脚本用 競作 Stray Phone
脚本用です。
やっと出来上がりました。
こんな感じでお願いします。
―ごった返しになった居酒屋―
―客たちの会話。ざわつき過ぎて聞き取れないほど―
―接客する店員。やる気のあるもの、ないもの―
―乱暴にぶつかり合う食器、箸を落とす音など―
―乾杯の音頭―
―バックグラウンドノイズ 『ブラックパンサーとショットガン 前編部分』―
―ビールを喉に流し込む音 三回のど越し―
―煙草に火を点ける音(Zippoライター) 吸って吐く―
木下「いや、まったく笑える話だぜ。俺のダチがよ、まぁそいつが悪戯好きの悪ガキでよぉ、ヤクを上の連中から頼まれて売りさばいていたんだが……ある時そのヤクを、あるパーティーで吸っちまってさ、残りゼロ。アガリをどう収めようか、俺に泣きついてきやがったんだ。それで、俺がアドバイスしてやったんだ。なんていったと思う?」
―一口啜る―
小林「さぁ?」(つまみを頬張りながら)
木下「こう言ったんだ。『そこらの店で適当な葉っぱ買って来い。香辛料を適当に混ぜ合わせて、そこらの学生にでも売ってやれ』ってな。そしたらそいつ、まじでやりやがってよぉ、タイムやらオレガノやら買ってきて混ぜ合わせて、夜中に出歩いてる学生に『お友達料金』っつって一袋5000円で吹っ掛けたんだ。そうしたら、どうなったと思うよ?」(楽しそうに、明るく)
小林「(考えるように1.5秒唸る)……さぁ?」
木下「そしたら、その阿保学生が三日後、倍の量を買っていったんだ。しかもお友達料金ナシの法外な値段でな。もうウハウハよ。(テンションを少し落とす。ここから呆れた様に)それ以降、あいつぁガキに売る時は香辛料を渡してるらしい。まったく、健全なんだか違法なんだか」
―木下が手を叩く パンっとハッキリ―
木下「よし、与太はここまで。仕事の話だ、いいか? 俺は運転担当、お前は脅し担当だ」
―木下、上機嫌にほくそ笑む、ビールを飲み終わり、一息―
木下「店の下見はもう済ませてある。俺の言うとおりにやりゃぁ、今週分の上がりがすんなり手に入るぜ」
―小林の小さな唸り声、気になる様に疑問符を付けながら―
小林「質問なんだけど……なんでここを打ち合わせ場所に選んだ」
―口につまみを頬張り、噛む。普通に―
木下「こーいうヤバい話ってのは、騒がしい場所でするに限るんだよ。静かな場所ほど、誰かが聞き耳を立ててるもんさ。で、だ」
―パンっと手を叩く木下―
木下「(パッと早く)確認だ、(ここは遅く)時間は?」
小林「深夜二時(ハッキリと、早めに)」
木下「場所は?(ゆっくりと、相手を馬鹿にするように)」
小林「北沢二丁目(ハッキリと、早めに)」
木下「(すこし感心するように頷き)お前の役割」
小林「店員を脅して金を出させる(ハッキリと、早めに、前のセリフよりなるべく小さめの声で)」
木下「(強調するように)俺の役割は?(少々偉そうに)」
小林「(あんたが大将、といいたげな感じで)安全運転で西東京までドライブ(ハッキリと、早めに)」
―木下、上機嫌に笑いながら、小林の肩を優しく叩く―
木下「上出来、お前は天才だ(お手が出来た飼い犬に言う様に)」
―袋から携帯電話を二つ取り出す音―
木下「よし、小道具だ。懐かしのガラケーだぜ」
―机に乱暴に置く―
木下「これから、仕事の時はこれを使う。緊急時以外は使うなよ? 終わったら破壊して捨てろ」
小林「(懐かしいものを見た様に)ふぅ~ん、どこで手に入れた?」
木下「ツテでな。アシはつかないようにしてある。(強調、飼い犬に待てを言う感じ)万が一使うことになったら、俺の本名は口にするなよ? いいな!」
小林「(まだガラケーを見ているため、少し上の空な感じで)あぁ……」
木下「(待てができた犬に言う感じに)よし」
―酒を飲もうとするが空っぽに気付く。下品に啜り、舌打ち―
木下「(俺はお客様だ! という具合で偉そうに)おい! おかわりだ!! 何してやがる! つかえねぇ奴だな、おい!」
―机を乱暴に叩く音―
店員A「申し訳ございません! ご注文は?」
木下「同じのだ。それから……」
―フェード・アウト―
舞台が変わって真夜中の北沢五丁目
―虫の音―
―風、葉っぱが揺れる音―
―車が通る音―
―コンビニ自動ドアの反応音―
―自動ドア開閉音―
店員A「ありあとっざーしたー。(大あくび、人目を気にしない感じで)あぁ、はよ帰りたい(心の底から ベッドへ早くいきたい感じ)…ってか、だるい。ったく……ってかもうさ……勘弁して欲し、(変わり身早く、元気よく)いらっしゃいませー」
―かけっぱなしのエンジン音、会話の邪魔にならないように微かに―
―木下、下品に笑う―
木下「ここらは老人ホームくらいしかないからな。一ヵ月ほど下見して、この時間帯が一番だと判断した。(軽く伸びをし、唸る)今日は絶好の強盗日和だなぁ……」
―マスクを被る小林、言葉が籠る音―
小林「(軽く慌てた様に)前が見えない」
―マスクを弄る音―
小林「(光が見えて安堵する様に)お、見えた」
―小林の後頭部をはたく木下 ペしって効果音―
木下「(飼い犬に向かって)いいか、二分で終わらせろよ。最大で、二分だ。得物は?」
―包丁を取り出す音 シャキーンって効果音―
小林「これ?(なるべくすっ呆けた感じで)」
―慌てたように声を出す木下―
―小林の後頭部を殴る木下 ドカッという効果音―
木下「(大工の親方っぽく)危ねぇじゃないか馬鹿野郎!! (お手をできなかった飼い犬に対して)で?! お前の段取りをもう一度確認だ!」
小林「(俯き、しょんぼりするように)……うん」
―小林、いきなり機械的な説明口調―
小林「まず俺はこれから被り物を身に着けてコンビニに入店し、即座に店員に刃物を押し付ける。そこで「有り金全部だせ! 金庫の中身もだ! さっさとやらないと殺すぞ!」と、店員の手を軽く斬りつけ、自分が本気だと証明する」
―包丁で切り付ける音 シュバって音―
―店員の悲鳴 小指をぶつけ、回りに誰も人がおらず、遠慮しない感じ。そして女々しく―
―間髪入れず小林が説明を続ける―
小林「次に、二つのレジから有り金を全て、持参した袋に詰め、店員を脅しながらカウンター裏の金庫、さらに事務所の金庫の中身を全て袋に入れる。木下さんの下見通りなら、本日この店の金庫には売り上げ金三十万と店員への給料袋数人分が仕舞われているはずだ。これらを全て頂戴する。最後に金の袋を持ってこの車に戻り、西東京方面目掛けて安全運転のドライブへ出かける」
―疲れたようにため息を吐く小林―
―ワザとらしい拍手―
木下「(飼い犬を褒める、なるべく心を込めて)すごいぞ、お前は天才だ」
―乱暴にドアを開ける音―
木下「(フリスビーを取って来い! な感じ)よし、いけ!」
―小林の尻を蹴飛ばす音―
―また乱暴にドアを閉める音―
―木下、ほくそ笑む 悪の三段笑い―
木下「(笑いから流れるようにセリフ→)あぁ~トロイ奴だぜ。だが、計画通りいけば、金は全部俺のモノぉ♪(ウキウキワクワクな感じで)」
―懐をまさぐる音―
―シャキーンって音―
木下「(ワクワク継続中)ふふふ、この千枚通しで心臓を一突きすれば(ここでワクワクストップ)(教科書の内容を思い出す様に)……俺から見て胸の右側の……(自分を褒める様に、ほくそ笑む)よしよし、大丈夫だ。これから一ヵ月は贅沢に暮らせるな」
―車のドアが開く音―
―乗車する小林―
木下「……あ? もう終わったのか?」
小林「……え? さっき電話してきたじゃん。やめようってさ」
―不思議そうに唸る木下。次第に怒りに変わり、小林の胸倉を掴む―
木下「迷ったかテメェ!! 今回俺たちは何をしにここまで来た!! 言ってみろオラ!! 言ってみろ!!!」
―本気ではないが、小林の顔を何度か叩く―
小林「え? え? え? でもさっき……」
木下「んな電話かけてねぇってんだよ!! 次、間抜け面して手ぶらで戻ってきてみろ! ぶっ殺すからな! マジだ!!」
―再び車の外へ蹴り出す―
木下「いいな! ヘマしたらタダじゃおかないぞ!!!」
小林「わかったよ、わかった! わかった……」
―勢いよくドアを閉める―
木下「ったく、あの木偶の坊が……まぁいい、殺す事に変わりは……」
―着信音 なるべくシンプルな―
―驚く木下―
木下「(窓を破ってボールが入ってきた! 感じで)な! なんだよ!!」
―ポケットから取り出す、布のこすれる音―
―ガラケーを開く音、受話ボタンを押す音―
木下「(興奮気味で)どうした! 緊急以外でかけるなって……」
―電話越し、小林の半べそを掻いたような情けない声―
小林〔大変だよ木下ぁ! 店員の手を切ったら、血が止まんなくなっちまったよぉ!〕
木下「な……(走馬灯? 約2秒)……なんだってぇ?!(←ビックリ仰天な感じで)」
―言葉が詰まる木下―
木下「(大きく息を吸う、鼻息をマイクに一度当てる感じで)もう一度言ってみろ」
小林〔だからぁ、店員の手を切ったら、血が止まらなくなって、顔がどんどん白くなっていくんだ!! どうすりゃいいんだよ!!〕
木下「(今回最大の大声で、腹の底から)この馬鹿野郎!!(息を吸い、さらに大きく) ふざけるなぁ!!」
―目の前のハンドルを乱暴に殴る音―
―少し遅れてクラクションの音―
木下「(呆れかえり、もう一派くる怒りを抑えるように)マスク取ったのか…… 防犯カメラで撮られるぞ?」
―慌てたような鼻息―
小林〔知らないよ、そんな事!! あぁ、店員のスズキさんが……急いできてくれ!!〕
―再び殴る音―
木下「(抑えた怒りを解放する感じで でも怯み気味に)だ、誰が行くかよバカ!! (ちょびっと泣きそうになる感じ)俺は逃げるからな! (自分の中の正論をぶつける感じで)捕まるならテメェだけ捕まれ!!」
―ヒっと呻く小林―
―しばらくの間、小さな唸り声―
―鼻を啜る小林―
小林〔(半べそで)逃げたらお前の事、全部言うからな! (今までのいじめられっこが『先生に言うぞ!』と、言う感じで)警察に言うからな!!〕
―怒りに震える木下―
小林〔(ここら辺から徐々に別人ぽく)そうだ! 全部バラしてやる、覚悟しろよ! このチビ! グレムリン! ウンパルンパ!!〕
木下「(顔が真っ赤のイメージで、鼻から唸るイメージ)ぐぬぬぬ……(ぎりぎり聞こえるくらい小さく)この……(腹からの怒声)くそったれぇ!! 上等じゃねぇか!!」
―再び千枚通しを出す為、シャキーン―
木下「この役立たずのデカブツがぁ! ぶっ殺してやる!!!」
―乱暴なドアの開閉―
―いきり立ちながら走る木下―
木下「高校の頃からのパシリのクセしやがって! 飴と鞭で手なずけてやったのに噛みつくたぁ、いい度胸じゃねぇか!!」
小林「(完全に別人声で)そういう風に言うお前は、まるで虚勢をはる子犬みたいだぜ。はは、あーおかしい。や~い、ちびすけ、はやくここまでおいで~」
木下「なんか調子がおかしいな……いつもの小林じゃないぞ?!」
―自動ドアに軽くぶつかる音―
―反応音―
―自動ドア開く―
小林「(コンビニ内の小林、電話に向かって)でもでも、さっきはあんなに怒鳴ってたのに、なんでそんな優しい……ん?」
木下「誰に向かって上等こいてんだ、コラぁ!!!」
小林・店員スズキ「え?」
―足を踏み鳴らす音―
木下「こばやしぃぃぃ!!」
小林「え? なんの事? 木下さん! アレ? なんでここに来てるんです?!」
―動揺するような店員―
店員「えぇ~っとぉ」
木下「なに言ってやがる!!」
小林「木下さん、やはり強盗は悪いことだ、やめにしようって言ってたじゃないか! 今更遅いですよって言ったけど……(ここからブツブツと呟くように)あれ? あ、まだ電話から声がする」
―何かをブツブツと呟く小林 弱々しく、聞き取れないように―
木下「あ? 誰がそんな事言ったよぉ!! ……まさかこの携帯!!」
―遠くから鳴るパトカーのサイレン―
木下「あ、くそ!! どうなってやがるんだ!!」
―携帯と千枚通しを落とす音―
小林「諦めようよぉ、木下さん」
―出刃包丁と携帯を落とす音―
木下「うるせぇ! そもそも、え? どうなってやがるんだ!! (泣きそうに)あぁ畜生!!!!」
―機械のノイズ交じりに笑うふたりの声―
店員「ん? なんだ? ガラケーから声が……ぁ?」
―強調される機械ノイズと笑い声―
ガラケー二つ〔あぁチョロい奴らだった! ふふ、僕らって悪い子♪〕
おしまい
以上です。
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