幕間 ひとときの逢瀬〜夢で逢いましょう〜
幕間 ひとときの逢瀬〜夢で逢いましょう〜
逢いたいとお互いに強く願えば、夢で逢えるんだよ。
セリアがそう言ったのは、一体いつのことだったか?
時期は覚えていなくても、言われた言葉と、その時のセリアの表情は、今でもはっきり覚えてる。
別れが迫っているときの事だった。
セリアはもう自分の光魔法の強さを自覚していて、神殿に連れ去られるのも、もう逃れられない運命だった。
そんな時に、月をバックに振り向いたセリアが、涙を溜めてそういった。
だから今でも忘れられない。
夢で逢えたことは一度もない。
セリアの力には問題はなかったと思うから、それが間違えなく事実なら、ボクの実力不足だったのかもしれない。
これだけのチート能力を得て、自分でも使いこなせるようになって、なんとなく今夜はセリアに逢える気がした。
自力不足がある程度解消されたような気がする。
ギルドは後始末に追われて、入門して登録する前に今夜は寄宿舎に泊まれと言われて泊めてくれた。
セリア。
今夜なら会えるかな。
神殿に近付くためには、まだ力が足りない。
だから、夢でもいい。
きみに逢いたい。
夢でもいい。
ディラン。
あなたに逢いたい。
そう願っても、あなたに逢えたことはないのに。
「セリア?」
「え?」
声が聞こえて近付けば、数年後の姿をしたセリアがいた。
これが願った通りに夢なら、これが明日12歳になるセリア。
「ディラン? あなたなの?」
「ちょっと力がついたからかな。何度願っても叶わなかったのに、ようやく夢で逢えた」
「ディラン。力がついたって? 確かにあなたから途方もない魔力を感じる。あなたの身になにが起きているの?」
「よくわからない。とりあえず今は3属性の魔法を最高級のレベルで扱えるよ」
「嘘。そんなに成長していたの?」
「セリア。この夢って起きてからも覚えていられるかな?」
「わからないわ。私が夢で逢いたいと願うほど、夜毎願うのはあなただけだったの。そのあなたと逢えたのは、今回が初めてだもの。目覚めてみないと何とも言えないわ」
「だよね。そういえば今日は満月だったね。こういうのって満月が影響してるのかな?」
「ディラン。13歳よね? 大人になったの? 逢えたら抱き締めてくれると信じてたのに」
「もちろんすぐにそうしたいよ。でも、ボクにはやらなきゃいけないことがあるから」
「やらなきゃいけないこと?」
「詳しい事はまだ言えない。でもひとつだけ」
「なに?」
「一年以内にきみは求婚してきたエスメラルダ帝国の皇帝に殺される」
「え? どうしてそのことをディランが知って?」
「きみも知ってたの? もしかして予知能力?」
「私はあなたしかいらないの」
「セリア」
「あなた以外とは結婚したくないから、求婚は断ってって言っていたのに、このままでは押し切られそうで。最終的には例え殺されようと自分の意思を貫くつもりなの」
「セリア」
「殺される前にあなたに逢えてよかった」
「セリア。諦めないでほしい。ボクもなんとか助けられるように頑張るからさ」
「気持ちは嬉しいけど、あなたも無茶はしないでね」
「抱き締めてもいいかな」
「夢でも嬉しいわ、ディラン」
セリアはじっとしたまま、ボクが抱き締めるのを待っていたようだった。
近付いて行き触れるか触れないかといったところで、目覚めの時刻が近づいたのか、セリアの姿が薄れ始めた。
「セリア!」
慌てて抱き締めるが、もう感触も感じられない。
「セリア」
「あなたに逢えて、ほんとに嬉しかった」
「セリア」
名を呼ぶことしかできなかった。
消えていく彼女を見送ったまま。
必ず救う。
そう決意して、目覚めの気配を感じていた。
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