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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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年の功

2019.05.05 3話投稿(2/3)

 

 マコトちゃんの紹介も終わったので、その流れで病院に行こうとしたら、三人に止められた。やっぱりバレたか。でも、なんでマコトちゃんまで俺を止めるのだろうか。


「えっと、マコトちゃんはここにいるんでしょ? なんで止めるのかな? 俺はこれから二人を説得しないといけないから、手間を増やさないで欲しいんだけど?」


 マコトちゃんは右手の人差し指で、ちょっとこっちへ来て、というようなジェスチャーをした。


 仕方ないので、一緒に台所のほうへ行く。


「で、何かな? そもそもなんでマコトちゃんは記念病院に一緒に行こうとするの? ここのほうが安全だよ?」


「センジュがいないと、あっちのエルって人に殺されると思うんだよね」


「誰が?」


「私。理由は知らないけど。せめてエルは連れて行って。二人っきりになったら絶対にヤバい」


 ああ、なるほど。そうかもしれない。理由は何となくだけど分かる。でも俺ってこんな若い子と付き合おうとするような男に見えるのだろうか。ちょっとエルちゃんに問いただしたい。


 ……それにしても問題が増えていくな。もう何もかも忘れて田舎に行きたい。というか、ゾンビパンデミックが起きる前よりも大変になっているような気がする。


 とりあえず部屋に戻ろう。長い時間二人っきりでいたりしたらマコトちゃんが危ない。もしかしたら俺も危ないかも。


 二人で部屋に戻ると、室内の温度がちょっと下がっている気がした。エルちゃんの目が殺し屋の目だ。視線だけで人が殺せそう。エルちゃんには殺し屋の素質がある気がしてきた。


「お二人で内緒話ですか。私に聞かせられないお話ですか? あれですか? OLが給湯室で上司の悪口を言うようなあれですか? 飲み物に雑巾汁を絞るんですか?」


 声が氷点下。普段の明るいエルちゃんの声じゃない。怖いんだけど。殺し屋を怖がらせる声ってどういうこと? もしかしてエルちゃんはヤンデレタイプなのかな? 家に包丁がなくてよかった。


 おっといけない。まずは言い訳だ。


「えっと、マコトちゃんがエルちゃんだけは連れて行ってあげてって言ってくれたんだよね。俺が一人だけだと危ないからって」


 ニュアンスは違うがそういう話だったから間違ってはいない。マコトちゃんも、高速でうんうんと頷いている。


「そんな話ならここで言えば良かったんじゃないですか? なんで台所に? 逢引ですか?」


 疑いが晴れていない。嘘はついていないけど、本当のことも言っていないからな。というか、逢引って。


 ……そろそろ面倒になってきた。それにおやっさんのことが心配だ。ここでラブコメみたいなことをしているわけにはいかない。仕方ないから色々なことは自己責任にしてもらおう。それにエルちゃんを説得できる言い訳が思いつかない。色々とうやむやにしてしまわないとヤバい気がする。


「もう本当に時間がないから、全員で行くことにしよう。ただ、ついてくるならすべて自己責任だ。俺が助けるなんてことは期待しないように」


「私は留守番してるよ。足手まといだし」


「それじゃ、マコトちゃんは留守番ということで」


 俺としてもその方がありがたい。面倒ごとは極力排除だ。


「新参者をここに残していくのはどうかと思うがのう?」


 じいさんが久々にしゃべったと思ったらそんなことを言い出した。言われてみればそうなんだけど、俺からしたらじいさんも似たようなものなんだけど?


「それに良くは知らんがハッカーなんじゃろ? なら連れて行った方が良いかもしれん。記念病院では電子制御しているところが多いので、マコトの嬢ちゃんなら色々と役に立つと思うがの?」


「そういうのなら役に立つとは思うけど、戦力として考えられたら困るかな? 大体、なんで記念病院に行くのさ? それにそのゾンビのことも教えてもらってないんだけど?」


「さすがに時間がヤバい。そういうのは移動しながら教えるから、出発の準備をしてくれ」


 あれから一時間は経ってる。病院まで歩いて30分程度だから、これくらいなら問題ないとは思うが出来るだけ早く行きたい。おやっさん、大丈夫だよな?




 マンションを出て歩き出す。三人とゾンビたちも一緒だ。


 とりあえず、ゾンビたちに三人の護衛をお願いした。ひとりに3体。計9体のゾンビが一緒に歩いている。とはいえ、見た目はゾンビに見えない。ちょっと疲れた普通の人だ。


「へー、適合者ってゾンビに命令できるんだ? すごいね、初めて知ったよ」


「そう、センジュさんはすごいんだよ!」


 いつの間にかエルちゃんとマコトちゃんが普通に話をしている。良く分からないが、俺を抜かした三人が話し合いをしたら、すべてが丸く収まったらしい。


 今までの時間を返せ。


 どうもじいさんが色々と話をしたようだが、一体何を話したのやら。


 俺が見つめているのに気付いたのか、じいさんが笑い出した。


「あの二人が普通になったのが気になるのか? 年の功というやつじゃよ。こういうのは本音で話したほうがすんなり解決するもんじゃ」


「本音で話すのに、俺を除外した理由は?」


「お主が原因だからじゃ。いや、元凶かの? そこは外しておくべきじゃろう?」


 元凶ってひどい言われようだ。


「こういうのはハッキリしておくべきじゃぞ。期待を持たせるのが悪いとは言わんが、ありもしない期待を持たせるのはいかん」


「何となく意味は分かるけど、そもそも何も進展してないのにハッキリさせるのはおかしくないか? それにハッキリしたとたんに刺されそうなんだが?」


「刺されそうということはその気持ちに決まっておるのか。ならそう言ってやるべきじゃな。うむ、青春じゃのう」


 ゾンビがあふれていて青春も何もないと思うけどな。でも、どうなんだろう。俺が世界を救わずに田舎へ行くと言ったらエルちゃんはどう思うだろうか。すでに何度か言っている気はするけど、殺し屋ってバレる前の話だ。


 エルちゃんは自分を助けてくれた殺し屋、つまり俺を救いたかったから世界を救おうとしていた気がする。その俺が無事だと分かったのなら、世界を救う必要なんてないと思っているかもしれない。


 最近は「世界を救いましょう!」という言葉も聞いていないし、もう考えていないのかもしれないな。そして俺が田舎に行くならついてくる気だろうか。


 一度、ちゃんとエルちゃんと話をしたほうがいいな。じいさんの話じゃないが、本音で話せば色々と解決できるだろう。そうしないとバットエンドを迎えそうだし。虐殺エンドとかありそう。


「センジュさん、あれですか、アスクレピオス記念病院って? 病気は気合で治していたから病院に行ったことないんですよね」


「それって笑うところかな? え? 本当なの?」


 どうやら着いたようだ。予約はしているから正面入り口から正々堂々入ろうか。でも、皆はどうしたものかな。


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