084 / 居眠りやまい
僕は幼い頃から、よく眠る子供だった。
どれくらいよく眠るのかというと、夜21時に寝て朝7時に起きるというのに、それに加えて昼寝を2,3時間するというくらいだ。
両親はそんな僕を「寝る子は育つって言うから、孝はいいねえ」と、おおらかにとらえていてくれた。
中学生を経て、高校生となった。
ある日、中間試験の結果が返却されていた時のことだ。
「近藤 孝くん、100点」
自分の名前と点数が呼ばれ、「100点」という先生の声にクラス全員の視線が僕に集まった。
僕は非常に興奮した。
しかしその途端、がくっと手足の力が抜けてその場に倒れ込んでしまったのだ。
そんな僕を見て、友人などは「嬉しさのあまり脱力するって、本当にあるんだな。俺、初めて見たよ」と驚きとともに笑っていた。
僕もはじめは、そんなもんか、と思った。
しかし、そんなことが何度も繰り返され、僕は次第におそろしくなっていった。
あまりに頻繁に同じようなことが起こるので、僕は両親に相談して、なかば無理やりに町の精神科に診察に連れて行ってもらった。
僕は、様々な問診と検査の結果、
「ナルコレプシー」
と診断された。
「別名、『居眠り病』といって、日本では600人に一人と世界最高レベルに患者数の多い病気です」
と医師が説明する。
それを聞いて僕の後ろに座っていた両親は、
「なんだ、単なる居眠りか。じゃあ大丈夫だな」
などと安心していた。
そんな両親の反応に、当事者の僕はかなりムッとしたのを覚えている。
高校3年生になり、受験生となった僕は、一年間の予定表を作成して、受験勉強にとりかかった。
しかし最初からつまづいた。
どうしても、夜になると勝手に眠ってしまうのだ。
しかも眠ってからも深夜に何度も目が覚めて、眠ったかと思うと必ずといっていいほど悪夢を見るのだ。
これは辛かった。
両親に相談しても、「気合が足りないんじゃないか」の一言で済まされ、僕は孤独な闘いを強いられた。
泣きたい気持ちをおさえこんで、僕はとにかく勉強に励んだ。
結局、僕は限りある時間を有効活用してなんとか医学部へ進学し、無事国家試験に合格もして、睡眠障害を専門とする医師になった。
今も相変わらずナルコレプシーだけれど、良き理解者に囲まれ、それなりに幸せな日々を送っている。
かつての僕のような少年少女がいたら、きっと大丈夫だと、伝えたい。
今、そんな活動を、妻とともに行っている。




