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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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武器保管庫

2019.05.26 3話投稿(3/3)

 

 警察署に入り、入口を施錠してからハッピートリガーのリーダーらしい姉を正座させた。かれこれ10分ほど前だ。


「あの、私の足って豚足って言われるほどなんで、正座は結構つらいんですけど? あと、私にもチョコレートください。できればナッツ入りのやつを」


「ロリコンの疑いをかけられた俺のほうがつらいと思うんだけど? チョコレートじゃなくてカリントウでいい?」


 ハッピートリガーの人たちは姉を差し出した。妹さんが率先して。


 とりあえず姉は正座させたけど、ほかの人達には非常食用に持って来ていたチョコレートのお菓子を渡した。お腹は膨れないけど、結構なカロリーだからちょっとは元気になるだろう。


 妹さんは目に涙を浮かべながら頭を下げた。


「すみません、貴重な食糧を頂いちゃって」


「ああ、気にしないでいいよ。まともな食糧は少ないんだけど、お菓子なら多少はあるから……構わないよね、エルちゃん?」


「はい、もちろんです。ちゃんとルールも理解してくれましたから」


 何のルールなのかは知らないけど、姉と妹さんに色々話をしていたみたいだ。たぶん、俺に関するルールなんだろうけど、絶対に知りたくない。


 とりあえずじいさんにも連絡して許可は取った。この人達を病院に連れて行こう。その後の面倒はじいさんが見るだろうからな。


 それと一応自己紹介をしてもらった。


 姉のほうは、猪鹿咲良イノシカサクラ


 妹のほうは、猪鹿紅葉イノシカモミジ


 男達は鈴木、佐藤、山田、田中、マイケルだった。全員、同じ大学の学生だそうだ。


 なんでもサバイバルゲーム中に相手がなぜかゾンビ化して、ゲーム中の装備のまま逃げてきたとか。七人では心ともないので、同じサバイバルゲーマーの仲間を募ろうとネットに情報出すも、誰も来ないので食べ物を探しながら移動してきたらしい。


 そしてモデルガンではゾンビに勝てないが、本物の銃なら勝てるかもしれないと警察署まで来たが、銃器の保管庫と思わしきところは残念ながら電子ロックが掛かっていて、入れなかった。そうするうちに警察署をゾンビに囲まれて逃げられなかったとのことだ。


 皆のサクラちゃんを見る目が非難めいているが、何かあったのだろうか。


「えっと、センジュさん達はここへ何しに来たんですか? やっぱり銃器を取りに?」


「まあ、そうだね。それと非常食とかがあるかもしれないと思って来たんだけど」


「入れない部屋以外はほとんど見ましたけど、何にもありませんでしたね。仮眠室とかトイレ、シャワールームがあったのは助かりましたけど……でも、洗濯機がない……!」


 つまり、洗濯をしてないわけだ。してても水洗いだけだろう。でも、そういうのを男の前で言わないで欲しい。なんて答えたらいいか分からん。


 でも、電子ロックの扉か。


 マコトちゃんのほうを見ると、視線の意味に気づいたのか、ニヤリと笑った。


「もちろんやるよ。こんな機会はまたとないしね。最近はネットに繋がっていないところが多くて遠隔じゃ無理だけど、直接来たのならネットに繋がっている必要はないからね」


 そんなわけで、全員がその扉の前に移動した。一応サクラちゃんも正座から解放したけど、足がしびれているようで生まれたての小鹿みたいだった。




「ここかー、それじゃちょっと待ってね」


 マコトちゃんはまたパーカーの内側から色々取り出すと、電子ロックの扉にあるカードキーを差し込むような場所に色々な器具を取り付けて、タブレットを打ち込み始めた。


 なんだかすごいな。スパイ映画みたいだ。


 マコトちゃんの持っているタブレットに大量の英語が表示されている。プログラムなのか何なのかは分からないけど、なにかチェックをしているんだろう。そして数字が一つ一つ表示され始めた。もしかしてパスワードか何かを見つけているのだろうか?


 そして八桁の数字が決まった。


 マコトちゃんは取り付けた機材を丁寧に外してから何の変哲もないカードを取り出した。それをカードリーダーに通す。


 ピコン、と音がなった後、パネルについているボタンを軽快に押した。おそらくさっきの八桁だと思う。


 全部入れ終わると、カチャリ、と鍵が外れる音がした。そしてドアが少しだけ開く。


 マコトちゃんが振り返ると、ものすごいドヤ顔をしていた。


 そして俺以外の皆が拍手した。


「まあ、私にかかればこれくらい余裕だね。そもそもここでハッキングされるのを想定していないようだったから、結構セキュリティは甘かったよ」


 確かに警察署まで入ってくるハッカーはいないかも。24時間だれかがいる訳だしここまで来るのに物理的なセキュリティを突破しないといけないだろうからな。


「おーし、それじゃ入ってみよう! 銃は私が一番に撃つ!」


「お姉ちゃん、待ちなさい! こういうのはセンジュさん達から――お姉ちゃん!」


「え? きゃあ!」


 モミジちゃんがサクラちゃんを止めようとしたしたときに、ドアの向こうから手が出てきてサクラちゃんの手を掴んだ。


 人? いや、ゾンビか!?


「止まれ!」


 俺がそう言ったと同時にエルちゃんのバットがゾンビにさく裂した。バットを振るというよりは、ドアの隙間から突いた感じで、ゾンビをドアの向こうに追い返したようだ。


 ゾンビもサクラちゃんから手を離したようだ


「大丈夫ですか!?」


「うわ、びっくりした。もしかして中にゾンビがいた?」


 びっくりしたと言っている割には落ち着いているな。というよりも、あんまりよく分かってない?


「お姉ちゃん、引っかかれてない!? もし引っかかれていたら私がとどめを刺してあげるから安心して!」


「いや、大丈夫。腕を掴まれただけ。ほら、迷彩服は結構いい物を着てるから簡単に切れたりはしないよ――なんでちょっと残念そうなのか言ってみろ」


「冗談だよ、冗談。でも、よかったー」


 確かに良かった。それにエルちゃんの反応も良かった。俺が命令を出す前に動けていたから、俺の命令が遅れてもサクラちゃんは無事だっただろう。


「エルちゃん、助かったよ」


「上手くいって良かったです。でも、センジュさんの命令のほうが早かったので意味はなかったかもしれませんね」


「そんなことはないさ。相手に命令が聞こえなかった可能性だってある。物理的に離すほうが間違いないからね」


 そう言うと、エルちゃんはちょっと照れだした。


 でも、本当に良かった。なんというか、エルちゃんは俺と自分以外は見捨てる感じがあったからな。ついさっき会ったばかりの人でも助けようとしたのは、俺にとって結構な収穫だ。ぜひともこの調子でいて欲しい。


 っと、その前に中を調べるか。


「みんな、ドアから下がってくれ。俺が中を調べてみる」


 どういう理由でゾンビが中にいたのか分からないからな。もしかしたらたくさんいるかもしれない。それに今のゾンビは警察の制服を着ていなかったか? ちらっとしか見ていないが、なんとなくそう思った。


 ドアの隙間から中を見る。


 ……四体、五体……ずいぶんいるな。そして全員が警察官の制服を着ている。ここは武器保管庫じゃないのか? それを証明するようなプレートがドアについているわけないから実際のところは分からない。でも、この厳重さから考えても重要な場所だとは思うんだが。


 とりあえず、部屋の中にいるゾンビたちに命令した。大人しくしろ、と、人を襲うな、の二つだ。


「もう大丈夫だけど、皆はここで待っててくれ。いざとなったら扉を閉めてロックするんだ。エルちゃん、マコトちゃん、よろしく頼むよ」


「センジュさんは大丈夫なんですか?」


 エルちゃんが心配そうに俺を見ている。


「もちろん大丈夫。すぐに戻ってくるから皆のことを頼むよ」


 エルちゃんやマコトちゃんを残しても問題はないだろう。ハッピートリガーの人たちは何となくだが悪い奴らじゃなさそうだし、エルちゃんには勝てないだろうからな。


 さて、入ってみますかね。


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