己の失態
大賢者の予言の後、王都は大混乱を極めていた。
国の上層部は見た目こそ落ち着いているものの、内心は穏やかではなかった。一同は大聖堂に集まり、大災害の瞬間に震えていた。
「リリアーナ聖女!結界と加護は、大丈夫なんだろうな!!」
「た、たぶん…」
「多分だと!?いい加減にしろ!!エメラルダ前聖女なら、確実に守ってくれたぞ!!そもそも、大聖堂の加護もこんなに弱くてどうする!!!!」
国の上層部から飛んでくるのは、どれもリリアーナを非難するもの。
リリアーナは思っていた。前聖女のエメラルダの力がおかしいのだ。あんなに桁違いの加護と比較されては、この世の誰も敵わない。彼女の結界も見たことがあるが、あんなにも精巧な造りをした結界なんて芸術の域だ。
しかしそれを言えるような場ではない。リリアーナが耐えていると、隣に座っていた王太子のアルフォンスが震えていることに気が付いた。
アルフォンスもまた思っていた。今更ながら、婚約破棄を言い渡した時の彼女の言葉の意味が分かったのだ。
__
「ご自身が望むものを手に入れるためとはいえ、国にとって最も重要な聖女に自由を与えるなど…。殿下も随分『可愛らしい』お方であると、そう再確認したまでです」
__
その言葉はきっと、リリアーナの聖女の力の弱さを見越してのものだったのだろう。エメラルダは見抜いていたのだ。リリアーナの力の限界を。そして、自分を捨てることが国の崩壊に繋がる選択であると。
聖女が王族と結婚する意味を、アルフォンスは今更ながら理解した。王族が目先の愛にうつつを抜かしてはいけなかった。王族という身分は、聖女を縛り付けておくための体のいい枷なのだ。
国を守っているのは王族ではない。
__聖女なのだ。聖女こそが、真の王だったのだ。
さらに、エメラルダは公務の手際も良かった。婚約者という立場であるにも関わらず、しっかりと仕事をこなしてくれた。リリアーナはどうだろう。右も左も分からなければ、誤字も酷いし、資料は見にくい。そのうえ仕事が遅いときた。
「エメラルダ前聖女は見つからないのか!!!」
国王が苛立ったように叫ぶ。しかし、大臣は平謝りをするばかり。
予言が出た日、国王陛下は直々にエメラルダの実家であるヴァインベルク邸を訪れた。エメラルダに謝罪し、何とか国を守ってもらうためである。
しかし、エメラルダは不在だった。行方を教えてもらうことも叶わず、現状に至っていた。
「失礼します!!!! 大災害が始まりました!!!!!」
兵士の叫び声。皆が席を立った時、地面が大きく揺れた。
人々は恐怖に震え、リリアーナの聖女の力に最後の望みを託した。しかし彼女の力は、この未曽有の災害の前ではあまりに無力だった。
アルフォンス王太子もまた、成す術もなく、ただ呆然と立ち尽くすばかりだった。
「どうしてだ……!どうしてこうなったんだ!!!!!」
崩れ始める聖堂から、皆が命からがら逃げ出した時だった。




