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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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アスクレピオス

2019.04.28 3話投稿(2/3)

 

 食後に三人でまったりしていると、じいさんが「さて」と言い出した。


「お主達はこれからどうするんじゃ? 今日の午後のことではなく、これから、のことじゃ。そろそろ一週間経つ。食料はまだあるとはいえ、減る一方じゃぞ?」


「俺とエルちゃんだけだったなら、もっと余裕があったんだけどな?」


「まあそう言うでない。年寄はいたわってくれ。手の治療もしてやったのだから正当な報酬じゃぞ」


 それはその通りなんだが、俺の部屋で俺よりも偉そうにしているのはなぜだろうか。自分の部屋があるんだから戻っていればいいのに。そもそも、これからのことなんてほとんど考えていない。


 物資を見つけにショッピングモールへ行きたいとは思ってる。だが、それには車が必要だ。おやっさんが車をくれるとか言ってたけど連絡はない。こっちから催促したほうがいいのだろうか。


 そうだ、エルちゃんのことをおやっさんにお願いしする予定だった。ついでにこのじいさんも一緒にお願いしよう。なら、おやっさんのところへ行ってみるか。


「俺はこれからアイアンボルトへ行ってこようかなって思ってる」


「アイアンボルト……? ああ、車の改造をするところじゃな。車でも頼んであるのか?」


「まあ、そんな感じだ。車があればショッピングモールへ行って物資を取ってこれるし」


「それでしたら私も行きます!」


 エルちゃんが手を上げて参加を表明した。


 一応、顔見せは必要か? エルちゃんをおやっさんにお願いしたいし、男たちの反応も見たい。怪しい感じがしたら預けないほうがいいからな……ゾンビの護衛を付けてあげれば大丈夫だとは思うけど。


「それなら一緒に行こうか。向こうにもエルちゃんを紹介しておきたいからね」


「なら儂は留守番をしておこう。センジュのおかげでゾンビが協力的だからな。研究がはかどるというものよ」


「死んでいるとはいえ、敬意は払ってくれよ? 人道的じゃない行為をしたら本気で追い出すからな?」


「当然じゃ。儂をあの若造と一緒にするでない。それに変な命令をすると襲って来る可能性があるのじゃろう? そんな真似はせん」


 ちょっと怒らせてしまったようだが、若造って誰のことだ? 病院にいる医者のだれかのことだろうか。


 まあいい。まずはおやっさんへ連絡しておこう。いきなり行っても居そうだけど礼儀は大事だ。


 スマホを取り出して電話帳からおやっさんの番号を選択する。


 ……おかしいな、なかなか出ない。まさかとは思うがゾンビにやられたわけじゃないだろうな?


 そう思った瞬間に電話がつながった。


「おやっさんか? 忙しいところ悪かった――」


「アンタがドラゴンファングを壊滅させた男か?」


「――なんだって?」


 スマホから知らない男の声が聞こえた。しかも俺がドラゴンファングを壊滅させたことを知っている? もしかしておやっさんたちが裏切った? いや、状況は分からないうちはとぼけておこう。


「何の話をしてるんだい? そもそもアンタこそ誰だ? それはおやっさんのスマホだろう?」


「名乗るほどの者じゃない。そうだな、アスクレピオスの関係者だと思ってくれればいい」


「それなら俺も名乗る必要はないかな。一応ソロ活動している男とだけ言っておくよ」


 しかし、アスクレピオスか……ここにいるじいさんと同じ病院関係だな。一応、ソロで活動していると嘘をついたが、どうなることやら。


「名前はいい。教えて欲しいのはお前が適合者かどうかだけだ」


「いや? 俺は違うけど? それよりもおやっさんを出してくれないか? 話があるんだけど」


「このスマホの持ち主は電話に出られない」


「理由は?」


「しゃべれる状況じゃないから、とだけ言っておこう」


 この野郎。まさか殺していないだろうな?


「生きてるんだろうな?」


「さあ? しゃべれないから生きているかどうかも分からないな。寝ているだけかもしれん。そんなことよりも、だ。俺が知りたいのは、お前が適合者かどうかということだけだ」


「違うといっただろう?」


「そうか。ならお前にも、そしてこの男にも用はない」


「待て。なんでそうなる?」


「いう必要はないが教えてやろう。俺は適合者を探している。ドラゴンファングを壊滅させた奴が怪しいと睨んでいるが、その男がアイアンボルトから来たと言っていたらしい。なので、この男と話をさせてもらったんだが、何も知らないと言っている」


 くそ、俺のせいか。俺があの時アイアンボルトから来たと言ったのがどこからかバレたのだろう。もう一人いた門番の奴か?


 でも、そうか、おやっさんは俺のことは何も言わなかったのか。直接は何も言わなかったが、俺がドラゴンファングへ行ったことは何となく予想は付いたはずだ。


 おやっさんたちに借りを作ってしまったな。


「そしてここ数日で連絡があったのはお前だけだ。お前も適合者じゃないと言うなら、これ以上は意味がないと判断して、この男には用がなくなる、ということさ。さて、どうする? もう一度だけ聞いてやろう、お前は適合者か? どっちでもいいが、しっかり考えて答えたほうがいいぞ?」


 しくじったな。こんな形でおやっさんたちに迷惑が掛かるとは思わなかった。


 なら俺が何とかしないといけないな。借りもあるし返しておかないと。だが、確認しておきたいことがある。


「その前に聞かせろ。おやっさん達は生きているんだろうな?」


「お前が質問できる立場だと思っているのか?」


「……いいだろう。俺は適合者だ。俺に会いたければ、おやっさん達が生きていることが条件だ。死んでいたり、瀕死の重傷だったりしたら、アスクレピオスも壊滅させるぞ?」


 スマホの向こうで笑い声が聞こえた。


「それは怖いな。俺がいる以上、無理だとは思うがいいだろう。アイアンボルトの連中はアスクレピオスが責任を持って治療しようじゃないか。俺は医者じゃないが、ある程度の顔が利くから安心しろ」


「分かった。で、俺はどうすればいい?」


「アスクレピオス記念病院に来い。お前の名前は? それで予約受付してやる」


「センジュだ。八卦千住ハッケセンジュ


「センジュだな。出来るだけ早く来るんだな。あまり遅いとこの男達に余計な傷が増えるかもしれないぞ?」


「分かった。すぐにいこう」


 そう言って通話を切った。


 大きくため息をつくと、エルちゃんが心配そうに俺を見つめた。そしてじいさんも難しい顔をしている。俺の言葉しか聞こえなかったと思うが、何となく不穏な空気を感じ取ったのだろう。


 二人に話をしておくか。そして急いで準備をして向かわないとな。


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