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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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アマゾネス

2019.06.16 3話投稿(2/3)

 

 カウガールの女性にあらぬ疑いを掛けられている。ここは何としても否定しないと。大体、女を侍らすって不名誉極まりない。


「いや、待ってくれ、男ならいる。今はそこの研究棟の中に入っているだけだ。しばらくすれば戻ってくるから、それで身の潔白を証明するよ」


「黙れ! その男たちはゾンビなのだろう! 聞いているぞ! ゾンビに命令できるのをいいことに、男達は全部ゾンビにして好き勝手にやっているとな! しかも生き残った女性たちには、食料を与える代わりにあんなことやこんなこと強要……死んで償え!」


 なんという冤罪。もしかしてそんなことをしている適合者がここにいるのか? ……そいつを痛い目にあわそう。それくらいの名誉棄損だ。


「あの、待ってください。ここにいる人はそんなことはしてませんよ」


 モミジちゃんが俺を援護してくれた。ありがたい。アイスを見つけたらマコトちゃんの次にあげよう。


「そういうように脅されているのだな……? 安心せよ! 我々は生存組合アマゾネス! 弱き女性の味方だ!」


 アマゾネス? 確かにそんな組合があるとかネットで見たな。女性だけの組合だとか。そこまで詳しく調べたことはないが、あのドラゴンファングとも物資を取りあうほどの武闘派の組合だ。


 そうこうしているうちに、ほかの馬たちも集まってきた。カウガールも含めて十人か。全員が女性で、袴姿だったり、お嬢様っぽい恰好だったり、ずいぶんと多種多様だ。


 たぶんだけど、馬に乗れる女性で構成されているのだろう。お嬢様学校とか、馬に乗る訓練をしていた人じゃないと無理なんだろうな。たぶん、俺も乗れない。


 しかしどうしたものかな? 俺じゃないということを証明したいんだけど、それが難しい。適合者であることは間違いないし、近くにいる子たちはみんな女の子だ。でも誓って何もしてない。食料をあげるから言うことを聞けなんて、男として最低だ。


「改めていうけど、俺はさっき言ってた奴みたいなことはしていない。確かに適合者ではある。でも、それだけで、女性に言うことを聞かせるなんて真似はしていないよ。それに女王様というのも何を言っているのか分からないんだ」


 こういうのは変に嘘をつくと危険だから、本当のことを言っておこう。適合者であることはバレるけど必要経費だ。というか、結構多くの人に知れ渡っていて、今更のような気がする。


「黙れ! 男の言うことなど信じられるか! 口を割らせる方法なんていくらでもある! 五体満足でいられると思うなよ! 皆! その男を生け捕りにするぞ!」


 おっかないね。でも、捕まるわけにはいかないな。何をされるか分かったものじゃない。


「エルちゃん達は研究棟へ。あの銃は本物っぽいし流れ弾に当たったら大変だから」


「分かりました。それじゃ私が皆を守っていますから」


 エルちゃんがそんなことを言うと、皆を連れて研究棟に入口へ向かった。


「女を盾に使わないことだけは認めてやろう! だが、それとこれとは話が別! 身体能力が上がっていたとしても訓練もしていない一般人に我々は負けない!」


 勇ましいね。でも、訓練もしていない一般人じゃない。


 とりあえず全員を馬から降ろしてしまおうか。




 10分くらいでカウガールの女性以外は馬から降ろした。持っていたナギナタとか弓とか鞭? なんかも使えなくする。


「貴様……只者ではないな!」


「まあ、普通の人とは違う人生を送ってるよ」


 カウガールの女性は銃を使わずに、投げロープみたいなもので俺を捕まえようとするが、そんなものに捕まる俺じゃない。女性たちは普通の人から比べたらはるかに強いけど、それでも一般人レベルだ。


「さて、残りは君一人だ。ちゃんと話を聞いてくれないか? 君たちは誤解している。俺は今日初めてここに来たんだ。君達の探している適合者じゃない」


「……かもしれん。だが、適合者を見つけて手ぶらで帰れるか! お前をいつかお戻りになる女王様へ捧げよう!」


 なんだか適合者であればだれでも良くなってないか? 面倒くさいな。


 それに女王様か――そういえば、殺し屋の一人に「クイーン」って奴がいたな。男だけど。


 仕方ない。これまでよりはちょっと手荒に対応しよう。怪我をさせるかもしれないが、じいさんに診てもらえばいいだろう。


「ナタリー!」


 いきなり声が聞こえたと思ったら、誰かが近寄ってきた。


 ハッピートリガーのマイケル君だ。でも、今、ナタリーって言った? もしかして知り合いなのか?


「嘘……! マイケル!?」


 そうやら知り合いみたいだ。二人とも涙目で見つめ合って、いい雰囲気を出している。


 カウガールのナタリーは馬から飛び降りると、すぐにマイケルに抱き着いた。そして強烈なハグの後にキス……長いな、おい。でも、もしかしてこれで色々解決するのか?


 研究棟からも皆が集まってきた。そしてマイケル君達を見つめる。サクラちゃんにいたっては、いきなり銃を構えた。


「センジュさん、撃っていいですか? いいですよね!? 発砲の許可を!」


「いや、ダメだよ。それに人に向けては撃たないって言ってたよね?」


「公共の場所でいちゃつく奴は撃ってもいいって法律があるんですよ!」


「いつの間に法改正したの。モミジちゃん、お姉さんを抑えて――君もか」


 死んだ魚のような目で銃を構えているモミジちゃんはお姉ちゃんより重症な気がする。ああいう子は何も言わずにすごいことするからな。要注意だ。


 ハッピートリガーの皆に二人を抑えてもらいながら話を聞くと、マイケル君には同郷で年上の彼女がいたらしい。それがあのナタリーなのだろう。


 ハッピートリガーでは恋愛禁止というルールがあるけど、守っているのはイノシカ姉妹だけみたいだ。いや、守っているという積極性があるわけではなく、いつでも破る気満々だったけど――あまり追及しないでおこう。


 そんな話を聞いている間に、エルちゃんやマコトちゃんが馬から降ろした女性たちを介抱していた。その子たちもマイケル君とナタリーの状態を見て毒気を抜かれたというか、襲ってはこないようだ。


 長いキスが終わり、二人は離れた。そして英語で何か話している。どうやら俺のことを助けてくれた恩人だとか、ここに今日初めて来たとか説明してくれているみたいだ。


 ナタリーはマイケル君の腕に自分の腕を絡めて近寄ってきた。そしてマイケル君の方に頭を乗せて幸せそうにしている。なるほど、撃ちたくなるね。


「えっと、センジュでいいのかしら? 本当にありがとう。貴方がマイケルを助けてくれたのね。それにここにいた適合者じゃないことも聞いたわ」


「ああ、うん。誤解が解けたなら何よりだよ」


 男の言うことなんて信じないと言ったのは何だったのか。というか、サクラちゃんの例もあるし、女性の言葉を信じちゃいけないのか?


 ナタリーはマイケル君から離れて、真面目な顔をした。


「こんなことを頼める義理はないのだけど、貴方を正義感のある適合者と思ってお願いがあるの」


 殺し屋に正義感とか言わないで。案の定、エルちゃんが少しだけ身を乗り出してきてるし。


「ええと、正義感はないけど、どんなお願いだい?」


「貴方ではない別の適合者にさらわれた女王様を助けて欲しいの」


 ここで嫌と言える勇気があれば、俺のいままでの人生も多少は違っていたのかもしれないな。でも、多くの女性に囲まれてそんなことを言える勇気はない。


 仕方ない。詳しい話を聞くか。


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