セリアの叛逆
目が覚めて支度をしていると、フェリアがドラゴン形態小型のでいて、ドラゴン用ベビーベッドから顔を出した。
『パパ。夢でママに逢えた? 凄く嬉しそう』
首を長く伸ばしてフェリアが言う。
「フェリア。おいで」
「パパ?」
不思議そうに名前を呼びながら、フェリアは子供の姿になって、ボクに近づいてくる。
「セリアがきみのことを知って喜んでいたよ。きっと逢いたいんだろうな」
「ママが? 嬉しい!」
「セリアが動くよ。ボクらも動かなきゃ」
セリアは切羽詰まっている。
ああいうときのセリアは、即断して即座に動く。
その行動力は今も変わらないはず。
自分の進退が関わっているのなら尚更だろう。
こちらもすぐに動かなくては!
ボクは父さんに用意してもらった神官見習いの身分証を手に、フェリアを連れて中央にある神殿に向かったのだった。
神殿に潜入できた午後。
柱の聖女の祈りの時間に、それは起きた。
(皆さん聞いてください。私は柱の聖女セリア。今私は神殿に強引に帝国の皇帝に嫁がされようとしています。帝国の皇帝が求婚してきたとき、私はお断りしました。何故なら私には小さな頃からお慕いしている本気で愛している方がいるからです。
聖女は特に柱の聖女は、愛し愛された結婚以外、神に認められていないのです。この結婚を推し進める神殿も、権力で結婚を強要する帝国も信じられません。頼れません。そんな中、世界中にあるギルドが、私に救いの手を差し伸べてくれました。私はギルドの手を取ります。そして神が許している愛している人と幸せになります。私はもうこんな神殿にはいられません!)
セリアの祈りの声が、神殿を中心にして、世界中に広がっていく。
その祈りの声に導かれて、ボクは祈りの間に突撃した。
「セリア!」
「ディー!」
抱きついてきたセリアを抱きしめて、ボクは斬り掛かってきた神殿騎士に向かって、吐き捨てた。
「我が怒りを受けよ、地獄の業火!」
威力を抑えて魔術を使うのは初めてだったが、おかげで神殿には影響は出なかった。
神殿を傷つけたら、それだけで犯人にされてしまう。
ボクは愛する人を取り戻したいだけ。
だから、威力を抑えて力を使い、風のように走り込んでくるフェリアの名を呼んだ。
「こっちだよ、フェリア! セリアはこっちだよ!」
「フェリア?」
セリアが名を呼ぶのと同時に飛び込んできたフェリアが、笑顔でセリアの名を呼んだ。
「ママ? セリアママ?」
「貴方がフェリア? まさか私とディーの子供が、星の竜王だったなんて思わなかったわ」
「星の竜王?」
神殿の神官や騎士たちが泡を食っている。
星の竜王は地上の竜王。
驚くのは無理もない。
元々天空の支配者も星の竜王も、人には懐かない高貴な気位高い竜王たちだ。
それが人間如きが星の竜王の親だと名乗っている。
それで驚かないなら嘘だ。
ここでセリアの発言を疑うものは、神殿にはいないだろう。
なによりもセリアの必死の祈りを受け止めたフェリアが、神官や騎士、巫女たちに激怒していた。
「あなたたちがボクのママを苦しめて虐めたの? あんなに苦しそうに泣かせたの?」
目がドラゴンの瞳になっている。
フェリアから迸る激怒に、神殿の関係者たちは、みな腰を抜かし怯えていた。
ボクは慌ててフェリアを止めようとしたが、近くにいたセリアのほうが早かった。
「怒ってくれてありがとう。フェリア」
「ママ」
「でも、今はあなたやディーと一緒に自由な世界に飛び出したいの。ディーと一緒にあなたの背中に乗せてくれる?」
「うん! ママもパパも大好き! だから、ふたりを傷付けるものは、何人であれ赦さない」
「星の竜王様」
「柱の聖女に意に沿わぬ結婚をしいようとした。それだけで神の怒りに触れてもおかしくないのに、その上に竜種の怒りに触れたくなければ、もう二度とパパやママを傷付けないで! 星の竜王として、ボクはそれを許さない!」
髪が逆立ち瞳がルビーに染まる。
怒りで半竜化したフェリアに、ボクとセリアは宥めるように背を撫でた。
「いい子ね、フェリア」
「ボクらの大事な子供だよ。例え種族が違おうと」
「ママ、パパ。大好き!」
それだけを言って神殿の中庭に飛び降りたフェリアは、中庭に降りた途端にドラゴンに変化した。
そんなフェリアの背にボクとセリアは飛び乗ったのだった。
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