表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/18

精霊たちに愛されること

 食後の穏やかな陽光がリビングに差し込む中、4人は年季の入った魔導書を広げて向き会っていた。


「さて、せっかく行使者が揃ったんだ。僕たちの本質について、少し深い話をしようか」


 カシムが指先を軽く振ると、そこから数片の花びらが舞い落ち、テーブルの上に落ちた。それは本物の花ではなく、純粋な魔力の結晶が形を成したものだ。その証拠に香りが一切しない。


「僕たちは精霊たちから異名を貰う前に、それぞれの適正にあった魔力の形が与えられるんだ。僕の場合は『花びら』。ナディアは、」

「『雪の結晶』です」


 ナディアが静かに言葉を添える。彼女が掌を上に向けると、そこには音もなく、精巧な雪の結晶が浮かび上がった。ふわりと舞い上がった雪の結晶は、部屋に静かに降り注ぐ。それでも、不思議と冷たくない。むしろ、ほのかな温かさまで感じる。


「精霊から与えられた形は、そのまま精霊の姿となる。君たちと話す時、精霊はどんな姿になる?」


 エメラルダはカシムの言葉に不思議そうに小首をかしげる。


「それなら…私は『光の塊』です」

「俺は『泡』だな。精霊たちは割れない泡になる」


 2人の答えに、カシムは満足そうに笑う。


「古代魔術の行使者には、それぞれ固有の特性が与えられる。エメラルダ嬢、君は≪祝福の魔女≫としての『光の塊』。アルベルト、君は≪古代魔術の探狂者≫としての『泡』。これらは単なる演出ではなく、精霊たちが私たちを認識するための『刻印』のようなものなんだ」

「精霊、か……」


 アルベルトが自らの周りに浮かび上がった泡を指先で突く。泡はゆっくり揺れ、変わらず浮かぶ。


「そもそも精霊とは何なのか。僕たちの解釈ではね、精霊とは『古代魔術そのもの』なんだよ」


 カシムが真剣な表情で語り継ぐ。


「彼らは定まった形を持たない意志ある法則だ。彼らに愛され、その力を貸し与えられること。……それこそが行使者としての適性そのものなんだ」

「彼らが何を基準に選ぶかは、私たちにも分からないの。でも、善人だからとか、努力したからとか、そんな人間的な理由は通用しないわ」


 ナディアの言葉を、エメラルダが繋ぐ。


「才能だけ持っていても行使できない、ということですか?」


 エメラルダの言葉に、ナディアは頷いた。


「そうよ。数万人の魔術師が血を吐くような努力をしても届かない場所に、精霊に好かれただけの者が辿り着くことができる。残酷な話だけれど、それが古代魔術の真実よ。彼らの気まぐれに愛された者だけが、行使することを許される」

「……だから、古代魔術の行使者はごく稀な存在だったのか」


 アルベルトの言葉に、カシムがいたずらっぽく笑う。ナディアもまた、雪の結晶を消すと、エメラルダに向かって少しだけ柔らかい眼差しを向けた。


「どれだけ精霊の気まぐれだとしても、こうして同士と話ができるのはやはり楽しいわね」


 ナディアの言葉に、部屋の空気が軽くなる。

 互いの特性を認め合う4人の間には、理不尽なまでの才能を持つ者同士にしか分からない、静かな共鳴が流れていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ