密談
「セリア様が殺される前に帝国か、神殿に入り込んで、助けようとしているんだろう? ディーは」
「ボクにこの機会をくれたのが、柱の聖女を寵愛する神様なら、これはボクの役目だよ。果たせなかった場合、ボクも無事で済むかどうか」
「ディーが死ぬってのか!」
「そのくらいのことがあっても不思議はないってこと。でもセリアが死んだとき、助けられなかったなら、ボクは死んだほうがマシだ」
「ディー」
「最後まで、誰の力も借りずにやるつもりだった。でも、ボクの力じゃもう限界があって。どうにか神殿で騎士か魔術師になれないかな? なんとかセリアに近づいて、彼女を守りたいんだ」
孤児院出身の冒険者。しかも異例のスピードで、Bランクにまでなったとは言え、13歳の子供を真剣に相手する大人なんていない。
父さんのほうが例外なんだ。
父さんはギルマスであるのと同時に、ボクのことを息子だと思ってくれてるのと、実力を認めていることから、真剣に話を聞いてくれるけど、普通の大人はそうはいかない。
神殿や帝国の軍部なんてところになれば、なおさらに。
更に柱の聖女や皇帝に近付きたいなら、事はもっと厄介だ。
うまく動かなければ、まず不可能なこと。
父さんが難しい顔になるのも無理はなかった。
自分がどんなに危険な無理難題を言っているか、ボクだって自覚している。
「ディーをみすみす死なせるわけにはいかん。それが聖女を救いたい神からの司令だというならなおのこと」
「父さん!」
「だが、仮にだ。聖女を助けられたとして、皇帝に逆らったディーはどうなる? 聖女様にしても、皇帝の求婚を断ったから、斬られそうになっていたなら、ふたりとも反逆者だ。神殿が庇ってくれるならいいが。そうじゃない場合、どうするんだ?」
ボクは一瞬返事に詰まったけど、フェリアがにこっと笑って答えた。
「パパとママのふたりくらいなら、ボクの背に乗せて飛べるよ」
「フェリア」
「それでその場は逃げられたとして、いつまでも逃げ続けるわけにもいかないし。とりあえず神殿や帝国の軍には対抗できないが、柱の聖女の望みなら、すべてのギルドが一丸となって、お前たちを守る」
「父さん。いいの?」
「さっきも言ったが、ディーを殺させるわけにはいかないし、何より世界の支柱である柱の聖女を帝国の皇帝が殺そうとし、神殿がそれを止めようとしないなら、理はこちらにある」
「でもことが起きてからだと、後手に回ったりしない?」
「そうなんだよなぁ。一番いいのは、聖女様ご自身に帝国も神殿も信じられないから、ギルドに保護を求める。そう宣言してもらうことなんだが。そうすれば、民衆も味方につけやすい」
「ボクまだ一度しか成功してないけど、満月の夜に夢の中でセリアに逢えるんだ。その時頼んでみようか?」
「あぁ。あの相思相愛のふたりなら、満月の夜になれば、離れ離れでも夢で逢えるってやつか。お前たちは頼もしいな」
頼めるか?
と父さんに言われて、ボクは頷いたのだった。
「でも神殿はどうして柱の聖女であるセリアの意思を無視してまで、皇帝に嫁がせようとしているんだろう。柱の聖女は世界の支柱。その意思に背くことは、神に背くことも同じなのに」
「これはひとつの噂なんだがな。十数年前、神託が降り神の子が誕生すると騒ぎになった」
「神の子? つまり柱の聖女より偉い神子ってこと?」
「柱の聖女様の結婚相手は、本来その神子であるべきだと言うのが、神官たちの主張だ。その神子がいない今、釣り合いの取れる身分のものとの結婚が必要。幸い求婚してきた帝国の皇帝は、まだ16歳だ。釣り合いの取れている年齢であることが、決断の一因となったんだろう」
「馬鹿げてる。ボクが神なら、聖女が嫌がってる結婚なんて認めないよ」
「そうだよなあ」
「それがわからない神官なんて、神官を名乗る価値もない」
「全くだ」
「とりあえず今夜が丁度満月だから、試してみるよ。父さん」
「無茶するなよ? ディーだけじゃない。セリア様もだ」
気遣う言葉にわかってると力強く頷いた。
どうでしたか?
面白かったでしょうか?
少しでも面白いと感じたら
☆☆☆☆☆から評価、コメントなど、よければポチッとお願いします。
素直な感想でいいので、よろしくお願いします!




