第五話 異世界の王女様~!?
ネルのレベルが25になると、第二職業が追加された。
ルシフはネルのステータスの変更と勇者の封印を解く事にした。
封印は《リリース/解除》で問題なく解けた。
しかし、実はこれ、ルシフの様にステータスを見てステータスの封印に《リリース/解除》をかける必要がある為、実質ルシフ以外には使える人がいないのだ。元々、《リリース/解除》は剣や鎧の呪いを呪いのかかっている部分に触って解除するためである。
名前:ネル
レベル:25
種族:人間 年齢:15歳
第一職業:騎士 第二職業:勇者
【体力】356+200【魔力】426+200【筋力】246+200+100
【耐久力】183+200+200【魔力耐性】192+200+200【敏捷】167+200
【エクストラスキル】
表示:なし
非表示:【聖剣エクスカリバー召喚】
【サブスキル】
表示:【家事Lv1】【鑑定Lv1】【投擲術:Lv2】【剣術:Lv4】【体術:Lv2】【身体強化:Lv2】
【魔力制御:Lv2】
非表示:【光魔法:Lv3】【隷属花嫁:ルシフ】
【称号】
表示:【騎士:Lv1】【暗殺者:Lv1】
非表示:【勇者:Lv1】
ルシフはネルに封印を解いた事、職業を追加した事を話した。
そして、封印は解いたがエクストラスキルはネルに教えていない。ネルは
「お兄さん、なんか力が湧いてくる。」
「勇者補正によりステータス全てに+200されているからだよ。じゃあ、ここを出て『貿易都市ロジステ』に向かおう。」
「ん。わかった。」
それから、ネルと共に『貿易都市ロジステ』に向けて歩みを進めた。
街道沿いを進んでいくと10日かかる為、ショートカットするため東に向かって森を抜け川を《フライ/飛行》で飛び越えまた森を通りあと少しで北への街道と言うところまで1日で着いた。《フライ/飛行》は10分しか持たない為、使い勝手が悪かった。『ヴァルバラ』では戦闘時に使用するものだった為、10分しかもたないようだ。明日の昼には『貿易都市ロジステ』まで行けそうであった。なにより、ネルもレベルが上がった事でかなりのスピードで付いて来られるようになっていた。また、ここまでモンスターに出合ったが今までと変わらないモンスターしか出なかった。
「ネル、街道では目立つからこの森の端で今日は休むぞ」
「ん。わかった。」
ルシフは、《ディメンションコテージ》を取り出し100程魔力を込めた。
「何回見てもこれが家って凄いね。お兄さん。」
「そうだね。」
「今日はだいぶ歩いたから、よく休むんだぞ。」
「ん。僕、今日はオムライス食べたいな。」
「好きなもん食って良いぞ。」
「やったー」
そう言って二人は《ディメンションコテージ》に入り休んだ。
--------------------ブランシュ王国 一室
片方の壁側には高そうな調度品が並びもう片側の壁には本がびっしりと並ぶブランシュ王国の一室。真ん中には大理石でできているのではと思うほどの高価なテーブルとフカフカそうなソファーがある。そこには、青髪の目がつり目で眼光が強い男と少し長めの茶髪男でダンディという言葉が似合いそうな髭の男が顎鬚に手を置いて話し始めた。
「王女は『貿易都市ロジステ』に向けて出発したか?」
「はい。公爵様。やはり、冒険者に頼むようです。」
「では、予定通り刺客は用意できたか?」
「はい。50人ほど盗賊を用意いたしました。」
「このまま行けば、『ボルク砦』の先の街道で殺れると思います。」
「よくやった。成功した暁には伯爵に陞爵しよう」
「は!ありがたき幸せ。」
--------------------ブランシュ王国 王女視点
メルト・ブランシュ国王・クリュス・ブランシュ王女は謁見の間にて報告を受けている。
「メルト王。『ペルン村』が消滅しました。」
「な!なに?」
メルト王は少し焦っていた。あそこの村は非戦闘地域のはず。3国で睨みを利かせているからこそ開拓民が住み着き魔物を各国に行かないようにしていたはずでは。
「『ボルク砦』からの報告によりますと、4日前に黒煙が上がり2日前に行ったところ全て燃えてなくなっていたとの事です。」
「そうであるならば、一刻を争う。国境付近の警備を強化しろ。魔物に紛れて帝国、法国が何か仕掛けてくるかもしれん。」
「国王様。あと、もう一つ報告があります。『貿易都市ロジステ』の冒険者に魔物討伐を頼むのはどうでしょうか?」
「しかし、密約により直接王族の者が行かなければなぬしな、今は国境を強化しているし・・・。」
「お父様。私が行ってまいりましょう。」
「おぉ、クリュス、行ってくれるか?」
「はい。行ってまいりましょう。」
こうして、王女は公爵の罠ともしらず、『貿易都市ロジステ』に向けて出発した。
馬で『ボルク砦』まで2日、そこから『貿易都市ロジステ』まで1日の旅である。『ボルク砦』に着くと、替えの馬が用意されており、すぐに乗り込んだ。王女も疲れていたが、早く行かなければ甚大な被害につながりかねない。その思いだけが王女を動かしていた。
そして20騎の馬と、1台の馬車はかなりのスピードで街道を走っていく。
ちょうど、『ボルク砦』と『貿易都市ロジステ』の間あたりで4人組の冒険者風の男たちを見た。男たちは街道を封鎖するように立っていた。
「どけー!退かないと引くぞ!」
「あー!いてー!お腹がいてー!」
と叫んで道の真ん中に倒れている為、少し距離を取り馬の足を止めた。
先頭の兵士が様子を見に行くと、
「頂き!死ねー!」
と言って、兵士の首筋にナイフを刺した。
「ぎゃぁぁ!」
と、兵士が叫ぶと周囲の街路樹とその横にある休憩小屋から50人近い盗賊が現れた。
19騎の騎馬兵は50人の盗賊と戦う為、半分は馬車を守る為に馬を降り、半分は騎馬で盗賊に向かっていた。
交戦が始まって10分位した後、兵士は次々と殺され始めた。2日の行軍と、2倍以上の敵により押され始めたのだ。兵士長は王女の馬車の御者に隙を見て逃げろと伝えたが、周りを囲まれておりそれもできなかった。王女は馬車のなかで震えていた。一緒に乗っていた侍女は
「王女様の命は必ず私が守ります。しっかりしてください。」
と言い、震える手でナイフを握りしめていた。
「・・・。」
王女は絶望していた。窓の外を見るとこちらの兵士は3人のみ。相手はまだ25人いる。
「あ!」
と王女が言うと、最後の兵士が倒された。
そして、盗賊たちが近づいてくる。
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「ネル。昼には出発するぞ。」
「ん。」
ルシフとネルは、昨日の夜遅くまで魔力制御の練習をかなり遅くまでやっていた。
その為、朝一で出発するはずが、昼になってしまったのである。
「いいか?そろそろ行くぞ!」
「ん。大丈夫。」
ルシフたちは森を抜け、街道に入った。
《サーチ/探索》を唱えた。すると、赤い点と灰色の点と黄色い点が1km先に写った。
「なんか、誰かが囲まれているな~。見に行くか。」
ルシフはそう言うと、ネルをお姫様抱っこして《フライ/飛行》を使って飛び上がった。
「うわぁぁぁ。お兄さん、いきなりやめてよ。はずかしいよ・・・。」
「でも、走って行ったらバレちゃうだろう?嫌だったか?」
「ん。嫌じゃないよ。」
ネルは少し恥らいながらルシフの首に手をまわしてしっかり摑まった。
少し飛んでいると、兵士と立派な馬車が盗賊に襲われているのが見えた。
「なんか、貴族っぽいな・・・。どうしよう?助けるのやめておくか?」
「お兄さん。でも馬車に乗ってるの女の人っぽいよ?」
「マジか・・・。じゃあ、盗賊は嫌いだし、助けた後そのまま逃げるか。」
「お兄さんに任せるよ。」
「じゃあ、馬車の前に降りるからネルは馬車を守ってくれるか?」
「ん。了解」
ルシフは盗賊の前に降り立った。
盗賊は急に目の前に女性が抱き着いている男が現れたため、動きが止まってしまった。
我に返った盗賊の頭らしき人物が
「おめえら、殺っちまえ!男は殺せ!女は捕まえろ!」
と言って襲って来た。
ルシフは、《パーフェクトプロテクション/完全防壁》をネルと馬車にかけ
「ネル。たぶん、大丈夫だと思うけど一応注意してね。」
「ん。わかった。」
そう言うと馬車の扉を開けて
「もう少しだけ我慢してください。今助けますので」
「・・・。」
王女たちは何が起きているのかわからず絶句しているがネルは扉を閉めて注意を払っていた。
ルシフは盗賊に向かって歩いていくと剣を抜き三人同時に掛かってきた盗賊を一振りで真っ二つにした。
「「「「「な!」」」」」
一斉に盗賊が目の前で起こったことに理解が追い付かなかった。
しかし、盗賊の頭らしき人物が
「相手は一人だ!全員で掛かれ!」
盗賊達はルシフの周りを囲んだ。しかし、ルシフは
「さっきので実力差もわからないのか?まぁ、いいか。じゃあ、行くよ!」
ルシフはそう言うと、あっという間に盗賊23人の首を刎ね飛ばし、盗賊の頭の首を手刀で叩き気絶させた。その後、盗賊の頭を縛り上げて
「ふぅ。ネル。終わったぞ。」
「ん。お兄さん。お疲れ」
「じゃあ、行くか?」
「ん」
そう言って、ルシフは『貿易都市ロジステ』に向けて行こうとしていた。
「少し、お待ちになってくれますか?」
馬車から金髪の美女が降りてきてそう言った。
ルシフは心の中で(面倒に巻き込まれそうだな~。)と思いながら立ち止まり
「はい。なんでしょうか?少し、急いでおりますので・・・。」
金髪の美女は少し震えながらも
「ご助力、ありがとうございます。この後、どちらに行かれるのでしょう?」
「これから、『貿易都市ロジステ』に向かう予定です」
「まぁ、それでは一緒に連れて行ってもらう事は可能でしょうか?」
「まぁ、向かい方向が同じなら良いですよ」
「そうですか。では、馬車のほうに来ていただけますか?」
「わかりました。ネル。いいか?それで?」
「僕はお兄さんに着いていくだけだよ。」
ルシフとネルは金髪美女と侍女が乗っている馬車に乗り込んだ。
盗賊の頭は馬車の外の後部に縛り上げている。
王女と侍女の対面にネルとルシフが座った。
「ありがとうございます。改めて、私は《ブランシュ王国》第一王女クリュス・ブランシュです。このたびは誠にありがとうございます。こっちは、侍女のマーサです。」
「お・王女様!?やべっ。僕は、ルシフ。こっちはネルです。」
ルシフはこの時思った。(逃げ出したい・・・。)と。
しかし、この後ルシフの思いは砕かれる。
「ルシフ様はお強いのですね。何をしている方でしょうか?貴族でしょうか?」
「いいえ。貴族ではありません。」
「では、『貿易都市ロジステ』にはどのような用件で参られるのでしょうか?」
「あー。狩った魔物を売るのと少々冒険者ギルドに興味があるので行ってみようと思っています。」
「そうですか。冒険者ギルドには私も参りますので一緒に同行願いませんか?」
「あ・はい」
「宿屋の方はもう決まっておりますか?」
「いいえ。初めて行く場所ですので・・・。」
「では、私と一緒に来ていただければ、泊まる場所も用意いたしましょう」
「いいえ。大丈夫です。適当に致しますので・・・。」
「そ・うですか。しかし、今回の件を含め一度王都に来ていただかなければと思っておりますが。それまで、護衛として雇われていただけませんか?全てこちらで手配させていただきますので。」
「はぁ↘王都ですか?ご勘弁願いたいのですが・・・。無理なんですよね?」
しかし、王女は意を決したようにルシフに言った。
「はい。今回の事、盗賊の頭を無力化し捕えた腕前。このまま、はいそうですか。と言う訳には参りません。王族としてきちんとした報酬を用意いたします。お願いします。ネル様もお願いできないでしょうか?」
「ふぇ。私は・・・えっと・・・様付は・・・」
「ふぅ。わかりました。王都までの護衛含め全て承りましょう。そのかわり、2つ約束願えますか?」
「伺います。」
「1つは、護衛が終わるまでこれを身に着けていてください。絶対に外さないでください。」
そう言うと、ルシフの手にはネックレスがあった。
「これは?」
「はい。これは、王女様を守るネックレスです。王女様は魔力ありますよね?」
「ええ。もちろん。」
「では、ネックレスを首にかけて握って魔力を流してみてください」
「わかりました」
そう言うと、王女はネックレスを首にかけ握り魔力を少し流した。すると、見えないが薄い膜が王女に付くのがわかった。これは、ルシフが《エンチャント/付与》を使って試しに作ったものだ。もう一つ効果があるがそれはまたの機会に。
「こ・これは?」
「これは、私が作った《プロテクション/防壁》の効果のあるネックレスです。魔力を流している間は効果が持続します。せっかくの護衛任務ですが私と王女様では身分の違いから離れ離れになる事もあると思います。その時にこのネックレスで身を守っていただければ良いかと思いまして用意しました。」
「こんな高価な物・・・。お借りしてもよろしいのでしょか?下手をすると国宝級ですが・・・。」
「はい。構いません。」
「ありがとうございます。」
そう言って王女は顔を赤くしながら少し伏せた。
「2つ目ですが、我々の事はあまり詮索しないで頂きたい。王都へ行ってもお願いします。」
「もちろんです。王女の名に懸けて。しかし、今回の事件については申し訳ありませんが国王の前で話していただく必要があります。」
「わかりました。それで、お願いいたします。」
話が終わったところで、『貿易都市ロジステ』が見えてきた。