そして、ループの始まり
初挑戦のハイファンタジーもの。
所謂異世界ファンタジーものです。
復讐もので、成り上がりもので、恋愛のエッセンスもあって、ループを繰り返す中、主人公もチートを自覚していく話。気に入って頂けたら嬉しいです。
「ディラン!」
「セリア!」
セリアが行ってしまう。
セリアが強大な光魔法を持っていたことが判明したのが昨日。
今日には彼女は光の神殿に連行されそうになっている。
泣いても叫んでも、子供のボクには、どうにもできない。
幼馴染だったボクとセリアが、引き裂かれた瞬間だった。
ボクとセリアは捨て子で、一日違いで拾われたこともあって、ボクはふたつ年下のセリアを妹みたいに可愛がった。
孤児院には大勢の子供たちがいたけれど、ボクらはふたりきりで遊ぶことが多かった。
いつしか恋心が芽生え、お互いが初恋相手になっていた。
セリアと引き裂かれたあの日、泣きじゃくっていた彼女の姿を覚えている。
「必ず迎えにいく。セリアは誰にも渡さない!」
そんな決意を胸にボクは14歳になった。
セリアは明日には12歳になる。
エスメラルダ帝国の若き皇帝が、セリアに求婚したのは、そんなある日のことだった。
ボクはただ止めたくて、必死になって宮殿に向かうセリアに、兵士に乱暴な扱いを受け、止められて、狂ったように彼女の名を呼んだ。
それが届いたのだろうか。
ふとセリアが立ち止まってボクを見た。
エスコートしている若き皇帝を睨む。
「陛下」
「なんだ?」
「この度のお話。お断りさせて頂きます」
「なんだと?」
「わたくしには幼い頃から心に決めた方がおります。
その方以外に嫁ぐつもりはありませんので、このたびのお話。お断りさせて頂きます」
「聖女の中の聖女と言われる柱の聖女だからと、妃に望んだが図に乗りおって! 私の手で身の程というものを思い知らせてくれるわ!」
殺すと言われてもセリアは、怯むことなく皇帝を睨んでいる。
ボクはこんなところでなにをやってるんだ?
泥に塗れて地面に這いつくばって、みっともなく泣いているだけ。
助けたいのに近付くこともできない。
「セリアー!」
神は何故ボクらを引き裂いた?
どんなに手を伸ばしても、彼女には届かないのに。
「あ、あ、あ」
何故見なければいけない?
斬られた彼女が、血塗れの手をこちらに伸ばしてくれるのに、伸ばした手は決して届かない。
何故! 何故! 何故!
セリアが一体なにをした!
好きな人がいるから結婚できないと言っただけだ。
皇帝なら振られたら殺してもいいのか?
「許さない。世界も神も皇帝も! この世界に復讐してやる!」
そのときボクの左耳の青いピアスが、真紅の輝きを放った。
なんだ? これ?
頭がクラクラする。
体中に激痛が走る。
正気を保つのも難しい中、声が聞こえた。
「あなたに柱の聖女が救えますか? その自信があるならば、あなたに機会を与えましょう」
誰、だ?
声にならない声で問いかける。
もう声を出すこともできなかった。
ただやり直す機会をくれるなら、なんでもすると心で誓った。
「あなたがやり遂げることを祈っています」
重ねた時が逆流していく。
時がループする。
無限ともいうべきループを感じる。
時の矛盾にボクだけが取り残される感覚。
「リミットは今日。それだけを覚えていなさい」
ボクは‥‥‥。
セリアのために。
いつか彼女を救い出せる日まで、ボクは諦めない。
そんなことを考えながら、ボクは意識を失った。
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