085 / 私の再婚
その気もないのにたまたまいい男と結婚できました、なんていうのはフィクションの中だけの話だ。
読んでいた少女漫画を放り出して、私はスマホを手に取った。
私のような、見た目が中の下くらいの女は、見た目がいい女性にどうしても負けてしまうのだから、その分、しゃべりやボディーランゲージ、中身などで勝負しなくてはならない。
そんなことを考えながら、私は昨夜からちまちまとマッチングアプリのプロフィールを埋めていた。
いかに個性を出すか、けれども、いかに浮かないか、いかに魅力的に見えるか、いかに無難に思われるか。
そのあたりを頭の中で総合的に考えながら、プロフィールの文章を書いては消し、書いては消しを繰り返す。
「よし、出来上がり」
私は休日の午前中を丸々かけて、やっと完成させたプロフィールを、今度は二回、三回と何度も初めから読み返した。
「はじめまして」から始まって、マッチングアプリを始めたきっかけ、簡単な仕事の紹介、趣味の紹介、求める男性の条件をさらっと入れて。
そして、最後に「再婚になります。前の夫とは円満離婚です。希望があれば詳しいお話は会ってお話します。」と付け加えて。
一か月が経たないうちに、マッチする相手が5人も現れた。
5人とやり取りを重ねるうちに、一人、また一人と脱落していき、とうとう最後の「直人」という男ひとりだけになってしまった。
この人がダメでも、また募集をかけて待っていればいいや。
と、思っていたが、その後「直人」とは順調に会う機会を重ね、数回会った後にベッドインも済ませ体の相性を確かめることもし、一か月を過ぎる頃には、性格も肉体もすべてが合格基準を上回ることが判明した。
3月も上旬を過ぎ、もう春もそこまで来ている、そんなある日のこと、私は直人に呼び出された。
そろそろ、アレかな、と思った。
プロポーズである。
直人は、この日は分かりやすく緊張しており、今までで一番高いレストランを予約していてくれた。
「僕と、結婚してください」
と、型通りの文句が直人の口から吐き出され、それを快諾する形で私たちは成婚した。
振り返ってみれば、なんとスムーズにいったのだろう、と思う。
とうに三十を超えた私だけれど、まだまだ女として捨てたもんじゃないのかもな、とも思う。
直人は今夜、出張でいない。
他の男に抱かれながら、私はこの自分の浮気癖もいつかは直さなければな、と頭の隅でぼんやりと思っていた。




