048 / 蟻のように
コンビニの脇の影になっている場所にしゃがんで、煙草を吸いながら唐揚げを食っていると、そこが自転車の駐輪場だったらしく、一台の自転車が横に止まった。
自転車から降りようとしている兄ちゃんの顔に、俺の吐いたばかりの煙がかかる。
兄ちゃんは一瞬眉を寄せたが、俺と目を合わせようとはせず、自転車を置くと小走りに立ち去って行った。
満腹になったので、しばらくその場でぼーっとしていると、ぽつぽつと、雨が降ってきた。
俺は食後の煙草を楽しんでいる最中だったが、雨粒が煙草に当たって湿気てしまう前にと、急いで吸い終えた。
フードをかぶって立ち上がると、唐揚げのゴミの入ったレジ袋を、コンビニの中のゴミ箱に捨てて、俺はその場を後にした。
視線を落とし、自分の数歩前の地面を眺めながら歩いていると、白い粒がアスファルトの上を跳ねだして、あられ交じりの雨となった。
今日はどうりで朝から寒かったはずだ。
あらかじめ天気が悪くなることは分かっていたから、現場の仕事は今日はお休みで、狭い部屋に縮こまっているよりはマシだろうと外へ出てはみたが、これ以上雨風にさらされると濡れネズミになってしまう。
傘はどうせ壊れるか盗まれるかするので持たない主義だが、ジャンパーのフード一枚でしのげる雨の程度は知れている。
早いところ、どこか、屋根のある場所に入らないと――。
辺りをきょろきょろ見回しながら、この辺りの地図を脳内におこし、雨宿りできそうな場所に見当をつける。
ただでさえガラの悪そうな見た目だ、監視カメラがある場所は避けたい。
それに、数日風呂にも入っていないので、人気のある場所も避けたい。
結果的に、県庁近くにある大きな公園の東屋に逃げ込んだ。
しばらく軒先から滴り落ちる雨粒を、見るともなく見ていたが、ふと、東屋の内に目を転じると、建物の片隅の方で蟻たちが列をなしているのに気づいた。
せわしなくひっきりなしに動いている蟻たちを見ていると、この社会で歯車として働いている自分自身が思い起こされた。
蟻に母はいるのか。妻や恋人はいるのか。いやたしか、蟻は一匹の女王蟻から生まれるのだっけ。じゃあ個別の蟻に妻や恋人もいないのだろう。
なんだ、俺と同じじゃないか。
俺も、母子家庭に育ち、離婚して今は妻も子供もいない独り身だ。
蟻みたいに生きれたら、楽なんだろうか。
そんなことを思いながら、俺はいつまでも東屋の内で雨が降るのを眺めていた。




