満月の夜にて
「ディラン。助けて。ディー」
夢の中でセリアの泣いてる声が聞こえてきた。
皇帝との面会が近づいているんだ。無理もない。
「セリア」
名を呼ぶとセリアが振り向いて、ボクを視界に入れると抱きついてきた。
「ディー! ディラン! 私は結婚なんてしたくない! 皇帝になんか逢いたくない! あなた以外いらないのに!」
今まで堪えていたのだろう。
もしかしたら堪えきれずに泣きながら眠ったのかもしれない。
ボクはしっかりと彼女を抱いて、慰めながら声をかけてみた。
「セリア。神殿も帝国も頼れないなら、ギルドに頼ると世界中に宣言するんだ」
「ギルドに?」
「ギルドはもうセリアの受け入れ態勢が整っている。
それにね、セリア。ボクらにはドラゴンの子供がいるんだよ。フェリアっていうんだ」
「フェリア?」
「ボクとセリアの子だと言われ、そう考えると、フェリアしか思いつかなくて。フェリアもママの匂いがするから好きだって言ってたよ」
「ふふ。私たち、いつの間にか子供がいたのね」
「フェリアもセリアに逢いたがってる。だから、諦めないで欲しいんだ」
「ええ。あなたもフェリアもギルドの皆さんも諦めていないんですもの。私も諦めないわ」
「ギルドに正義があると証明するために、セリアには全世界に向かって、帝国に無理矢理に嫁がされそうになっていること、帝国に神殿が協力しているから信用できないこと。それを宣言してほしいんだ。それが済んだらボクとフェリアで、きみを助け出すから」
「神殿に潜入する気なの?」
危険だと言いたそうな声だった。
それは初めから覚悟の上だとボクは笑ってみせる。
「何のためにボクが自分を鍛えたと思ってるの? きみを奪い返すためだよ、セリア」
「うん。うん」
泣きながら頷くセリアに、ボクは夢でもできるかなと、意識を集中させた。
「火の精霊、サラ。風の精霊シルフィ。水の精霊、ディーヌ。土の精霊、ノーム。我が命によりて顕現せよ!」
四精霊たちが集まって、セリアが驚いた顔をした。
「ディー。あなた四精霊を集めていたの?」
「妖精の女王ティターニア様に認めて頂けたお陰でね」
「そう。ティターニア様に。それは大神官にもできない偉業よ」
「それってボクが普通に力を発揮すると、歓迎されるどころか警戒されるってこと?」
「今いる神官や大神官にとって、ドラゴンを引き連れ、四精霊を従えているあなたは、脅威でしかないわ。自分たちを蹴落とす存在だもの」
そこまで説明してから、セリアは聞き忘れていたことがあると思い出した。
「さっきはうっかり聞き流したけど、あなたはどうやってドラゴンの親になったの? フェリアはなんのドラゴンなの?」
「あー。フェリアの両親をボクが殺したんだ。殺さないと殺されていたから。その後、場所は復元したけど、そこに卵の状態でフェリアがいてね。ボクが両親を殺したんだから、自分で孵そうと決めて、生まれてきたフェリアに、無事に親だと認めて貰えたんだ。あ。フェリアはダークレッドドラゴンだよ。炎を操るドラゴンの中では最強種だね」
一気に説明されてセリアは絶句した。
ディランの言った内容は、かなり強い力を持っていないと成立しないからだ。
ダークレッドドラゴンが、実の親以外を親だと認めるなんて、聞いたことがなかった。
そのくらいずば抜けた実力を持つドラゴンなのである。
それを簡単に従えてしまっている。
ディランの実力は、セリアの想定外だった。
今のディランなら、助けてくれるかもしれない。
そう思ったら泣けてきた。
「ど、どうしたの? セリア? ボクなにかした?」
「いいえ。ただあなたがあまりに強くなり過ぎていて、助かりそうと思ったら、勝手に涙が」
「怖かったんだね。無理もないよ。きみはまだ子供なんだから」
「あなたに逢いたい。神殿にはいたくない。皇帝にも嫁ぎたくない。私の初恋はあなただもの」
「うん。ボクもきみが好きだよ。だから、忘れないで。ギルドに保護を求めると、全世界に宣言することを。そうしたら必ずきみを助けに行くから!」
「ええ。待っているわ、ディー」
「あ。目覚めの時間だね。待っていて、セリア」
「信じているわ、ディー」
その声を最後にセリアが消えて、ボクも目覚めるのを感じていた。
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