神子と大聖女の行方
中央ギルドの上空まで来ると、フェリアが嬉しそうな声を出した。
『おじいちゃんが手を振って待ってる。早く行かなくちゃ』
「おじいちゃん?」
「この中央ギルドのギルマスのことだよ。初対面のときに親だと思えと言われて、それから逃げ回ってるとうっかり父さんと呼んだとき、聞かれてさ。なんかもう開き直って今は普通に父さんと呼んでる」
「それでフェリアから見ておじいちゃん、なのね」
星の竜王は、親子の関係もそうだが、家族関係もまた両者の関係性が、しっかりしていないとまず認めてくれない。
つまりそのフェリアが、正式に祖父と認めているということは、ボクからだけじゃなくて、ギルマスもまたボクを本気で実の息子だと思っていてくれて、フェリアのことは実の孫だと感じている証拠になる。
つまり親子関係で使う表現じゃないけど、一方通行な片想いじゃなくて、両想いだってことを意味する。
「なんだか急に不安になって来たわ。ディーにそんな頼れるお父さんができていたなんて。私お父さまに気に入って頂けるかしら」
「大丈夫だよ。このセリア奪還計画も、ギルドがセリアを助けるようギルドで受け入れられるように働きかけてくれたのも、みんな父さんの計画で父さんのおかげなんだ」
「そうなの?」
「ボクはやっぱり子供なんだよ。計画性なんてまるでないボクを現実味のある方向性に導いてくれたんだ。感謝してる」
「本当にお父さまが大好きで大切なのね」
「父さんが待ってる。フェリア。どこか適当なところで下ろして。後は3人で歩いて行こう」
『わかったよ、パパ』
「ディーのお父さまに逢うと思うとドキドキするわ」
「紹介するボクのほうがドキドキだよ。親に恋人を紹介することがあるなんて、思いもしなかったし」
孤児院育ちのボクとセリアは、どちらも違う意味でドキドキしていた。
そのくらい親のいないボクらにとって、親を名乗り出てくれる存在は貴重なのだった。
ギルドを眺められるくらいの距離で、平原に降りると3人でギルドに向かって歩き出す。
すると父さんもそれに気づいたのか、こっちに怒涛のように走っているのが見えた。
「ねえ、ディー。なんだかお父さま。こっちに走ってくるみたいなんだけど?」
「ハハ。父さんにはよほど心配と迷惑かけてるみたいだな」
そんなことを話しているあいだに、父さんはすごいスピードでここまでやってきた。
ボクの顔を見るなり、涙を流して抱きついてくる。
「と、父さん」
「ディー! よく無事に帰ってきたな! お前の力なら大丈夫だと思っていたが、こうして顔を見るまでは気が気じゃなかった」
「父さん」
「おじいちゃん! ママを連れて帰ってきたよ! ママ。すっごく可愛いんだよ。早く逢って逢って」
「おい。フェリア。腕を引っ張るなって」
多分、このとき父さんは、セリアにどう接するか迷っていたんじゃないだろうか。
仮にも神殿の柱の聖女だ。
神職としては神子に継ぐ地位にいる。
一般人なら雲の上の存在と感じるはず。
父さんはどうする気だろうと、チラリと視線を向ける。
フェリアによって対面させられたふたりは、暫し見つめ合うと、父さんが頭を掻きながら、照れ顔を見せた。
うわ。
あの豪胆な父さんが照れてるよ。
セリアが柱の聖女だから?
一瞬そう思ったけど、すぐに間違いに気づいた。
「えっと。ディーの恋人でいいのかな?」
「あ。はい。将来的には彼のお嫁さんになれたらなぁって思っています」
「そいつはいい! いやあ。俺から言うのも野暮な話だが、ディーはあんたに一途な男でなあ。報われるなら、これ以上の幸せはない」
「父さん! いきなりなにをっ!」
慌てるボクを尻目にふたりは意気投合していく。
「ディーからは小さい頃からの付き合いだと聞いてるが、セリアはいつからあいつを?」
「物心ついた頃からですね。ディーのことは小さい頃から。小さい頃からディーは優しくて頼りになって、物心ついた頃には好きになってました。だから、いつかは別れなければならないことを予知したときは、切なくて悲しくて毎晩泣きました。だから、今はすごく幸せで」
そう言って、微笑むセリアが幸せそうで、ボクは会話を止める機会を失った。
何か口を挟めない雰囲気。
「セリアは神殿を捨てたこと、後悔はしてないんだな?」
「はい。お父さま。ディーの恋人として、将来の伴侶として、私を認めて頂けますか?」
「まあ実際に結婚するには、ふたりとも子供だからなあ。将来的な伴侶という関係なら、まあ」
「ありがとうございます!」
セリアが深々と頭を下げる。
ボクは目の前で展開される場面に、頭を抱えるしかない。
「とりあえずセリア。神殿から追っ手がかかっているだろう。ギルドが関われるように、ディーと組んで冒険者登録してくれないか?」
「そのことですが、神殿は私だけじゃなく、ディーも連れ戻そうとするでしょう」
「どういうことだ? セリアのことを抜けば、ディーには神殿に関わりはないはずだろう?」
「これを見てください。見ればどうしてディーが、神殿から追われるのかがわかります」
彼女が展開した映像は、フェリアに乗り込んでからの、一部始終だった。
何度も出てくる神子や、黄金色の大聖女という名前。
ボクに跪く神官たち。
父さんは絶句して、それを見ていた。
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