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『キリトリセカイ』  作者: くさかはる@五十音


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037 / 私の音


私は耳が聞こえない。


これは生まれつきなのだけれど、生まれつきだからこそ、私は音を知らずに生きてきた。

多くの人に聞こえている「音」ってどんなだろう。

音楽に合わせて踊っている人を見ると、独特のリズムがあるのが分かる。

けれど健常者の妹によると、音楽の持つリズムと、人がしゃべっている時のリズムは種類が違うということだ。

ふうん。

どうせ聞こえないから興味ないけど。

私が障碍者だとわかると、人は困った顔をする。

扱いに困るのだろう。

それまでしゃべっていた口を閉じ、スマホでのコミュニケーションをはかろうとする人もいた。

それはそれで親切だとは思うけれど、スムーズでなくてもよいなら私はしゃべれる。

ただ耳が聞こえないだけで、声は出るのだ。

私は普通に接してほしいだけなのに。

でもそれも無理な話だ。

多くの人が当たり前のように使っている声を、私は拾えないのだから。

そうして私はひきこもるようになった。

それが10代の頃のこと。

しかし転機が訪れる。

20歳になった頃、今の夫と出会ったのだ。

夫も、耳が聞こえない。

私たちは地域の手話サークルで出会った。

お互い耳が聞こえないものだから、手話での会話など、健常者の人より相手のペースが読みやすい。

それで、何度か交流を重ね、デートを重ね、逢瀬を重ねていき、昨年、結婚に至った。

私と夫に子供はいない。

二人で話し合い、持つことをあきらめたのだ。

私は何度も泣いた。

悔しかった。

そのたびに夫がなぐさめてくれた。

そのおかげで、今この年になるまで夫とはラブラブである。

私たちの世界に音はないけれど、それでも世界は鮮やかに語りかける。

せめてその色を、振動を、思い切り感じて生きていこうと思う。


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