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恋のラスト・オーダー  作者: 篠宮 梢
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◆利用できるモノは他人でも使え

更新してみました。


 公園のベンチで寝るとハッキリ断言した私と、名前も知らないオッサンが、お互いに青い火花をパチパチと散しながら睨み合って早五分。


 先に根を上げたのは、心身ともに私より遥かに老いたオッサンだった。


 でもこれは当然の成行きだと思うのよね。

 だって、男は女の人より元々の脂肪分が少ないもんね。


「来い。宿を恵んでやる。」


 自分が飲み干した缶コーヒーと、私がまだちびちびと舐めるように飲んでいた缶コーヒーを無理矢理奪ったかと思いきや、それを躊躇いなく飲み干し、ゴミ箱に投げ入れた。


 な、なんなの、このオッサン。

 人が飲んだモノに口つけた!!


 信じられない、変態!!と、私が睨めば、オッサンは私を憐れむかのような目で、表情で、実に失礼な事を言った。


「自意識過剰と言われた事は無いか?俺はお前に女を求めるほど女には飢えては無い。」


 それはそれは可哀想なモノを見るかのように。

 それだけで私はムカついたのに、このオッサンは・・・。


「俺はただ宿を恵んでやると言っただけだ。言い換えれば住み込みの家政婦兼部屋の管理人だな。」


「中々いい人だね、オッサン」


 見ず知らずの孤児である私に、仕事と住む処を恵んでくれるなんて、なんて良い人なんだろう。

 ごめんね、さっきは変態なんて思ったりして。

 

 私がそんな思いと感謝の念でオッサンを見上げれば、オッサンは苦々しい顔になり、スーツの内ポケットから黒い何かを取り出し、一枚の小さな紙を私に突き出した。


 それを受け取り、見てみれば名刺だった。


 どうやら黒い物体は名刺入れだったらしい、とそれで判明する。


「桐崎 夏琉だ。」


 恐らく本人はこう言いたいのだろう。

 俺をオッサンと言うなと。


 何とも解り難くも、解りやすい人ではないか。


(まぁ、使えるものは親でも使えって言うしね?)


 本当に、昔の人は良い事を言う。


 

 私はベンチから鞄を持ち上げ、にょきっと手を伸ばし、オッサン改め、桐崎さんに握手を求めて手を伸ばした。


「天海 央子、15才。これからヨロシクお願いします!!」



 こうして私とこの人との奇妙な共同生活は始まったのだった。

ザ・ありがち万歳。

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