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価値の定義  作者: 歌多琴
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 どうして彼を選んだのか、結婚した直後も疑問だったのだが、それが今の私の心情を構成する原料だったのかもしれない。

 彼は見た目通り、職業通り、真面目だった。単なる真面目ならいいのだが、有り体に言えば、彼は仕事人間だった。

 それを結婚数ヶ月で悟った私は、こんな子でも仕事を第一に考えるのだなぁという驚きにも似た感心を持った。

 無論仕事しかしない、といった人間ではない。家族を顧みず仕事しかしない、とった人間ではない。

 それでもどこか私に興味がないのではないか。そう思ってしまったとき、私の不満は急速に膨らむのであった。

 私でなくとも良い。ただのステータスとして私を伴侶に選んだのではないか。そう思ってしまった。


 もちろん表立ってそんな姿を私に見せる彼ではなかった。

 私の作る料理は美味しいと言って食べてくれるし、休日なんかは家事も手伝ってくれる。私の性的な欲求にももちろん答えてくれた。

 ではなぜ私は彼に不満を持ってしまうのだろう。今挙げた数点の理由からは、何も問題がないように思えてならない。

 これを友人に話したら、「今はそういう風に考えてしまう時期なんじゃない?」と納得できるようで、どの時期でも当てはまるようなことをアドバイスしてくれたものだ。

 が、それからまた数ヶ月その生活を続けてみて、私は思い至った。

 彼は私に興味がないわけではない。だから不満が膨れても今まで爆発しなかったのだろう。

 しかし私に一番興味があるわけでもなかったのだ。

 彼はお金に一番興味があるのだ。

 そう気がついてしまったとき、私は居ても立ってもいられなくなった。彼の二番目に対する満面の笑みが、どうしても耐えられなかった。


 身勝手だろう。自己陶酔の極みだろう。

 それでも私は逃げ出した。いや、逃げ出すようになった。

 しかし結婚からは逃げ出せなかった。

 だから私は度々夜の街へ繰り出すことが増えたのだ。

 疲れて帰ってくる彼を放って。私を寿退社させてくれた彼を放って。今では稼ぎのない私であり、街へ繰り出すのに握るお金は彼が稼いだものだと知っていてもなお、それでも夜の街へ繰り出すようになった。


 勘違いして欲しくないのは、別に誰かと戯れるために街へ趣いているわけではない。

 慣れてしまった夜の外出だが、一度としてそういう行為やお店に行ったことはない。

 一人でお酒を飲みに行くようになったというだけだ。だけだ、と言うとこれはもう私という人間の不誠実さがにじみ出てしまうようで嫌だったのだが、それでも事実だったので仕方がない。

 彼の本心から逃げるように、なんて可愛いことは言わない。

 私という女を妻にもらっておきながら、私をお金の次に置いた彼に対するただの文句のようなものだ。

 そしてそうするたびに、私はひどい女だと自己嫌悪してしまう。しかしその嫌悪感より、自己愛の方が大きかったのもまた事実なのだろう。

 そんな負のサイクルのような身勝手に終止符を打ってくれたのが、金の亡者をデフォルメしたような男性だった。


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