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恋のラスト・オーダー  作者: 篠宮 梢
5/23

◆買い物に行きますが?

更新。

 基本、私の作る朝食は軽め。それに、先日の夜から人様のお宅に厄介となっているのだから、朝からそんなに厚かましく大量に食べられないでしょ?。


 でもね?流石に何事にも限度ってものがあると思うワケ。


(宝の持ち腐れって、こんな時に使うんだっけ?)


 ほぼ空っぽの冷蔵庫(しかも最新式の省エネエコタイプの大容量収納タイプ。)を目の前にして、私は呆れてしまった。


 かろうじて冷蔵庫の中に入っていたのは、ミネラルウォータ―の2ℓが一本と、ギリギリ今日までが期限の茹でシラス、そして、パック売りの梅干し。その他にも何かないか、手あたり次第あちこち探してみたけど、海苔とお米、塩と調味料の類しか残っていなかった。 


(炊飯器が新品のままで、使われた形跡がないってことは・・・。)


 もしかして今時、古風にも土鍋でご飯を炊いていたのだろうか。

 でも、土鍋は食料を捜していた時には発見出来なかった。

 つまりは・・・。


 私は特大の溜息を一つ心の底から吐き、ヘアゴムで髪をポニーテールで一本にまとめ、腕まくりして発掘したお米を水で研ぎ、これまた発掘した新品ピカピカの炊飯器にセットし、冷蔵庫の前でまた唸った。


 私が見つけた食料は、調味料とおかか、梅干し、ゆでシラスと海苔。


 私の頭を悩ませなくても、これで作れるメニューは限定されている。

 だけどせめてもう一品作れないだろうか。


 最後の足掻きとばかりに、再びキッチン中を調べ尽くした結果、奇跡的に玄米茶が出てきた。


 仕方ないので今日はおにぎりとお茶だけで良しとしよう。


 炊き上がったご飯をボウルに移し、シラスと潰した梅干を入れて混ぜ、冷水で冷やした手で、ご飯が熱い内に手早く三角に結ぶ。

 

 きゅっ、きゅっ、と、久しぶりのお米を結ぶ感覚はなんだか懐かしい。


(おかか醤油も捨てがたいなぁ~。作ろうかなぁ~、でも食べれるかな?)


 最後に海苔を巻き、皿に盛ればおむすびの出来上がり。(でも最近では、おむすびもおにぎりと表記されているから、私もこれからはおにぎりで通そうと思う)


 作るか作らないかで迷ったおかかも作り、お湯を沸かして玄米茶を淹れた所で、家主様がのっそりと、寝起きだと言うのに疲れ切った表情で起きてきた。


 オッサン、改め、家主様である桐崎さんは、低血圧なのか、酷く顔色が悪かった。


(あ~あ、あれじゃあ近い内カゼひいちゃうかも。)


 そうなっては稼ぎが減り、桐崎さんがここにいる事になる。

 と言う事は、・・・。


 家主様倒れる⇒お見舞いと称し、カノジョ来る⇒私が出迎える⇒修羅場。


 高速で弾き出された未来予想図がリアル過ぎて、笑うに笑えない。


 

 私は何度も言うようだけど、事なかれ主義の生粋の現代っ子。


(ちっ、面倒な大人だな。)


 内心で舌打ちしながらも、ソファーに力なく座った家主様の前にあったローテーブルに、作りたて、淹れたての朝食セットを載せたお盆を置いたのは、この快適空間を確保し続ける為。


「これ食べて。で、私に軽く1・2万頂戴。」


 上から目線で言ってやれば、ぎろりと睨まれた。

 でも全然怖くないもんね。


「悪いが・・・、」


「ごちゃごちゃ言わないでさっさと頂戴よ。じゃなきゃ、買い物に行けないじゃん。私に飢え死にしろッての!?」


 空腹は私の最大の敵。


 私のこの剣幕に家主様は私が何のためにお金を要求したのか、ようやく理解してくれ、太っ腹な事に財布ごと私に預けてくれた。


 これであの冷蔵庫を満たせる。


「使いすぎるなよ、タマ。」




 ――太っ腹って思ったの、撤回しても良いですか?

 

頑張りました。

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