなものだけど、もう少し安全な場所で防衛させるわ」


「その辺はナタリーさんに任せるよ。それで、えっと――」


「私のことはジュンと呼んで。そうね、言っておくと私は探偵よ。まあ、浮気調査専門の探偵だけど」


 探偵? 探偵って雨どいを登ったり、部屋の鍵をピッキングで開けたりするのか? 本当かどうかは知らないけど、今は信じておくか。それに気配を消すのは確かに上手かった。


「それじゃ、ジュンさん。貴方もナタリーさん達と一緒にいてくれ」


「ナタリー達とは別チームだったけど、これでも物資調達をしてたのよ? 私も戦えるけど?」


「だったらマンションへの侵入を防いでくれればいい」


「貴方と一緒に戦ってもいいんだけど?」


「護身術レベルの強さなら近くにいられると邪魔だね。いや、言い方が悪いね。自分の場合、そばに誰もいないほうがいいんだ。巻き込みたくないし。悪いけど、みんなを守る方を優先して」


「適合者になって身体能力が上がっているのは分かるけど、過信は危ないわよ?」


「大丈夫。適合者になる前から肉体はギリギリまで鍛え上げていたから、俺の場合、何も変わってないんだよ」


 ジュンさんは不思議そうな顔をしたが、それ以上は何も言わなかった。どういう風に納得したかはわからないけど、今はそれを説明している暇もない。それに夜も遅いし。


「私は何をすればいいかな? ハッキングじゃ意味ないよね?」


「マコトちゃんはドローンで上空からアマゾネスの動きを見てくれないかな? たぶんだけど、マコトちゃんのドローンはカメラ付きだよね? 変な動きをしたら教えてもらいたいんだけど」


 マコトちゃんはニヤリと笑った。


「オッケー任せて。そういうのは得意」


 うん、これでいいだろう。あとは一緒に戦うゾンビの選出を行おう。病院にいた傭兵達のゾンビなら荒事に強いはずだ。あと念のために警官のゾンビたちに銃を携帯させておくか。


 誰も殺すつもりはないが、こっちの誰かが怪我するくらいなら相手を殺すことは厭わない。一般人を殺すのに抵抗はあるが優先しなきゃいけないことがある。


 みんなを見た。


 殺し屋になってからできた初めての仲間だ。会って数日しか経っていない。趣味も知らないし、好きな食べ物も知らない。でも、命を懸けて守るべき人達だと思える。そう思い込みたいだけなのかもしれないけど、それでも今は守るべき人達だ。


 もしかしたら、いつか俺のことを裏切るかもしれない。でも、おやっさんの例もあるし、命の危険に晒されても俺を裏切らないかもしれない。そう信じたい。


「それじゃ、みんな、部屋に戻って睡眠をとってくれ。おそらく夜に攻めてくることはないだろうからね。そうそう、アマゾネスのみんなは9階の部屋を勝手に使っていいよ。鍵は開いてるから好きな部屋を使って」


 そういうと、みんなは頷いてからそれぞれ部屋に戻っていった。でも、エルちゃんだけは残っている。


「センジュさんはどうされるんですか?」


「俺は夜通し周囲を警戒しておくよ。それに一部のゾンビたちに命令しておかないといけないからね」


「でも、それじゃ、センジュさんが寝れないんじゃ?」


 エルちゃんは俺を心配してくれているのだろう。普段サイコパスなのに、優しくされるとぐっとくるね。


「世界がこうなる前はいつもこんな感じだったよ。最近は寝すぎなくらいだから心配しなくて大丈夫」


「そうですか……その、センジュさん、少し元気出ました? あのレンカって女と話をした後はちょっと近寄りがたかったですけど」


「ああ、昔のことを思い出してね。でも、やるべきこと――いや、やらなきゃいけない事、かな、それを分かったからもう大丈夫だよ」


 そういうと、エルちゃんは笑顔になった。


「ならよかったです。そうだ、センジュさん、夕ご飯食べてないですよね? おにぎりでも作りますか? 腹が減っては戦ができぬって言われてますし」


「そっか、そうだね。エルちゃんの睡眠時間を減らしてしまうけど、作ってもらえるかな?」


「もちろん構いませんよ。おかかと梅干、どっちがいいですか?」


「それじゃ梅干で。酸っぱいと目が覚めそう」


「了解です!」


 エルちゃんは急いで部屋に戻っていった。これからすぐに作ってくれるのだろう。今日のおにぎりはすごくおいしく感じるような気がするな。


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