表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『キリトリセカイ』  作者: くさかはる@五十音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/74

021 / ダンサーを夢見て


壁一面に大きな姿見が埋め込まれたスタジオの隅で、カナはひとり振付の同じ個所を練習をしていた。

スタジオでは、今流行りの『漫画インク』という曲が流れている。

今日は1時間も早く来たので、カナの他には誰もいない。

東北の片田舎にあって、ダンスを習うことが出来るのはこの地域にこの教室しかなく、カナは小学生の頃から親の勧めで通っていた。

そのせいか、カナは誰よりダンスがうまかった。

母はいつかプロのダンサーになってよ、などと言う。

まんざらでもないカナは、「えー、なれるかなぁ。競争、すごいんだよ」と返すのだった。


高校卒業とともに、カナは上京した。

経済的な理由から大学へは行かず、東京でアルバイトをしながらプロのダンサーを目指すことにしたのだ。

しかし、カナはすぐに壁にぶちあたった。

地方では一番実力のあるカナだったが、東京ではカナ以上にダンスのうまい子たちが沢山いたのだ。

自分は井の中の蛙だったのだと、身をもって知った。

ちょうどその頃、同じダンススタジオの講師と恋に落ちた。

デートの回数が増え、練習の回数は減っていった。

それから一年後、カナはその相手と結婚した。

同時に、カナには子供ができた。

カナはバイトをやめて家庭に入ることにした。

夫は、「いいよな、女は仕事やめれて」と冗談交じりに笑って言った。

この時、カナは夫に違和感を抱いた。

結局、5年後、その違和感が膨らむ形で二人は離婚した。


カナは、今、都内のジムでトレーナーとして働いている。

息子を育てながらなので、忙しいうえに生活は苦しい。

ひとりになると、ふいに涙が流れてくる。

多分、そろそろ子どもの父親となるような男性が必要なのだ。

いや、子供は言い訳だ。

何より、カナ自身のために必要なのだ。

マッチングアプリをなぞりながら、カナは電車の中でひとり泣いた。

イヤフォンからは、かつての流行歌である『漫画インク』がエンドレスで流れていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ