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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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インフラ

2019.06.09 3話投稿(2/3)

 

 時間を掛けて分かりやすく説明した。


 かなり熱弁したと言ってもいい。殺し屋のような殺伐した生活はもうやめて、田舎に引きこもってスローライフを送りたいと切実に訴えた。


「スローライフならここですればいいんじゃないですか? なんでわざわざ田舎で?」


 サクラちゃんがそんなことを言い出した。確かに都会でもスローライフは出来ると思う。でも、文明が崩壊しそうな状況で都会にいるメリットはほとんどないような気がする。


 確かに物資はたくさんあるけど、いつまでも続かないし、ほかの生存者たちと取り合いになる可能性は高い。そうすれば命の危険だってあるし、物資はすぐに底をつくだろう。田舎で自給自足の生活をしたほうがいい。


「都会だって小さいながらも畑がありますし、自給自足できると思いますけどね?」


 サクラちゃん、ぐいぐいツッコミを入れるね。


「確かにそうかもしれないけど、生存者も多いんだから危険だと思うけどな」


「ゾンビを操れる上に殺し屋のくせに何言ってんですか。ほぼ無敵じゃないですか。ゾンビをけしかけてくる相手を襲うなんて馬鹿ですよ?」


「あー、えっと、それならインフラはどうかな? 都会で水も電気もなくなったら自給自足どころじゃないよね? 君達をマンションにおいて行くのは悪いとは思うけど、そこまでは面倒みきれないからぶっちゃけるけど」


 サクラちゃんが腕を組んで唸りだした。


「それなんですけど、ちょっと気になるんですよね。警察署で見つけたタブレットに書かれていた内容ですけど、あれって一部の人が生き残れる感じの計画なんですよね?」


「いきなり何の話? まあ、確かにそんな感じだったね。警察署の人は裏切られていたみたいだけど」


「それは別にどうでいいんですけど、一部の人しか生き残れないのに、水道とか電気が使えなくなる状況にしますかね?」


「えっと……?」


「計画自体はあの博士って人が変えちゃったみたいですけど、インフラが止まらないような対策をしてあったんじゃないでしょうか? インフラが止まったら生き残る予定の人たちだって危ないですよね?」


 そうなんだろうか? そもそも計画していた人達がどこにいるのかは知らないけど、シェルターみたいな場所でぬくぬくと生きている気がする。いや、あの博士ってやつが計画を台無しにしているなら、シェルター内の薬や食料も危ない気がするけど。


 もし計画通りだったとしてもシェルターなら百年くらい生きられそうな気がする。自家発電だって出来るだろうし、水のろ過装置とかもありそうだ。インフラが止まらないような対策なんてするかな? それにそもそもの問題がある。


「インフラが止まらない対策なんてあるかな? 電気も水道も詳しくないから分からないけど」


「技術者のゾンビにやらせればいいんですよ。そもそも労働力の確保のためにこの計画があったんですよね? だったらそれくらい出来るんじゃ?」


 確かにそれなら可能か? 人の手が入っていない電気や水道ってどれくらい持つのか知らないけど、確かにちょっと長すぎる気がする。すでに作業員のゾンビが色々とやってくれているのか?


 もちろん人だけじゃ無理だと思う。詳しくは知らないが、色々な資源を他国から輸入しなくては発電を恒久的に続けるのは不可能だろう。水道はメンテナンスとダムの操作とかで何とかなるのか?


「お姉ちゃん、どうしたの? なにか悪いもの食べた?」


「カリントウしか食べてないよ! 病院でもカリントウだけってどういうことかな!? 私もチョコ食べたい!」


「ねーねー、とりあえずセンジュのスローライフは置いといて、その農業系の大学に行かない? そこに食料があればいいけど、なければ他を探さないといけないし」


 マコトちゃんの提案はもっともなので、大学へ行くことになった。


 ここから20km程度の場所だ。そこそこ遠いけど、救急車があれば問題はないだろう。心配なのはガソリンかな。ガソリンスタンドとかあったら寄っていこう。


「マンションに残りたい人はいる?」


 聞いてみたが、全員で行くことになった。どうやら俺のそばが一番安全と言う認識がハッピートリガーの皆にも浸透しているようだ。でも、気になることもある。


「皆で行くのはいいんだけど、そのエアガンも持ってくのかい? ゾンビに襲われてもそれじゃ撃退できないよ?」


「相棒を置いていくなんて、出来るわけないじゃないですか!」


「ああ、うん。サクラちゃんがその銃を大事にしているのは分かったよ。まあ、ゾンビには効かないけど、生きている人間には効くかもしれないから必要だよね」


「人に向かって撃つわけないじゃないですか! そんな奴はサバイバルゲーマーの風上にも置けません!」


「君らってサバイバルゲームで何を撃ってるわけ? それに警察署の屋上から俺に向けて撃ったよね?」


 とりあえず、武装していない人を撃つのはご法度らしい。俺を撃った理由は自分たちに気づかなかったから。ちなみに撃ったのはサクラちゃんだ。意外といい腕をしている。


 そんなこんなで全員で救急車に乗り、大学を目指した。




「……あのさ、マコトちゃん、さっきからカーナビをいじって何してるの? 大体の場所は覚えたから別にいいけど、色々なコードが繋がっていて、すごく不安なんだけど」


「カーナビのバージョンアップ。私が作った人工知能も入れるつもり。そのうち自動運転とかできるようになると思う」


「ああ、そうなんだ……人工知能って作れるもんなんだっけ? というか自動運転っていま企業が頑張ってるやつだよね?」


「いまいいところだから後にして」


 後にしたら全部やり終わると思うんだけど。遠回しに止めようとしたんだが。


「あの、センジュさん」


 後ろの席、というか、寝台部分からモミジちゃんが話しかけてきた。


「なにかな?」


「できればでいいんですけど、もしどこかにブティックとか服を取り扱っている店があったら寄ってもらってもいいですか?」


「服? 服が欲しいの?」


「えっと、まあ、そんな感じです」


 こういうところは女性だな。こんな状況でも着る物にはこだわりたいということだろう。出かけるときは迷彩服のほうがいいと思うんだけど……ああ、マンションでの部屋着が欲しいのかな。


 でも、食料を持ち帰るなら出来るだけ余計なものは救急車に乗せたくないな。それでなくても今は十人もいて車の中は狭くなっている。ここに服をいれる余裕はないと思う。


「モミジちゃん、悪いけど、今回は食料を出来るだけ持ち帰りたい。服を持ち帰るのはまた今度にしてくれないかな? それにマンションにある服なら勝手に使っていいから適当に見繕って」


「あ、はい、そうですよね……」


「もう、モミジ、センジュさんはそういうのに気が回らないんだからちゃんと言わないと」


 なんだ? サクラちゃんがモミジちゃんにダメだししている? いや、俺にダメだししているのか?


「センジュさん、私達って下着の替えを持ってないんですよ。洗濯すると乾くまで外に出れない感じなのでローテーション用が欲しいんです!」


「……えっと、マンションにあるものじゃダメなのかな? 女性の部屋もたくさんあったと思うんだけど? 勝手に使っていいと思うよ?」


 バックミラー越しに後ろを見ると、モミジちゃんがちょっとモジモジしている。


「未開封の物ならともかく、ほかの人が使ったものはちょっと……センジュさんだって他人の下着を使うのは嫌ですよね?」


「……そうだね。ああ、うん、ごめんね、モミジちゃん。服を売っているような場所を見つけたら入ってみようか。どうせ食料だって全部は持ち帰れないんだし、何度か往復して持って来ればいいよね」


「こちらこそ、なんかすみません。私、お姉ちゃんみたいに羞恥をなくせないから、こういうことははっきり言えなくて」


「普通の女性がそれを口にするのは難しいと思うからいいんじゃないかな?」


「あれ? センジュさんもモミジも私のことをちょっとディスってない?」


「私ならセンジュさんの下着だってはけますよ!」


「エルちゃん、それって何のアピールなの? ハッキリ言ってサクラちゃんより酷いよ?」


 そんな楽しい会話をしながら大学を目指した。


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