ティターニア
「数や量は力に勝る。多勢に無勢という言葉もあるしね。相対するのは軍。引いては帝国。そして神殿。ボクひとりで戦うには限度がある。だから、生まれてきたら力を貸してね?」
ギルマスからドラゴンの卵の孵し方を聞いたボクは、朝晩必ず卵に話しかけ、自分の結界内に魔力を注ぎ込んだ。
そうすることで、魔力の強さにもよるけど、短ければ、10日ほどで卵は孵るらしい。
だから、10日目には絶対に部屋にいろと言われている。
ドラゴンの卵とか、レア過ぎるから、ボクがいなくても、盗めないように手は打ってる。
「さあ。北の森こと魔の森に出向くか。火、雷、土はマスターしたし、光魔法もそこそこ使えるようになった。でも残りの4属性は使いこなせてない。それを補う魔物か精霊、妖精とか仲間にできないかなあ」
後このドラゴンの卵。
七色に輝いてるけど、属性はなんだろう?
ギルマスからドラゴンには、地上の王と天空の王の二種類がいるとは聞いたけど。
地上の王たるドラゴンは、人間たちや魔物たちを統べる王者。
深くは知られていないけど、人間たちには星の竜王と呼ばれているらしい。
天空を支配する竜は、天空の支配者と呼ばれているらしいのだ。
同じドラゴンと呼ばれていても筆記が違い、スタードラゴンは竜と明記されるが、ゴールデンドラゴンは龍と表記され、全く別の存在と思われている。
なにがどう違うのか、ボクにもわからないけど、七色に輝く卵って普通じゃないよね?
ほんとにどんなドラゴンが生まれるんだろう。
そんなことを考えながら、ボクは日課となった鍛錬と探索のため、北の森に向かったのだった。
「水や風の魔物、妖精、精霊、亜人などを探してるんだけど」
ドラゴンの卵を見つけた辺りに来てみた。
この辺りは魔力の源のマナが濃い。
ここならなにかいるんじゃないかと考えたからだ。
「まるで聖域みたいな場所だなあ。この大滝に湖。いるとしたら一角獣や天馬とかかなあ? それか精霊。ドラゴンを二体も倒したからか、それともここを復活させたからか、ボクを見かけると魔物たちは逃げるようになっちゃったし、ここじゃもう鍛錬はできないな。探索をメインに切り替えて、仲間を探すか」
精霊や聖獣を従えるために一番簡単な方法は、血を利用した血の盟約。
それさえクリアしたら、契約は完了したことになる。
「一か八か試してみるか」
呟いてボクは腰まで湖に入った。
孤児院を出るとき持たされたナイフで軽く腕に傷をつけて血を流す。
「我が血によって盟約を求む。我が呼び声に応え姿を現せ、水の精霊! そして風の精霊!」
「我が眷属を二種族も従わせようとしているのはそなたか」
水の中から現れたのは、長い金髪に緑の瞳をした女性だった。
「あなたは?」
「我が名は妖精の女王名乗りの通り妖精族の女王である」
「え! 妖精族の女王様呼び出しちゃったの、ボク?」
「我が夫妖精王には、まだ逢っていないのか?」
「妖精と逢ったのは、あなたが初めてです。ティターニア様」
「初めてでわらわを呼び出したのか。大したものだ」
「どうやったら妖精や精霊と盟約を結べますか? ボクでは力不足ですか?」
「そうであればわらわは呼び出せぬよ。後重要なのは個々の種族に気に入られるかどうかにある」
「気に入られてたら、今出てきていますよね。じゃあダメだったのかな?」
「いや。今はわらわがいるから出てこぬだけだ。そなたが契約したいのは水の精霊と風の精霊だけか?」
「ボクは素質としては、全属性扱える。可能であれば火の精霊とも土の精霊とも契約したい。最終的には幻獣や聖獣も仲間にしたいんです」
「そなた一体なにをする気だ? 仲間に人間を選ばず強きものばかりを選んで」
「愛する人を救うため」
「ふむ」
「近い将来ボクの愛する人が殺される。でも、ボクひとりで彼女を助けるのは、少々難しくて。それで強い魔物や精霊の力を借りたいんだ。人間を仲間にしたら、同罪だと判断され、簡単に殺されるかもしれない。人間よりずっと強い魔物や精霊とかなら、殺されないと考えて。ボクだって人間魔物関係なく、仲間となったら死なせたくないよ」
「そなた物騒な目的があるらしいが、心根は優しいのだな。仲間を死なせたくないから、死なない仲間が欲しいのか」
「はい。ボクは誰も死なせたくない。だから、簡単には死なない仲間と力が欲しいんです」
「気に入った!」
「え?」
「わらわの独断で4精霊との盟約を認めよう。妖精の女王の名において、ここに盟約を完了する」
「いいんですか? ティターニア様」
「そなたの優しき心に打たれた。我が眷属の力、存分に使うがよい。そして愛すべき人を必ず救うのだ」
「ありがとうございました! ティターニア様!」
ティターニア様に頭を下げると、周囲に4精霊が集まってきて、ボクは嬉しくて微笑んだ。
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