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女男恋愛  作者: アキラ
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第1章5話 修学旅行当日④

時間はどれほど経ったのだろう。

この暗闇の中ではそれを知る術はなく、この空間の中で俺の命も

潰えていくのかもしれない。という馬鹿げた考えさえ浮かんできた。

しかし、死の直前に際した人間に見えると言われる

走馬灯を俺はまだ見ていない。

だから、死にそうになっている。というわけではなさそうで、

そのことが俺に妙な安心感を与えていた。


考えながら、その暗闇の中をさまよっていると、

ほんのわずかではあったが光の筋のようなものが見えた。

俺は最期の希望を掴むかのごとく、その光の筋を辿った。


光の大きさはどんどんと大きくなっていた。

それと呼応するかのように見知った声が聞こえてきた。


「おい!!遥!!起きろよ!起きろって言ってんだろ!!」

この声は大和の声だ。

心底、心配していることを伺えるその声が耳に届いた瞬間、

俺は走り出していた。


「はるくん、もう夕方よ。大和もこの通り

心配しているんだから起きてきなよ」

次に聞こえてきたのは明日香の声だった。

明日香は大和のような叫び声のような呼び方ではないものの、

確かな心配の色が滲んでいる。

俺は全ての力を振り絞って、その光へと走った。

こんなにも俺のことを心配してくれる親友と幼馴染に囲まれて俺は幸せだ。


しかし、あと1歩で光の中へ入れるところまで来た時に、ふと気づく。

(あれ?唯の声は聞こえてこなかったよな)

そう、俺が好きで仕方がない彼女の唯の声だけが聞こえてこないのだ。


いくら待っても唯の声だけは聞こえてこなかった。

聞こえてくるのは大和と明日香二人だけの声で、

本当に求めている声は一向に聞こえてこない。

どうして?という疑問が浮かんだが、きっと今はそこにいないんだ。

と結論付けることにした。

そう考えないと、俺はこの暗闇の中から出ることはできないのだから・・・。



そして俺の足先を光の中へ入れた。

その瞬間。パ~っと明るい光に俺の体は包まれた。



「遥ぁ!!起きてくれよぉ!!なぁ??」

滅多なことでは涙を流さない大和が涙を流しながら、俺を呼ぶ声が聞こえた。


「うるさいよ。大和。ほんと、心配しすぎだ」

俺は意識を取り戻した瞳にしっかりと大和を写しながら、そう声をかけた。


「え、は、はるか!!!」

すぐに俺が意識を取り戻したことに気付いた大和は、

涙を目に溜めながら抱きついてきた。

熱い抱擁だった。男同士でこんなことをする

羽目になるだなんて思っていなかった。

それくらいにぎゅ~っと抱きしめられた。

俺の心の奥底に未だ感じたことのない感情が生まれたが、

その感情が何なのか分からなかった。


ただ最初はその熱い抱擁にも全然抵抗はなかったのだが、

なぜか胸のあたりが押しつぶされているように痛くなってきて、

早く離してほしいと思ってしまう。


数秒後こんな痛みを感じたことのない俺は

ついに我慢の限界を迎えてしまった。

あれだけ自分のことを心配してくれた人間にする行為で

ないことは重々承知していたが、

背に腹は代えられない痛みになったため抑えが効かなった


「痛いから離してよ!!」

思い切り大和のことを突き飛ばしてしまった。


しかし、そんな事よりも俺は今自分が咄嗟に

言ってしまった言葉に困惑していた。

そしてそれはその場にいた大和と明日香も同じだったのか、

二人して俺を見て驚いている。

まあ、大和に関しては突き飛ばされたショックも大きく影響しているだろうが。


(離してよ・・・。って本当に俺が言ってしまったのか。

そんな女の子みたいな表現が咄嗟に出てしまったというのか。え、どうしてだ)

俺は今まで、離してよなんて言う表現を使ったことがなかった。

いつもは「離せよ」だったり何も言わずに振りほどくだけだった。

そんな俺が「離してよ!!」なんてこと、言うはずがなかった。

しかし、二人の反応を見る限り、

俺がその言葉を発してしまったのは確かなことのようだ。


というか、

「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

俺はおもむろに発声練習をするときのように声を出してみた。

その声は鈴のような高い音で、澄んだ音色を部屋の中に置いていった。



さっき大和を突き飛ばしてしまった時の自分の声に確かな違和感があった

(俺の声ってこんな女の子みたいに高い声だったか?)という。

それは勘違いだと思っていた。もしくは気絶していたから頭がおかしくなって、

声が高く聞こえるようになってしまったのかもと思った。


だから俺は立証してみることにした

さっきのあれでも俺の中ではかなり低い声を出したはずだった。

にも関わらず、俺の口から出てきた声は

おおよそ低い声とは言えない高い声だったのだ。


瞬間、俺の脳裏に変な考えが浮かんだ。

(俺、もしかして女になっているんじゃ・・・。)


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