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『キリトリセカイ』  作者: くさかはる@五十音


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067 / 帰化と永住権

「おめでとう、クロエ、これで君も日本人だね!」

恋人のルイが、たどたどしい日本語で、そう祝ってくれた。

今日、私は、ついに日本人になった。

つまり、帰化を果たしたのだ。

今、私は私立高校の語学教師をしているけれど、帰化したことで公務員になることができるようになった。

更に選挙権や、被選挙権も得られるようになった。

そして何と言っても、念願の日本のパスポートを手に入れることができるようになったのだ!


にやにやしている私の顔を、ルイがじっと見つめている。

「ルイは、帰化じゃなくて永住権なんだよね」

「うん、母国フランスを捨てることはできないよ」

そう、ややこしい話だが、帰化と永住権の取得はまったく異なる。

日本国籍を取得し日本人になることのできる「帰化」とは違い、永住権の取得は外国国籍のまま日本に住み続けられるというものなのだ。

永住権を取得している場合、外国人のままなので、公務員になることも選挙をすることもできない。

ルイはそちら側を選んだのだ。


「私だって、母国フランスを捨てたわけじゃないわ。ただ、日本国籍を取得して、今後日本人として生きていくという選択をしただけ。元フランス人としてね。それに、日本人になったって、フランス人の魂を忘れるわけじゃないわ」

「それはそうだね」

ルイはどことなく遠い目をしている。

「私たちの結婚のことが心配なの?」

「えっ?なんだって?」

ルイが目を真ん丸にする。

「だから、私たちの結婚について言っているの」

「クロエ……」

「私が考えていないとでも思ったの?」

ルイの目はどこかうるんでいるように見える。

「ごめんよ、僕からプロポーズすべきなのに気を遣わせてしまって」

ルイはすっかり居住まいを正し、借りてきた猫のようになっている。

「いいのよ。プロポーズは改めてしてもらえればいつでもいいわ」

「そうか、そう言ってもらえると僕も気が楽になるよ」

ルイの顔がそこにある。

私たちはこういうとき、自然と長い濃密なキスをして場をおさめる。


キスが終わると、ルイが言った。

「さてお姫様、お昼ご飯は何にいたしましょう」

料理人であるルイの手料理はいつも飛び上がるくらいにおいしい。

「いつものように、おまかせで」

二人の間で交わされる日本語の会話が、ネイティブにとってどれほど自然なのかは分からない。

ただ、今はこうしてルイと私を取り持つ日本語を、心から愛しいと思うのだった。


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