白紙の未来図
「なにかの間違いじゃないのか? ディーが行方不明の神子だなんて」
父さんは信じられないと口に出し、それにはセリアもわからないと返した。
「私にもわからないんです。ただ太陽に照らされたディーを見た瞬間から、大神官の様子がおかしくなって。ディーのことを神子だと言い出して。ただ彼らは本気でした。私はもちろんとして、彼らがディーのことを諦める事はないと思います」
「これは厄介なことになったな」
「父さん! そんなの本気にすることないよ。ボクが神子だなんて、そんなことあるわけないんだから」
両親に見捨てられ、孤児院に捨てられていたボクが神子?
冗談もほどほどにしてほしい。
なんでそんなことを言い出したのかわからないけど、馬鹿にするのもほどがあるっていうのが本音だ。
万が一事実だとしても、ボクが両親に捨てられ、孤児院に預けられたのも事実。
今更神子だなんだと持て囃されても、神殿に戻ろうなんて気には全然なれない。
ボクにはセリアとフェリア。そして父さんがいればそれでいい。
「だがなぁ、ディー。この場合本当かどうかが大事なんじゃない。神官たちが、それを信じてディーを連れ戻そうとする可能性があること。それが重要なんだ」
「じゃあボクが偽物だって証明できればいいんじゃない?」
「いや。今のディーの実力を把握されたら、本物だと確信される可能性のほうが高い。そのくらいディーの実力は規格外だから」
「そんなのボクが自分を磨き上げてきたから身に付いた実力であって、神子なら生まれつき身に付けているものじゃないの?」
ボクがそう反論すると、セリアが首を振った。
「柱の聖女として、これまで生きてきたからわかるのだけど、神子も聖女も元々才能があっても、その能力は努力することで開花するの。どんな才能も能力も、努力なしには意味を持たないのよ」
「つまり今のままでは、ボクは無理矢理神子にされてしまう?」
「少なくともあなたの実力は、神子だと断定されても不思議のないものだと思うわ」
ここまで会話して、3人とも黙り込んでしまったとき、不意にフェリアが口を開いた。
「パパも、ママも神殿には渡さない。絶対に!」
「フェリアは良い子だなぁ」
「おじいちゃん」
頭を撫でられフェリアは嬉しそうだ。
「とにかくギルドに急ごう。セリアの冒険者登録だけは終わらせておいたほうがいいからな。ついでにディーとのパーティー登録もな」
「行こう。セリア」
「ええ! 行きましょう」
ボクたちは手を握り合ってギルドに向かう。
その頃神殿では、ドラゴンを見たと言う目撃情報を頼りにボクらを追いかけていることも知らずに。
同時に全世界的に権力で婚姻を無理強いしようとした皇帝と認定された帝国の若き皇帝も、その屈辱を胸にボクらを追って動き出そうとしていた。
ボクらの預かり知らぬところで、ふたつの勢力が、ボクらを追って動き始めていることを、ボクらはまだ知らなかった。
ボクらがギルドに姿を見せると、受付や冒険者たちがざわざわとざわめいた。
「まさか本物か?」
「柱の聖女様?」
セリアはどこか居心地が悪そうだったが、ボクが手を握ると安心したように微笑んだ。
「ディー。セリア。こっちだ」
「はい。お父さま」
セリアがギルマスをそう呼んだことで、また静かなざわめきが広がる。
「レイナ」
「はい」
受付のレイナさんが、名を呼ばれ、びっくりしたように背筋を伸ばす。
「セリアの冒険者登録を頼む」
「でも失礼ですが、セリアさんて柱の聖女様ですよね? 本当にいいんですか?」
「なにか問題があるか? 神殿を抜けるのはセリアの意思だし、ディーとの結婚を望んだのもセリアの意思だ。親としてふたりを認めてやりたいから、神殿がなにを言ってこようと渡さない」
「父さん」
「お父さま」
「でも、もし帝国が報復に出たら」
「そのときは仲間を招いてパパやママを守るよ」
「そうじゃな。我が血の盟約を交わした盟友を殺させはせぬよ」
「ティターニア様!」
「ティターニア様ってディーが盟約を交わしたって言っていた妖精族の女王様か!」
ギルマスの叫びに意味が理解できる冒険者たちが、遠巻きにこちらを見ている。
「ティターニア様。今日はどうしてここに?」
「なに。血の盟約を交わしたからには、そなたはわらわの息子のようなものじゃ。嫁を連れて来たなら顔を見たくなっての。そなたがディランの嫁候補か?」
「あ! はい! セリアと申します! 初めまして、ティターニア様!」
妖精族の女王相手とあって、セリアも緊張しているようだった。
父さんは元冒険者と言うこともあって、緊張の余り固まってしまっている。
仕方がないので、ボクのほうから口を開いた。
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