ドラゴンの卵、孵る
4精霊をすべて集めて仲間にした後、ドラゴンの卵に魔力を注ぎ10日目。
最後の魔力を注ぎ終わると、卵の光の色が変わった。
「赤? いや。黒? いや。グレー? なんか判別しづらい。あ! 赤黒いんだ! 七色に光ってたのに、なんで?」
今日はドラゴンの卵が孵る日だから、部屋から出るなと言われたボクは、仕方なく興味津々な精霊たちに囲まれて、じっとドラゴンの卵を眺めていた。
最後の魔力を注ぐ前は七色に光っていた卵は、今は赤みを帯びた黒と言った感じだ。
「えっと。どれどれ。ドラゴンの卵が七色に輝く場合、注がれる魔力により属性が決まる。それが8属性を統べる星の竜王の特徴である?」
ギルマスに渡された紙を見る。
あの子が星の竜王?
さすがに天空の支配者のわけないとは最初から思ってなかったけど、まさか星の竜王だとは。
星の竜王は、親により属性が決まる。
本来ボクは全属性使いだけど、今は半人前だ。
全属性の半分も使えるわけじゃない。
つまり今一番強い属性に影響されるってこと?
「あー。なんかよくわからないや」
そのとき卵の割れる音がして、ハッとして顔を上げた。
幾筋もの割れ目が入り、中にいたドラゴンが、卵から出てこようとしている?
「うーん。あれ、ほんとにドラゴン? 手足も普通の子供みたいだし。髪はダークレッド? 肌は褐色? ボク。育てたのってドラゴンだよね? これじゃ妖精か精霊みたいだ」
卵から孵ったのは、背中に4枚の透明な羽根の生えたダークレッドの髪と瞳、褐色の肌を持つ7歳くらいの子供だった。
「パパ?」
「えっと。どうしよう? あっ。服着せないと!」
ボケっと見ていたから、わかったけど、この子無性だ。
男でも女でもない。
一代限りの存在で、その代わり強大な力を秘めていると言われている性別を持たないもの。
無性。
凄く珍しい存在で、多くは色を持たないと聞く。
白い髪に赤い瞳がほとんどだと。
無性で色持ちは、更に珍しいと。
力も圧倒的なものだと。
その上に星の竜王なのに、生まれたときは、おそらくボクの影響を受けて、人間形態への変体。
もしかしてとんでもない子を授かった? ボク?
ボクの服に手を加え、背中に4箇所切り目を入れる。
もしかしたら実体のない羽根かもしれないけど念のため。
その服を着せると、ドラゴンの子は、ぴょんぴょん飛び跳ねた。
「パパの匂いがするー」
「あはは。だってボクのお古だからね。きみに名づけないとね」
そう呟くとセリアの顔が浮かんだ瞬間、名前が閃いた。
「フェリア! フェリアはどうかな?」
ボクが父親なら母親はセリアだ。
ボクの中では。
そう思ったら、フェリアしか考えられなくなった。
どうかな? と首を傾けると、フェリアも首を傾けてからにこっと笑った。
「フェリア? ボクの名前?」
「ダメかな?」
「ううん! 嬉しい! 名前からママの匂いもするから!」
「逢ってないのにセリアのことがわかるの?」
「パパの魔力の波動に、いつもママの祈りを感じてた。ママ。セリアって名前なんだ。逢いたいなあ」
「そうだね。そろそろ動き出さないと間に合わないね。フェリア。きみは生まれたばかりだけど、ママにセリアに逢いたい? ママを守りたい?」
「ママに悪いことする人がいるの?」
「うん」
「ママ。このままだと死んじゃうんだね」
「フェリア?」
「パパの魔力の流れにママが殺されるところがあって、最初は夢かなと思ってた。ママの祈りは普通に流れてきてたから。でも、あれは未来の映像で、ママの未来の姿なんだね」
「フェリア」
「ボクの髪や瞳の色に黒が混ざってるのは、ママを殺されたパパの悲しみや憎しみの強さなんだね」
フェリアの声にボクは、初めて感情を表に出せて、セリアが死んでから初めて泣いていた。
「パパ。パパ。泣かないで」
「ボクたちみんなご主人様の味方だよ」
「ママを守ろう! パパからママを奪う悪い奴は退治しちゃおう!」
子供みたいに泣きじゃくりながら、ボクはさすがにドラゴンらしく、フェリアは過激だなと感じていた。
でも、セリアが殺されるとわかっても、怯むことなく、奪うとか退治を言い出すみんなに有り難くて余計に涙が出た。
ボクは今度こそセリアを助けるんだ。
今度こそ。
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