◆人をペット扱いしないで下さい。
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『おい、タマ。リビングにおいてある封筒持ってこい。』
はい、みなさん。
いきなり何なんだと思ったら、それは正常です。
ええ、誰が何と言おうが正常ですよ。ふふふ。
と、意味不明な現実逃避に暮れている私は、ただ今タクシーの中で、悶々としている最中。
全く、アイツは何様のつもりなのだろうか。
聞けばきっとアイツはこう答えるだろう。
お前は居候で俺は家主。
(か~、ムカつく、ちょ~ムカつく。)
想像しただけでも腹が立ってくる。それなのにタクシーに乗って言う通りにあの人の勤める会社に向かっているのは、追い出されたらまたホームレスになるから。
それだけは嫌だ。嫌に決まってる。
「お客さん、着きましたよ。」
「領収書下さい。あ、名前は桐崎 夏琉で。」
そんな風にあれやこれやと考えている間に、タクシーは目的地に着いたようで、私はしっかりと領収書を切って貰い、タクシーから降り、聳え立つ会社を見上げた。
ふむ、ここがアイツの会社か。
何とも、入りがたい・・・。
いや、ここで怯んでいては・・・。と、思っていた所に携帯が鳴った。それに誰だと思いながらディスプレイを確認すれば、案の定【家主サマ】と表示されていた。
ここで出なければまた後で何かと言われるに違いないと、覚悟を決め携帯に出る。
「はいよ、なんですか。家主サマ。」
『遅い、今どこにいる。』
「せっかちは女の人にモテないよ?――もう会社の前にいるからロビーに降りてきてよ、ご主人様?」
私のこの言葉に何かごちゃごちゃと喚いた人を無視し、携帯を切り、ロビーに入ったところで、警備員に呼び止められた。
まぁ当然だよね。
こんな子供がこんな時間にふらふらしてるんだからさ。でもさー。
(警備員くらい、言っとけよ。)
どんだけ俺様なんだ。
自己中なんだ、アイツは。
私が警備員そっちのけであれこれ悪態ついていると、ロビーが俄にざわつき始めた。
なんだろうと、ざわつきの方に目をやれば、見た事のある人がアイツの横にいた。
その人も私に気付いたのか、軽く目を見開き。
「ちかちゃんっ!!久しぶり」
「ゆうーきさーーん!!」
例えるなら、感動の再会。
互いに笑顔で走り寄り、ハグを交わし、それから私は結城さんのお腹に痛烈なパンチを食らわせた。
結城さんは結城さんで、私の腹をパンチ。(結城さんは女であろうが、ライバルに容赦はしない。)
「真波泣かしてないでしょうね?」
「・・・、ノーコメント」
「殴るよ?」
にっこり笑いながらお互いにいがみ合う、私と、自分の部下を見ていられなかったのだろうか。
アイツは手を叩き、私の注意を自分に向け、私を呼んだ。
「タマ、言われた通り、持ってきたか?」
だから、その名前で呼ぶんじゃない!!
その後、私は当然ながら、奴に≪脛にローキック≫と言う報復をしてやったのだった。
結城さんは検索除外中の作品の登場人物です。