第二話 異世界発~ヒロイン?登場~
ネルがルシフの隣で寝ている。寝顔がかわいい。
それはいい。どうして、こうなっているかと言うと・・・。
森でネルを助けた後、ネルが
「村の様子を見に行きたい。行って良いですか?」
と聞かれたので
「暇だから、付いて行ってやろうか?」
「いいの?」
上目使いでネルに言われた。
スッゲーかわいいー。なんて思っていたらこっちをジト目で見てきたので
「も、もちろん」
「じゃあ、お願いします。」
と言う訳で、兵士の死体を埋めて村に行ってみた。
村に着くと、そこは地獄のような光景だった。
ネルは、呆然と立ち尽くしていて時折、気持ち悪くなっていた。
「どうする?このままにしておくとどうなるんだ?」
「このまま、うっぷ、しておくとアンデット化して、うっぷ、大変なことになる。一つの場所に集めて燃やすしかない・・・。」
「そっか。じゃあ、全てを焼き払おう。いい?」
「そんな事・・・。うん。わかった。お願いします。」
ルシフは頷くと、≪ファイヤートルネード/火炎竜巻≫を唱えた。
村の四方に火柱ができ、中央に向かって広がっていき村を完全に焼き尽くした。
少し離れた場所から火が完全に消えるのをポロポロ涙を流していたネルと村を眺めていた。
徐々に落ち着きを取り戻したネルは自分の知っている事を話してくれた。
最初ネルの自己紹介があったが、その後は村に来た盗賊は何で来たかわからないと言う事。
逃げている最中、盗賊が勇者がどうとか言っていた事。
普通は村人を捕虜にしたり攫ったり、犯したりするらしいが、今回は全員を殺害することが目的だった事。
勇者は各地にいるらしく何人いるかは分からないらしい。この世界での勇者とは守り神だと伝えられている事。戦争を牽制する役割があり各地の貴族たちからは恐れられている事。勇者が死ぬと3年後に新たな勇者が生まれる事。
を話してくれた。
「この後、ネルはどうするんだ?」
「お兄さんと一緒に付いていく。僕はもうお兄さんの物だから」
「は?どうしてそうなる?」
「だって、助けてもらう時、何でもするって自分に誓ったから・・・。ダ・メ?」
頬を赤らめて上目使いでネルはそう言った。
やばい。超~かわいい。
「いいのか?もう、帰って来れないぞ。」
「もちろん。あの炎を見て思ったんだ。村の人に助けられたから頑張って生きようって。」
「わかった。とりあえず、今夜はここに泊まって明日からの事を考えよう」
「え?ここに泊まれる場所なんて無いよ」
「見ていろ。」
そう言うとルシフは≪ディメンションコテージ≫をアイテムボックスから取り出した。
≪ディメンションコテージ≫は、ゲームのアイテムで小さい箱だが地面に置いて魔力を流すと電話ボックス位の箱になり魔力を流した量分のレベル以下の敵に襲われないという優れものだ。今回は魔力を80程流して作ったのでLv80までの敵には襲われない。中は1LDKながら外から見るよりはるかに広い構造となっている。中に入ると短い廊下があり右には源泉かけ流しの3人は一緒に入れる風呂があり左には自動洗浄乾燥分解水洗トイレ、廊下の先の扉を開けると左後ろに小型のキッチン、左側に応接セット、右に8人は一緒に寝れるであろうキングサイズのベットと豪華な造りになっている。
(これ作るのにかなり課金したな~。お姫様を泊めるイベントだったっけな~。あのお姫様”ベッドは大きくなくてはなりません。”なんて言ってダブルベッドじゃ寝れないとか言いだして大変だったな~。)
「お兄さん、これ凄いね・・・。お兄さんって貴族?」
「うん?違うよ。とりあえず入ろうか」
「あ・はい」
ネルと一緒に中に入った。
ネルは中に入ると少し呆然としていた。
「ちょっと、座っていてくれ。お風呂掃除してくるから」
ネルはちょこんとソファーに軽く腰掛ける。
借りてきたというよりも、塒ねぐらから浚さらわれてきた小動物を思わせる雰囲気で、落ち着かなく周囲をきょときょとと見渡している。
座っているソファーは綺麗で、自分の服の汚れが付かないだろうかと心配してしまうほど。
ネルの15年の人生で始めてみたシャンデリアから降り注ぐ、松明でもランタンでも蝋燭でも無い魔法の光。置かれた調度品は深い趣のあるものばかりで、立派な家具という言葉の代名詞にもなりそうなものばかり。特にネルの前にドンと置かれた漆塗りのテーブルの重厚さ。価値の分からないネルでさえ、どれだけ高い物かぐらいは理解してしまう。そして下に引かれたカーペットを汚したりしたら怒られないだろうか。座ったまま軽く足を上げて、出来るだけ設置面を少なくするという努力をした方が良いのだろうか、そんなことを思ってしまうほどの柔らかさ。
ネルは緊張のあまりに倒れてしまいそうだった。
胃が痛くなるような緊張感が襲い掛かってくる。どこかに逃げ出したくもなる。
――そんな時、ドアが開いた。
「ひぅ!」
びくんと肩が竦み、それに反応し、大きく体を震わす。
「なんか飲んでればよかったのに」
「け、結構です!」
すさまじい速さで返答するネルに、呆気に取られたような表情をしてしまった。
「……あ、どうしたの?そうか。どこにあるかわかんないよな。」
「は、いえ、なんでもないですっ」
緊張しガチガチのネルの気持ちが伝わってきた。
ルシフは立ち上がると、キッチンに行き箱のボタンを押した。ドアが開くと中からはきれいなガラスのコップにオレンジ色の飲み物が入っていた。これは≪次元ドリンクバー≫という課金アイテムでランダムに色々なドリンクが出てくる。大抵はオレンジジュースなんだが・・・。それを2つもってテーブルに置き渡してくれた。
「おいしい」
「よかった。やっと落ち着いたみたいだね。」
「ありがとう。お兄さんは何者?」
「その話は別の機会に取っておこう。お互いによく知らないしね。」(本当は全て話したいけどどこかで別れたら情報が漏れるかもしれないからゴメンね)
「そうですね。きっと色々あるんでしょうね。こんな物持ってるぐらいだから。」
その後はネルと今後について話をした。
ネルは村から出たことがない。職業やスキル、魔法についても特に知らないと言う事。ここが、王国の国境付近である事。ここから北に10日進むと『貿易都市ロジステ』と言う大きな都市がある事。これらの事を聞いたルシフはネルをレベルアップさせる事。ネルを連れて『貿易都市ロジステ』に向かう事を決めた。
食事はキッチンにある《ワールドクックボックス/世界の料理機》を使い《オムライス》を二人で食べた。ネルは美味しいと言いながら食べていた。頬張る姿は小動物みたいで滅茶苦茶かわいかった。お風呂は別々に入ったが、ちょっとしたアクシデントもあった。ネルがお湯の使い方、シャワーの使い方、石鹸やシャンプー等の使い方を知らず入る前に色々聞こうとして裸になった後に気付いたようで、タオル姿で出てきた。所謂、テンプレって奴です。GJです。そして寝る時間が来たのでネルにベッド使って良いよと言ったがネルが
「お風呂はまだ恥ずかしいけど一緒に寝よう」
「まだって・・・。」
「恥ずかしい事言わせないでよ。お休み。」
と言ったので一緒に寝ることになった。ネルは疲れているようでベッドに入るとすぐ寝てしまった。ルシフはと言うとネルが寝た後、魔法の練習をしていた。決してネルを弄ってた訳ではないよ。ちょっと頬をツンツンしたけど・・・。
ネルが寝た後、となりでルシフは神眼を使って魔法の説明文を見ながら、この世界に来てわかった事とこれからの目標を立てた。
【分かった事】
・ゲームの『ヴァルハラ』と似ているが、ゲームではない事。(ゲームではNPCを殺したり出来なかったしNPCを仲間にできない為)
・ゲームの『ヴァルハラ』で勇者や魔王はいたが、全員男だったし封印なんてなかった。
・蘇生魔法が使えない。蘇生魔法のみ魔法の呪文が無い。(死んだら終わり?と言う事。)
・魔法にはこの世界のルールがあるようで、科学的要素で普通なら起こり得る事が魔法を使う事で無効化される。
【これからの目標】
・ネルを守る。ネルの封印を解く。
・この世界でネルのような子を保護する。
・ゲームのアイテムやお金になるべく頼らない。
・レベルを上げる。
・この世界を旅して色々確認する。
・ゲーム時代の設置アイテムの解放
・ほかのプレイヤーが居ないかの確認と居た場合の対処 仲間にするOR殺害OR放置
ネルの隣で添い寝しながらいくつか魔法も作る事にした。
一つ目は悪意や殺意を見抜く魔法≪マインドアイズ/心眼≫を創り、≪疾風の眼鏡≫に≪エンチャント/付与≫魔法で≪マインドアイズ/心眼≫を付けた。≪疾風の眼鏡≫→≪真実の眼鏡≫に名前が変わった。
二つ目は≪エンゲージブライト/隷属花嫁印≫を創った。この魔法を相手に使うと魔法を唱えた相手を裏切れなくなる。隷属花嫁のステータスを弄る事が出来る。本人が助けを求めた場合にルシフに居場所を伝える機能と本人を中心に《パーフェクトプロテクション/完全防護》《ヒール/回復》が自動で発動して身を守る機能。またパーティーを組んでいなくても全ての隷属花嫁に均等に経験値が分配される(ルシフは含まれない)。裏切ると相手の記憶からルシフの事がすべて消える。という優れものだ。これは、今後、裏切られた場合の秘密の拡散を防ぐためと料理人やメイド、モフモフ、商人などを仲間にした場合レベルを上げられないと困るので付けた。
二つ目はさすがに魔力が8000位かかったので力尽き床に就いた。ネルを横目に見ながら・・・。
そして長かったが冒頭の話になる。