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女男恋愛  作者: アキラ
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第1章第2話 修学旅行当日①

食事も食べ終わり、理沙の声援も受け、俺は明日の準備へと戻った。

理沙の「頑張れ」のたった一言で俺は何倍も頑張れ、

準備もすぐに終わるかに見えた。

しかし思いの外、準備に手間取ってしまい、

結局部屋に戻ってきたから3時間もの時間を費やして、

やっと準備を終えることができたのだった。


そして準備につかれたのに加えて、

明日の朝は早く起きなくてはいけなかったため、

俺はそのままベットに潜り込み、数秒もかからないうちに眠りに落ちていった。


これがこの体で眠る最後の夜だとも知らずに・・・


翌朝、俺が玄関で靴を履いていると後ろから声がかかった。

「はるか。忘れものはない?気を付けていきなさいよ。

着いてからも安全確認は怠らずに。変な人について行っちゃだめよ」

「そうだぞ。はるか。お前少し抜けてるところがあるからな。

気を付けないといけないぞ」

声の主は両親で、心配してくれているのは分かった。

しかしその言い方はまるで小学生の遠足の時のようで、

少しだけムッとしてしまった。

「わかってるよ。というか俺もそんなに子供じゃないんだから、

その言い方はひどくない?」

「まあ、それもそうね。それじゃあ。いってらっしゃい。」


そうして俺は旅行鞄を肩に下げ、ドアを開けようとした時だった。

「待って待って!!お兄ちゃん!!ちょっと待って~」

焦りながら階段をまるで落ちるかのように降りてくる理沙の姿があった。

「理沙、まだ時間は大丈夫だからゆっくりでいいよ」

落ちて怪我をされては困るので、俺は降りてくる理沙に対して言葉を投げかけた。

そして落ちることなく、

玄関先まで出てきた理沙はあからさまに手を握りしめていた。

「お兄ちゃん、手を出して」

「え!?あ、ああ。これでいいか?」

俺が不思議に思いながら、理沙に対して手を差し出すと、

理沙の握っていた方の手がその上に置かれ、

パッと手を開き俺の手のひらに何かを落としていった。


俺は何を置いたのだろうと期待して、理沙の手が離れていった後の手のひらを見た。

すると、そこには虹色のミサンガがあったのだ。

「えへへ、それを私の代わりだと思って持って行ってくれると嬉しいな。

昨日の夜にお兄ちゃんのために作ったの」

理沙は花が咲いたような笑顔で、こちらを見ながらミサンガの説明をしてくれた。

しかし、俺は気づいてしまった。理沙の目元にくまがあることに。

おそらく、昨日の夜に一生懸命、あまり寝ずに作ってくれたのだろう。

そう確信に至った俺は理沙に対する愛おしさが

頂点に達し、理沙を思い切り抱きしめた。

「ありがとう。理沙。お土産楽しみにしておいてくれよ」

理沙は俺の想わぬ行動に驚いていたものの、すぐに笑顔になると、頷いた。

「うん!!楽しみにしてるね。だから気をつけて帰ってきてね♪」

「おう!じゃあ、父さん、母さん、理沙、行ってくるよ」

そして俺は理沙の背中に回していた手を下ろし、

そのまま体をドアの方向へと向け、家を出るのだった。


扉が閉まっていく寸前まで、理沙は手を振っていた。


空港に着き、指定されていた待ち合わせ場所へと進んでいると、

見知った声が聞こえてきた。

「はるかぁ。こっちこっち~!!」

声のする方向に視線を動かすと、

そこには彼女の唯がぴょんぴょんと可愛らしく飛び跳ねながら、

俺に対して手を振っているのが見えた。

(本当にかわいいな。唯の奴。

なんで俺の身の回りにはこれだけかわいい女の子ばかりが集まるんだ!?

妹も可愛い、彼女も可愛い。まさにハーレムだな~)

にやけそうになる自分の表情筋を必死に抑えつつも、

内心では唯のことを今すぐにでもこの胸に抱きしめて離したくない衝動にかられた。

しかし、そんなことをしてしまっては別れを切り出されるかもしれないと考えると、

妹の時と同様にクールな男子高校生を演じるのだった。


「ああ、唯か。おはよう。」

自分の奥底にある挨拶とは全く逆な自然な挨拶をすると、

唯は微笑みを浮かべてくれた。

「うん!おはよぉ~。はるかくん」

俺たちの周囲だけまるで違う空間のように思っていると、後ろから肩を叩かれた。

「よ!はるか。おはよー!!また今日も唯ちゃんといちゃついて、ずるいぞ」

後ろに立っていたのは友達の大和で、

挨拶に加えて僻みを抱えた一言を発していた。

「はは、いいだろ?お前にもいつかできるはずだぞ。」

少し上から目線でそんなことを言うが、大和は全然応えていない様子だった。

「まあ、俺には彼女はいらねぇよ。

彼女なんてできちまったらお前のことをからかって遊ぶ時間も無くなりそうじゃん。

それにしても、結構お前遅かったんだなぁ。お前が最後だぞ~」

聞き捨てならないことを言われたものの、

いつものことなので突っ込みを入れることはせずに、

最後だぞ~という言葉に引っ掛かりを覚えていた。


「あれ?でも明日香がまだなんじゃないか?見当たらないけど」

辺りを見回しても幼馴染であり親友の明日香の姿が

どこにも見当たらないことを確認した上で、

大和の間違いを訂正するべく声を上げるのだった。


「あ~。明日香ならトイレだよ。トイレ。それもおっきい方の」

しかし大和は笑みを浮かべながら至極当然なことを

言わんばかりの口調で明日香の居場所を教えた。

(こいつにはデリカシーというものがないのか。それもこんな大きな声で。

大和はこういう性格だから彼女とかできないんだろうな。

顔も割とかっこいい方なのに、もったいない)

そんな風に大和のことを考えていると、

唯が明日香がトイレから出てきたたことを教えてくれた。

俺は挨拶しようと明日香の方を向くが、どう見ても怒っていることが分かった。


そして明日香は大和のことを発見したかのように大和をじっと見ている。

次の瞬間、明日香はこちらに向かって全速力で走ってきて・・・

俺が唖然としている間に大和の背中にドロップキックをする明日香。

「聞こえてんのよ!!この馬鹿大和!!」

そのまま怒り心頭の明日香は倒れ込んでいる大和の腹をけり続けた。

「はは。痛いって。明日香ぁ。あははは」

しかし大和にはこれまた効いていないのか、ケラケラと笑っている。


暴力を振るいながら怒る明日香と暴力を受けながら笑う大和を見ていると、

こいつら本当に仲いいよなぁという想いと共に笑いが込み上げてきた。

「あはは、お前らなんかコントしてるみたいだぞ。ほんと面白いなぁ」


その笑いは先生が点呼を取るまで、収まることはなかった。


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